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カテゴリ:佐々木 譲
警察官人生二十五年。 不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、 単身赴任の駐在勤務となった巡査部長の川久保。 「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、川久保が目撃した荒廃の兆し、 些細な出来事。嗅ぎつけた“過去の腐臭”とは…。 捜査の第一線に加われない駐在警官の刑事魂が、 よそ者を嫌う町の犯罪を暴いていく、本物の警察小説。 (「BOOK」データベースより) 以前読んだ『決断―警察小説競作』というアンソロジーにも 収録されていた『逸脱』をはじめとする連作短編集です。 「田舎町の駐在の物語」と聞くと、なんとなくのどかで ほのぼのとしたイメージを持ってしまいがちですが、 この作品にはそんな要素はまったくなくて かなりハードボイルドな内容になっています。 駐在の川久保は、元刑事ということもあり、観察眼が優れている。 でも、刑事達からは「制服警官」ということで見下され、 町の人々からは、「しょせんよそ者」という扱いを受けている。 そんな中、いくつかの事件が起き、川久保は刑事達が見落とした 事柄を丁寧に拾い上げ、独自に捜査を進めていく。 決してでしゃばることなく、あくまでも「駐在」として。 よそ者を受け入れず、町にとって不用と思われる人々を排除し 町の名誉を守るためならなりふり構わない町の実力者たち。 読んでいくうちに、どんどんこの町が嫌いになっていきました。 川久保が親身になって関わっていた人々の行く末にしても 事件の結末にしても、救いがないというか、やりきれないものばかり。 しかも、「え、ここで終わり?」と思うような唐突なラストだったり。 人によっては「なんかすっきりしねぇなー」と思うかもしれません。 それでも不思議と読後感は、けっして悪くなかったですね。 すごく地味で淡々としたストーリー展開ではあるんだけれど、 自分の信念を貫いていく川久保の姿にすっかり魅せられてしまいました。 内容そのままじゃん!って言えば、確かにそのままなんだけど、 『制服捜査』っていうタイトル、かなり秀逸なのではないかと。 個人的には、なんていうか、「ガツン!」とくる警察小説でしたね。 こういう骨太な感じの話、すごく好きです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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