政治の「迷走」
年末である. 鳩山内閣が発足して4か月.年の変わり目に臨み,この内閣について何か書いてみようと思う.「高知に自然史博物館を」というテーマから少しハズれるけれど,文化は政治と無関係ではありえない.特に小泉内閣以後の日本文化の荒廃ぶりを目にするにつけ,やはり自分なりに情報発信する必要を感じる. よく,鳩山内閣は「迷走」していると揶揄される.たしかに,もともと不均質な政治家集団であるうえ,社民党や国民新党まで取り込んだのだから,どちらに行くのかご本人たちにも判らないのだろう. しかし,だからダメかと言われると,そういうものでもない.そもそも政治というものは,さまざまな意見をやり取りしつつ,協力し合って実行して行くものである. 「迷走」しているように見える1つの理由は,閣僚が少し「しゃべり過ぎる」ことだ.これは自民党の旧体制と違って,いろいろな会議がずいぶんオープンになったこととも関係している.誰がどういう発言をしたかが,外部からもよくわかる.会議後のインタビューでは,政治家がまたよくしゃべる.今の段階でそこまで言って良いのだろうかと,傍目にも心配してしまう.ヘマといえばヘマである. 旧体制下ではどうだったかというと,「まだ何も決まっていません」と言って,明瞭なコメントを避けるという手法が頻用されてきた.これは役人の常套句である.地方のどんな小さな町に行っても,役人というのはそういう言い方をして逃げる.それによって市民の発言をけん制する.ずるいけれど上手な手法である. とにかく役人も政治家も秘密裏に事を進め,いざ公開された時点では既に誰も反対できないところまで話ができあがっている,そういう政治が行われてきた.しかし鳩山政権下では,最初の議論の段階から誰でも議論に参加できる.日本中でさまざまな発言が飛び出す.迷走し混乱しているように見える.しかし,こういう「迷走」なら,むしろ良いことかもしれない.こういうとき重要なのはマスコミが正しい情報を多面的に伝えることであるが,この点でマスコミはうまく機能してないように私は思う. 従来の政治と違って,鳩山内閣は「利益誘導型」ではない.つまり旧体制の政治家と違って,あまり後ろめたい要素を持っていないのだろう.そのぶん,よくしゃべる.めいめい違うことを言うし,同じ人が前回と違うことを言ったりする.それをマスコミが殊更のように報道する.それで事足れりと思っているのであれば,日本のマスコミは有害なだけの存在である. くり返すけれど,オープンに話し合いを繰り返すことは,政治のプロセスとして大切なことだし,その必要性は強調しすぎることはないと思う.それが鳩山氏の手法なのだろう.旧体制とは違う手法であり,「政局」ばかりを扱い慣れてきたマスコミ記者の,頭の中身のほうがいまだ旧体制なのだと言えるかもしれない. しかし,それにしても,いつまでも話し合いばかりを続けている訳にもいかないだろう.この点で小沢氏の役割は,やはり大きい.2重権力だとか黒幕だとか,マスコミは否定的に表現することが多いが,私は小沢氏の役柄は「アーサー王」のマーリン,「指輪物語」のガンダルフだと思っている.若い(経験の浅い)内閣は,こういう助言者を必要としている. 話はちがうが,「迷走」を繰り返した政府として多分最も有名なのはエリザベス王朝だろう.エリザベスI世はずいぶん気の変わり易い人だったらしく,彼女の発言が変わるたびに周囲は翻弄された.政治は迷走に迷走を続け,こうして英国の繁栄がもたらされた.あまり参考にならないと思うけれど,ひとつの実例ではある. 簡単に済ますつもりだったけれど,だんだん話が長くなります.続きはまた今度.