リーダーとマネジャー
リーダーとは正しい事をなす人.マネジャーとは物事を正しく実行する人. しばしば同一視される「リーダー」と「マネジャー」をウォレン・ベニスは,このように区別しました.ベニス先生を信奉しなさいという趣旨ではありません.私が言いたいのは,リーダーとマネジャーは違うということ. たとえば政治家はリーダー的であって欲しいし,お役人の仕事はリーダーではなくマネジャーである.この違いが一般にあまり認識されてないのではと思うことが多々ある.もと役人という人が,しばしば地方自治体の長に選挙で選ばれたりするのは,そういう背景からだろう.リーダーとマネジャーは役割も,求められる資質も違う.良きマネジャーが良きリーダーであるとは限らない. で,とーとつですが... 野生生物がどういう種類であるかを調べるとき,図鑑を見ます.絵とか写真が並んでいて,どの絵がその生物に最も似ているだろうかを調べる.また検索表を使うこともあります.図鑑による絵合わせ,ヤマカン頼りの手法では,細かいところは歯が立たない.だから検索表は,より専門的な手法ということになる. 検索表というのは二者択一の選択肢をたどることで,種類を正確に判定する方法です.たとえば昆虫であれば,翅があるかないか,尾端が尖っているか丸いか,というように1つずつチェックしながら,一歩一歩進んで行く.厳密であり,合理的な方法でもある. けれども検索表には1つの欠点がある.それは不慣れな人が使うとしばしば,とんでもない結論に至ること.図鑑の絵合わせでは,そういう過誤はあまりない.当たらないことはよくあるけれど,馬鹿ばかしいほど正解からハズれた結論にもなりにくい. 例えて言えば,図鑑による絵合わせは,見晴らしの良い所から眺めて,進むべき方向を決めるような手法である.検索表はそういう大きな見通しなしに,1つ1つの分かれ道で,どちらに進むべきかを判断して前進する.だから1か所でも判断を誤れば,とんでもない所に到着することになる. リーダーとマネジャーとの対比は,図鑑と検索表の関係に似ている.リーダーは全体を大局的に眺める.マネジャーは分岐点でどちらに行くべきかを評価する.言うまでもなく両者は補い合うものでなくてはならない. さて,最近の日本では,大局的に「正しい」方向をめざす政治家が激減していると思う.リーダーであるべき政治家が,マネジャーたるべきお役人に利用されるような構図になっていないだろうか.その結果,「正しくない」ことを,みごとに「正しい」手法で実施しているという例を散見する.たとえば,どういう例があるかというよーなことは,いちいち指摘しません.あしからず. こういう時代が続くと,その反動として,強力なリーダーを待望する声が強くなるかもしれない.そういう時代を招来しないためにも,リーダーたるべき政治家に,今もっと頑張って欲しいと思う.