2008年06月の記事一覧 | 高知に自然史博物館を

年次改革要望書

　前回の記事に関連するメッセージを，私が管理する別のブログ「ブログ浦戸湾」http://blog.livedoor.jp/uradowan/に頂いた．どうやらブログ「高知に自然史博物館を」（このブログです）では，相変わらずコメントが不当に拒否されるトラブルがあるらしい．　拒否された理由は，メッセージの中に，私が禁止している文字列が含まれていたから，らしい．つまり拒否される原因は私の設定にある訳だけど，現実には私が禁止した憶えのない文字列が引っかかったりする．　いろいろ調べたけれど，お手あげです．今後もメッセージがハネつけられるようなら，「ブログ浦戸湾」（上記）または「へなちょこ自然保護」http://henachokosizenhogo.blog.so-net.ne.jp/　のコメント欄に書き込んでください．テーマにこだわらず最も新しい記事に書き込んで頂ければ，まあ見逃すことはないでしょう．　さて，話題は前回の記事で触れた「年次改革要望書」についてである．「ブログ浦戸湾」に届いたメッセージには，次のように書かれていた．（以下転載）　年次改革要望書については、すでにLadybirdさんの方が詳しいのではないかと思いますが、私も拙い記事を書いています（http://kokoro -no-jiyuu.blog.so-net.ne.jp/2007-09-17）。年次改革要望書を読んでみると確かに恐ろしいほど忠実にアメリカの意向に沿って「改革」が行われていると思います。次は医療が危なそうです。（転載おわり）　で，その「拙い記事」を見ると，年次改革要望書によって米国が日本に求めて，実際に日本政府が実行したものとして，次のような例が挙げられている．（以下は記事からの転載）【１】人材派遣の自由化・・・1996年にアメリカが求め、1999年、労働者派遣事業法を改正し、派遣労働を原則自由化。さらに2004年には、製造業への派遣労働も解禁。最近の報道によれば、医師・看護師の派遣自由化も検討されているといいます（←これに関しては私は内閣府に反対の意見を送っておきました）。非正社員急増を招いた法改正です。【２】大規模小売店舗法の廃止・・・「自由な小売活動を規制している」と主張するアメリカは、1997年に大店法の廃止を要求。これを受けて日本政府は、３年後の2000年に大店法を廃止し、代わりに大店立地法を制定した。その結果、大型店の無秩序な出店が加速し、小売店が営業を停止した「シャッター通り」が増えることになったようです。（転載おわり）　まことに，「拙い」などとんでもない．要点を押さえた，品位の高い記事だと思う．他の実例もあがっているけれど，一部のみを転載した．　日本国の政策を決めているのは政治家でも官僚でもないらしい．国の政策を決めているものは米国からの「要望」であり，政治家や官僚はそれを実行しているだけらしい．いま日本で起っていること，労働者の基本的権利の侵害，所得格差の拡大，医療崩壊，市街地の空洞化，etc. etc. に至ったさまざまな「改革」が，じつは米国からの「要望」を実行しただけのことだった．　かくも重要な文書！　この「年次改革要望書」を，日本政府は毎年受け取っている．その内容に従って日本政府は「改革」を実施している．ならば「要望書」の内容が重大ニュースでない訳はなかろう．それを報道しない日本のマスコミは，なすべき仕事をしていないことになる．

