セルカリアを調べてみよう
人体寄生虫は,高校までの生物学では,ほとんど扱われていないので,セルカリアという言葉を聞いたことのない人も多いかもしれない.しかし自然界では淡水産巻貝の寄生虫として,無視できない存在です.それにしても,たとえば高校の生物クラブなどで,「セルカリアを調べてみよう」などという試みは,されてないのでないか. 浦部美佐子「湖と川の寄生虫たち」サンライズ出版,2016.という本には,セルカリアの調べ方が説明されています.淡水貝としてカワニナを調べることが推奨されている.私もカワニナが良いと思います. 最近は犬を散歩させる人が糞の始末をしっかりするので,寄生虫も少なくなったようです.逆に,犬や動物の糞で「汚染」されているような場所とか,その水が流入しているような水路や池であれば,そこにいるカワニナがセルカリアを持っている確率は高いかもしれない. セルカリアを見つけたら,その種類を判定するには,伊藤二郎先生の「日本産セルカリア綜説」を参照すれば良いでしょう. この伊藤先生の論文や,その他「日本における寄生虫学の研究」に掲載されている論文は,目黒寄生虫館のHPで見ることができます.https://kiseichu-archives.blogspot.com/p/progress-med-parasitol-japan-j.html?fbclid=IwY2xjawFt49NleHRuA2FlbQIxMAABHQecMLmR61ay2lsw83C26M9QrvIbRpeySW5NqZd1CpLs3oZrsZh2mSwDVQ_aem_2-xnKbT80hTEvK8oQGQOXw セルカリアって何だ? という人のため,少し補足説明しておきます. 吸虫類の卵は,その吸虫に寄生されている哺乳類や鳥の便とともに外界に出ます.運良く水に落ちたら,そこで幼虫が孵化して泳ぎ出す.この幼虫は巻貝の体に侵入して発育.そこで「幼生生殖」をして増殖します(「幼生生殖」は高校生物の教科書に出ているかも). 最初1匹だった幼虫が増殖して,数千匹の「セルカリア」となって,貝から泳ぎ出します. なので巻貝(たとえばカワニナ)をたくさん調べたら,セルカリアを放出している貝を見つけることができるはずです.