|
カテゴリ:ま行の作家
宇宙的スケールの青春小説。 満月の夜、友人に崖から蹴り落とされた「ぼく」。 命は助かったが、右足に大怪我を負う。 そんな「ぼく」の前に、二人の変人、科学オタク・中川と 邪眼を持つオカルト少女・かごめ、そして「やつら」が現れる…。 第19回小説すばる新人賞受賞作。(Amazonより) ブログのレビューを参考にさせていただいた方:なみへい500さん 突然友達に、落ちたら命の危険性があるような高い崖から蹴り落とされる・・・。 その友達が自分と仲が悪かったとか、乱暴者のいじめっ子だったというなら、 なんの躊躇もなく憎んだり恨んだりすることができると思う。 でも、その相手が仲良く付き合っていた友達だったとしたら。 その友達が救出された自分を見て、涙を流し続けていたとしたら。 そして、その後友達は行方がわからなくなり、会うことができないとしたら。 その友達の「本当の気持ち」がわからない限り、憎むことも恨むこともできない・・・。 主人公の沢村幸彦はバスケットをこよなく愛する中学2年生。 ある満月の夜、友達だったはずの綾瀬涼平に崖から蹴り落とされた。 奇跡的に命は取り留めたものの右足に大怪我を負ってしまった幸彦。 家族や友人達は綾瀬を悪し様に罵るが、幸彦は綾瀬を憎むことができずにいた。 家族をはじめ周りの人間に心配をかけまいと、明るく振舞っている幸彦だったが 心の中には常に割りきれない混沌とした思いを抱えていた。 度重なる手術と治療のため長期の入院を余儀なくされた幸彦は、 2度目の『中学2年生』生活を送ることになった。 そこで出会った変人二人―。 旧理科準備室を「ラボ」と呼び我が物顔で占領し、『霊界通信機』なるものを 作るためにいつも意味不明な実験を続けている中川京一。 誰とも言葉を交わそうとせずいつも左目に眼帯をし、「眼帯に隠されている目は 『邪眼』でオカルト的なパワーを持っている」と噂されている横山かごめ。 二人との出会いが幸彦の心に様々な影響を与えていく。 そんな中、中川とかごめを除く幸彦の周りの人間達の言動が徐々に変化していく。 まるで大きな何かに操られているかのように・・・。 めまぐるしく変わる幸彦の思いが丁寧に描かれています。 物語は幸彦目線の「ぼく」という一人称になっているのですが、友達と交わす セリフでは「オレ」と言っているのがなんだか微笑ましいです。 飄々としていて変わり者だけど実は心優しい中川もいい味を出していますが、 私が気に入ってしまったのは『邪眼』を持つかごめちゃん。 普段の無口さがまるで嘘のように、マシンガン並の勢いで幸彦に対して 罵詈雑言を投げつけるんですが、その悪口が・・・。 「あんたなんか小公女セーラよ!」 「黙れ!プリンセス・セーラ」 って・・・。どないやねん、それ!(笑) カルピスの原液をコップに半分も入れるかごめに幸彦が 「甘すぎて飲めないよ」と突っ込みを入れると 「余計なお世話よ。あたしはこうして、そうっとお水を注いで、かき混ぜないで薄味の 上澄みだけを飲むの。そうすれば何度もお代わりできてなんか得した気がするでしょ」 かごめちゃん、ほんとナイスキャラです♪ 中川やかごめとのやり取りがすごくいい感じで、そのまま「中学生日記」的な 感じで進んでいくのかと思いきや、何気にじわじわとSFちっくな方向に・・・。 なんだか不思議な感じの話なんだけど、じわんわりと心があたたまる作品でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ま行の作家] カテゴリの最新記事
|