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2008年07月02日
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カテゴリ:荻原 浩
愛しの座敷わらし

生まれてすぐに家族になるわけじゃない。一緒にいるから家族になるのだ。
東京から田舎に引っ越した一家が、座敷わらしとの出会いを機に家族の絆を
取り戻してゆく、ささやかな希望と再生の物語。
朝日新聞好評連載、待望の単行本化!          (Amazonより)



私史上初の荻原浩さん作品です。

お気に入り登録させていただいている深居さんから教えていただき、
図書館に予約をし待つこと2ヶ月あまり。やっと読むことができました。

食品メーカーの課長で左遷に近い形で地方に飛ばされた父・晃一。

息子の小児喘息や義母の精神状態が気がかりなちょっと気の強い母・史子。

家族(とりわけ父)を「ウザイ」と思っており、学校での友人関係に
悩んでいる13歳の中学生・梓美。

喘息を心配する母に行動を規制されつつも好奇心旺盛な小学4年の智也。

連れ合いを亡くし東京に呼び寄せられて以来自分の殻に閉じこもるようになり
軽い『高齢者うつ』と診断されている、晃一の母・澄代

ちょっと能天気な晃一の突っ走り気味の行動に巻き込まれ、一家5人プラス
コーギー犬・クッキーは築百三年の古民家で暮らす羽目になってしまった。

家の裏手には鍵のかかった小さな祠、家の2階には衣装箪笥並の大きな仏壇
など曰くありげなものがあり、家のあちらこちらから『トトトトト…』という
足音が聞こえたり、食べ物がひとつだけ無くなったり…。

そんなある日、智也は裏の祠の前で、紺色の着物を着ておかっぱ頭の天辺で
髪を結んだ4、5歳くらいの小さな子供に出会います。

座敷わらしが家族それぞれになにかしらの働きかけをして一家を幸せに…、
っていう物語かなと思っていたのですが、ちょっと違いました。

座敷わらしは怯えてなかなか姿を現さず、現れたとしても、肉眼で見える人、
鏡越しにしか見えない人、カメラのレンズ越しにしか見えない人、
といった感じで家族内でも見え方がバラバラ。

しかも、この座敷わらしは言葉を話すことができません。
その理由がすごく切ないです。

座敷わらしが何かをするというわけではありませんが、座敷わらしの出現を
きっかけに、家族それぞれが自分の力で目の前の小さな壁を乗り超えたことで、
ぎくしゃくしていた家族の関係も少しずつよい方向に変化していきます。

この家で暮らすまでみんなそれぞれ何かを抱えていたんだけれど、
中でも特に梓美が抱える悩みにすごく胸が痛くなりました。

何が原因かもわからず、仲の良かった友達から突然仲間はずれにされる。
特に女性はこういう経験のある人って結構多いのではないでしょうか。

やっている方は大して罪の意識なんかなくて、すぐに忘れちゃうんだろうけれど
やられた方は悲しくて苦しくて自尊心がズタズタになって自分に自信が持てなくなり、
人付き合いが恐くなって、ヘタをすればその感覚を一生引きずりかねない。

だから、梓美がそれを乗り越えて強くなっていく姿が本当に嬉しかったです。

全体的にユーモラスでテンポのある文章がとっても楽しくてサクサク読めました♪
なんといっても、座敷わらしがメチャメチャかわいいんです!!

ラストでは思わずウルウルしつつも顔の筋肉が緩む感じで…。
本を閉じた後もしばらくあたたかい余韻が残る素敵な作品でした。





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最終更新日  2008年07月02日 17時23分02秒
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