米国の戦争は正しい?
集団的自衛権を容認する,とは,米国の手先となって世界中どこにでも自衛隊を送って戦争をする,ということ.このことのデメリットについての話を続けます. 米国は世界中で最も戦争が好きな国です.第2次大戦後もほとんど途切れることなく,ずっと世界のどこかで戦争をして来た.戦争そのものが経済システムに組み込まれた,いわば戦争中毒の国です.こういう国の要請に応じて自衛隊を派遣します,と宣言するのが「集団的自衛権」です. たぶん最大の問題は,米国の戦争が必ずしも「正しい」と限らないことでしょう.ベトナム戦争は「ベトコン」つまりベトナムの共産主義者との戦いだと米国は言い続けていた.その内実はベトナム国民に対する無差別爆撃でした.米国が侵略されている訳でもないのに,わざわざベトナムに出かけて行って,ベトナムの国土を爆撃する.このような戦争に正当性があるでしょうか. ベトナム戦争を継続する米国に対し世界中から批判の声が高まり,とりわけ米国内での良識ある人々が厳しく米国政府を批判した.そして米国は結局ベトナムへの介入を放棄せざるをえなくなった.これがベトナム戦争です. 日本はベトナムに自衛隊を送りませんでした.憲法9条があるからです.もし当時の政府が「集団的自衛権」のようなへ理屈をでっち上げていたら,自衛隊はベトナムに送られ,殺し殺される殺人ゲームに参加させられたでしょう.何の恨みもないベトナム人を殺すなどという所業に直接携わらなかったのは,本当に幸運でした.仏教徒の方,特に創価学会の皆様は,このことをどう評価されますか? イラク戦争はどうでしょうか.イラクには「大量破壊兵器」がある,と当時のブッシュ米大統領が難クセをつけて始めた戦争です.大量破壊兵器は結局ありませんでした.米国はイラクのフセイン大統領を殺し,この政権を倒しました.以後このエリアは混乱を極め,今も各地で戦闘がくり広げられています.近年は「イスラム国」が勢力範囲を拡げ,日本人ジャーナリストも殺されました.すべては米国がフセイン政権を倒したことに起因している,と言っても良いでしょう. 日本政府の対応ですが,当時は小泉純一郎という馬鹿が首相をやっていました.この人が当時の中東情勢を熟考した形跡はありません.小泉氏は米国を訪問し,ブッシュ氏に求められるままに,2つ返事で自衛隊派遣をOKしました.しかし憲法9条があるので,自衛隊は派遣するけれども戦闘行為は行わない.派遣される場所は「非戦闘地域」である,などと強弁せざるをえなかったわけです.「自衛隊がいる場所だから非戦闘地域だ」という,苦し紛れの迷答弁でご自身の頭の足りなさを白日にさらした首相でした.しかし馬鹿は馬鹿なりに,最後の一線を越えることはありませんでした. この最後の一線,つまり海外で戦闘行為を行うこと,を可能にするのが今回の安保法制(戦争法案)です.露骨な憲法違反です. 米国に何かを要請されたら,日本政府はまず断れないでしょう.要請されるままに米国の走狗となって,世界各地で戦闘行為(つまり殺人)をする.米国を敵視し,嫌う国民は世界中にいます.その憎まれ役の一部を,日本国が引き受けることになります.これは日本と日本国民にとって,大きなデメリットだと私は思います.