ああNHK

　いまサッカーが面白い．　Jリーグやオリンピックの話ではありません．面白いのはEuro2008．目のさめるような数々のスーパープレイ．いよいよ準決勝．　もっと面白いのは，Euro2008をNHKが全く報道しないこと．理由は放映権をもっていないからでしょう．このあたりNHKはじつに露骨です．大きなイベントであっても放映権のないものはニュースでさえめったに報道しない．同じく放映権のないF1も，やはりNHKはまず報道しない．先日，6月22日フランスGP決勝戦では，トヨタが３位になり表彰台に立った．放映権はなくても，ニュースで報道することはできるのでないかと思うんだけど．　また逆に，放映権のあるものは，NHKは執拗に報道/宣伝している．たとえば米大リーグ野球の報道．いくら何でもやりすぎ．卑しい性根が見える．あんまり卑しいから，いぬあっちけー，などと言われるんですよ．　まあスポーツの報道なら，いろいろ言っても微笑ましいものです．しかし「報道/宣伝すべきニュース」と「無視/隠ぺいすべきニュース」とが，大リーグ野球や，サッカーやF1と同じような調子で選別されている，などということがあれば大変です．まさか，そういうことは無いでしょう？　昔，NHKは朝７時台の時間帯に「おはよう世界のトップニュース」というのをやっていて，BBCやフランス２など外国の名だたる放送局のニュースダイジェストを流していた．放送局ごとにニュース番組は１つながりのものとして放映され，特定の話題は流さないなどという「編集」をした形跡はなかった．　ところが今は「おはよう世界」などの番組に変っていて，特定の話題について選ばれたニュースだけが放映される．そういう趣旨の番組だ，とNHKは言うだろうけど，ニュースを選別して報道するのに実に適した「趣旨」である．　じつは今でも昔と同じように，NHKは各放送局ごとのニュースを流している．しかし，それは朝７時台ではなくて，あまり人が見ていない時間帯になっている．世界のニュースだけでなく，良い番組，見応えのある番組が軒並み深夜とか早朝とか，朝の出勤ラッシュ終了後の時間帯とかに移ってしまった．これは，どういう現象なのだろう．　言うまでもなくNHKやその他のマスコミは，国民の世論形成に大きな影響力をもっている．私がここで指摘している現象が，そういう影響力を意識した，意図的なものでないと信じられるだろうか．NHKの卑しい性根が見えると上に書いたけど，性根の卑しい人間は，しばしば真実を語らないものだそうですよ．　話題を変えよう．　今のNHKでやたら目につくのが，自社の宣伝です．民放なら宣伝は目をひくように面白く作られている．それに短い．ところがNHKの宣伝は面白くない上に，しつこく長い．時には番組そのものがNHKの宣伝だったりして，そういう場合は30分とか１時間とかの長きにわたって，ずっと宣伝を見せられるのだろう．よくまあ臆面もなく執拗に続けられるものだと思う．ふつう宣伝にはカネを払う．ところがNHKは国民からカネを取って自社の宣伝をしている．　あまり宣伝色が過ぎると，この人たち一体何を考えてるんだろうと思ってしまう．最近そう思ったのは地球温暖化問題．これについてはブログ「へなちょこ自然保護」に書いたので参考にしてください．とにかく，NHKが温暖化を熱心に取り上げている理由は，京都議定書の数値目標を達成したかどうかがチェックされる，いわば決算期が今年からの５年間なので，政府もNHKも躍起になっているのでしょう．　そういえば，地上デジタル放送の宣伝も目につく．あっちも地デジ，こっちも地デジ．どんどん地デジが広まってますね～，などと言っているところを見ると，地デジの普及もじつはあんまし進んでないのかもしれない．なんぼ便利になっても，放映される内容が今のような状態ではね～・・・　ついでに，もう１つ別の話題です．　「年次改革要望書」というものがあるそうな．日本の国策を決めているものは福田さんでも自民党でもなく，じつはこの年次改革要望書である，というのが，ブログの世界では常識らしい．それほど重要なものなのだろうか．　だとすれば，それをほとんど（いや，全くかも）報道しない日本のマスコミって，どうなってるんでしょうね．

カブトムシの見つけ方

　6月も半ばを過ぎて，梅雨の晴れ間に近所を散策していたら，ヒラタクワガタに遭遇しました．そうなんだ．そういう季節なんだ，と感心したというか，季節の移り変わりの速さにアセってしまったと言うべきか．　というわけで今日は，カブトムシやクワガタムシの見つけ方について書いてみます．　カブトムシは腐葉土に，クワガタムシは朽木に産卵します．だから，たとえばカブトムシを捕まえるには，腐葉土を掘ってみるというテもあります．一方，カブトムシやクワガタムシの成虫は樹液に集まります．だから樹液を出している木を見つけるという方法もあります．　では樹液を出している木をどうやって見つけるか？　以下にそのヒントを書きます．１．ドングリの成る木を探せ．　　カブトムシはクヌギに集まる，と書いてある本があります．私の住んでいる四国では，カブトムシを見つけたければクヌギよりもシイ，カシを探します．地方によりターゲットとすべき樹種が違うわけですが，「ドングリの成る木」というふうに一般化できそうです．ただしドングリは秋になるのであって，この季節にはドングリはありません．　標高の高い深山では，ミヤマクワガタとかヒメオオクワガタを，思いがけない木で見つけることもあります．今はそういうものは考えないで，市街地近くの公園や低山地で探すことにします．２．林縁部を探せ．　カブトムシを求めてカシの林に奥深くわけ入っても，意外に収穫は少ないものです．林の中は木にとって条件が良くて，木は健康で，健康な木はあまり樹液を出さないのかもしれません．公園なら管理者が病変部をすぐ取り去るのかもしれません．理由はよくわからないのですが，樹液を出している木は林の中よりは林縁部，道路ぞい，などでよく見つかります．３．匂いに注意．　まず樹液のにおい．樹液がたくさん出ていると発酵して，果物の腐ったような，アルコールくさい匂いを出します．じっさいカブトムシは腐ったブドウやスモモにも集まります．樹液もカブトムシにとっては多分同じような匂いなのでしょう．　次にカブトムシのにおい．カブトムシのにおいを確認したかったら，カブトムシを飛ばしてみればよろしい．オスの短い方のツノをつまんで，その手をぶんぶん振り回したら，カブトムシは飛びはじめます．すると「カブトムシのにおい」がします．公園や裏山で同じような匂いがしたら，そこはカブトムシが最近訪れた場所かもしれません．４．蝶は案内人．　樹液にはカブトムシやクワガタムシのほか，カナブンやスズメバチなども集まります．蝶も来ます．有名なのは日本の国蝶オオムラサキ．もっと普通に見かけるのはキマダラヒカゲ，スミナガシ，など．これも地方によって違うかもしれません．　蝶は人が来るとすぐ飛び立つので，じっとしているカブトムシ等より発見しやすいものです．キマダラヒカゲを見たら，近くに樹液があるかもしれないと考えて，探してみる価値があります．５．本番は夜．　カブトムシやクワガタムシは，昼間よりも夜のほうが樹液によく集まります．昼間は強敵のスズメバチがいるので，それを避けているのかもしれません．暗くなるとスズメバチは活動停止して，カブトムシたちの天下になります．　樹液の出ている木を見つけたけれどカナブンやスズメバチやキマダラヒカゲしかいなかったとしたら，ねらいめは夜です．夕方，うす暗くなったら懐中電灯を持って，もう一度行ってみましょう．昼間とはまるで違う虫たちに会えるかもしれません．

