人口統計
いきがかり上というか,まあ良い機会なので,「公衆衛生学」の教科書に出ている出生率の記述をまとめてみます.日本の人口統計の基礎というか,その一端ぐらいには触れているのでないでしょうか.ますます自然史博物館から遠ざかっていく気もしますが,もう少しお付き合いください.(1) 合計特殊出生率 1人の女性が一生の間に産む子供の数を「合計特殊出生率」といいます.前回書いたように,男女の出生数や死亡率その他が同じなら, 合計特殊出生率 = (b0 + b1 + b2 + b3)×2です.男は子供を産まないので父親は無視し,母親だけを考えるわけです.(2) 総再生産率 さらに,いっそ子供についても男児は無視して,女性が産む女児の数だけを考よう,というのが「総再生産率」です. 総再生産率 = 1人の女性が一生の間に産む女児の数で,男と女の出生数や生存率etc.が全く同じなら, 総再生産率 = b0 + b1 + b2 + b3となります. くどいけど,b0~b3 は男女を区別しないで単純割り算した「1人あたりの出生数」.これに対し人口統計のほうは「女性1人あたりの女児出生数」.この2つの数値は,もし男女の出生数や生存率etc.が同じなら,等しいはずです.人間の場合,現実には女性のほうが生存率が高いので,本当は男女を別に扱う必要があるのでしょう.ここはアバウトで行きましょう.(3) 純再生産率 ところで,「いま生まれた女児が,その一生の間に何人の女児を出産すると予想されるか?」は,じつは総再生産率では表せません.生殖年齢になる前に亡くなる女性もいるわけですから,その年齢までの「生存確率」を考慮する必要があります.それを考慮した数値は「純再生産率」といいます. 純再生産率 = Σ(女性1人あたりの,年齢別出産女児数)×(その年齢まで女性が生きている確率)です.この Σは,年齢ごとに計算した数値を全部足して合計することを表わしています.このブログで用いている表記法に翻訳すると; 純再生産率 = b0 + p0・b1 + p0・p1・b2 + p0・p1・p2・b3となります. 人口が増えるか減るかの目安は (1)「合計特殊出生率」や (2)「総再生産率」よりも, (3)「純再生産率」を採用した方が,より正確だと考えられます.つまり, 純再生産率 >1 のとき,人口は増加 純再生産率 =1 のとき,人口は変らない 純再生産率