「科学館」構想
高知県に自然史博物館を,という理想にはまだ遠いけれど,その萌芽となりうる構想が持ち上がっている.「科学館」の計画だ. 今回の計画は図書館合築の話に伴って持ち上がったものらしい.高知市には市立の「高知市民図書館」がある.それとは別に県立の「高知県立図書館」がある.同じ市内に2つの公立図書館があるのはムダだ,と考えた人がいたらしい.県立と市立とを1つの建物として合築すれば,経費の節約になるではないか.そうだ,そうだ!というような話になったと想像しています. そんなに簡単なものか? と疑問にも思う.しかし,ここでは合築問題についてはパスします.重要なことは「科学館をつくる」ことが県レベルで初めて話題になったこと. そもそも高知市には「子ども科学館」を造ろうという構想が過去にあった.当時の松尾市長が計画したもので,予定地は高知市郊外のゴミ焼却場の近くであった.委員会が何度も持たれ,全体の構想はほぼ完成し,着工開始まで秒読みの段階だった.このとき突然,小泉改革の嵐が吹き荒れた.高知市は当てにしていた財源から見放され,こうして「子ども科学館」計画は吹っ飛んだ.だから財政的見通しさえ立てば,「子ども科学館」を実現させることは,いわば必然とも言える. もう1つの流れがある.それは「高知市子ども科学図書館」である.これは高知市の理科教師たちが立ち上げ,運営してきたものらしい.いきさつを知らないが,現在は「高知市民図書館」の分館(市内各地に散在している)の1つである「潮江(うしおえ)市民図書館」の2階にある.室内には動物剥製や昆虫標本や,科学工作の作品などが展示されている.週末には小学生を対象に,植物観察や昆虫採集や,科学工作などの教室を開いている. この「子ども科学図書館」が関係する行事では,「高知市小中学生科学展覧会」が重要である.毎年2月に開催される展覧会で,おとなの学会のポスターセッションに似ている.ただしポスターそのものだけでなく,標本や科学工作品などの「実物」の展示もたくさんある.多くは前年夏休みの「自由研究」の成果であろう. こうした活動を通じて,とにかく高知市の理科教育の中で一定の地歩を占めてきたのが「子ども科学図書館」であり,そういう場を使っての展覧会であった.その「子ども科学図書館」は今回,新(合築)図書館内にできる「子ども科学館」と合流することになっている. いま「合流」と書いたが,計画書案を見る限りでは「吸収合併」に近いかもしれない.歴史的に言うと,松尾市長の「子ども科学館」構想という新しいアイデアと,理科教師たちが古くから育んできた「子ども科学図書館」の実践とが融合?することになる.形のうえではそういう事だ.とにかく,どちらも「高知市」レベルの計画であり実践であった. ところが今回の「科学館」は,高知県教育委員会が牛耳っている.「市」ではなく「県」の部署が乗り出してきている点が,従来との大きな違いだ.そして,もう1つ評価したいのは,検討委員会を重ねる中で,「子ども」の字がハズされたということだ. 話はまだまだ続くけれど,今日はここまで.