博物館の仕事

　というわけで，博物館の仕事を「展示による客寄せ」と考えるのはマチガイだと私がいくら吠えても，しかし現実に日本の博物館はどこでも展示で客寄せをして入場料を稼いでいるわけです．それが常識．　しかし少し考えればわかると思うけど，自然史博物館で展示されているものは生きた動物とかでなく，死んだ標本です．どんな素晴しいもの，一見の価値のあるものでも，２度め３度めには見飽きてしまいます．だから博物館は，「観客を再生産すること」が大きな課題となる．　では観客を再生産するために，博物館は何をすれば良いのか？　今はすぐれた博物館が日本各地にあるので，博物館の活動も広く知られています．たとえば，　-　常設展示のほかに「特別展」を開催し，観客の動員をはかる．　-　講演会を開く．　-　野外活動や体験学習などのイベントを行う．など．これらの活動をボランティア的に側面から支援する「友の会」が活発に動いている例も多いでしょう．これで少し正解に近付きました．しかし，まだ何かが足りない．　行事やイベントを忙しくこなしても，それだけでは結局あまり発展性がありません．何年かすれば，やはり飽きてしまいます．結局のところ，博物館自身が自己更新し，発展するものでなくてはならないでしょう．そのために必要な条件は？　それは専門家の存在だと私は思います．博物館に勤めている専門家は「学芸員」と呼ばれます．博物館には少なくとも１人，できれば複数の学芸員が必要です．立派な博物館なら数十人規模の学芸員を持っているでしょう．シロウトだけでやっている「体験学習」の多くが次第にマンネリ化し，方向性を見失っていくのを見るにつけ，専門家の必要性を私は口を酸っぱくして指摘しています．　あ，シロウトの活動が無意味だと言ってるのではありませんよ．「友の会」の活動は，博物館には必要なことです．そういう活動に加えて，やはり専門家の存在が必要だという趣旨です．　ところで，地方はいま財政が厳しくて，博物館などと言ってもマトモに相手をしてくれる人はまずいません．ただ，博物館とは一般にイメージされているような「箱もの」とか「展示施設」ではないのです．じつは私自身は学芸員の経験もないし，博物館の内部に詳しいわけでもありません．しかし近い将来ひょっとして奇跡がおきて高知県立自然史博物館を造ろうという話になった場合には，私は「友の会」を組織して応援団をやりたいと考えています．　話をもとへ．専門家が必要という所からですね．　で，専門家である学芸員はどういう仕事をするんでしょうか？　もちろん博物館の展示とか，いろいろなイベントに関わります．しかし，もっと基本的には，資料を集める作業があります．自然史博物館の場合は，資料とは生物標本とか化石でしょう．資料を集め，整理し，それと関係した研究をします．　というわけで，やっとキーワードに辿りつきました．そう，博物館とは研究をする所なんです．専門家を専門家たらしめているものは学歴でも肩書きでもありません．専門家は研究活動をしているから専門家なのです．常に変転する学術世界の中に身を置いて，その変動の中をリアルタイムで生きていることこそが，専門家である証しです．専門家は自身が常に自己更新し，発展しています．それが博物館のすべての活動に生命を吹き込みます．　また，知識の伝達を「伝言ゲーム」に例えるなら，専門家は列の先頭近くにいる人です．だから，より真実に近い知識を教えることができます．こういう人による解説は明快です．私の好きな表現をするならば，「深い川は澄んで見える」のです．　もちろん口下手で，人にものを教えるのが恐ろしく下手な専門家もいます．その場合は誰か代役が必要になります．しかし，いずれにせよ専門家の知識を背景にもつことで，解説の透明度は飛躍的に上るでしょう．地方自治体は博物館の運営について，専門家を大切にせねばならないと私は思います．　本日の最も重要な点をもう一度書いておきます．　博物館とは研究をする所です．学芸員による研究活動が，博物館のすべての仕事の基礎となります．