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カテゴリ:有川 浩
電車は、人数分の人生を乗せて、どこまでもは続かない線路を 走っていく―片道わずか15分。そのとき、物語が動き出す。 (「BOOK」データベースより) お気に入り登録させていただいている DODO1019さんから教えていただいた作品です。 停車駅がたった8つしかない短い路線、阪急今津線の 電車内が主な舞台の16篇からなる連作短編集です。 ・・というか、1作ごとのページ数の少なさを考えると ショートショート集、という感じかもしれません。 阪急今津線の停車駅は、宝塚駅・宝塚南口駅・逆瀬川駅・ 小林駅・仁川駅・甲東園駅・門戸厄神駅・西宮北口駅。 この作品は、上記の今津線の8つの駅名が、それぞれの 短編のタイトルになっています。 8駅なのになぜ16篇―? 答えは、往復するからです。 まず、宝塚駅から西宮北駅までで8篇。 そして折り返し、西宮北駅から宝塚駅までで8篇。 1篇目「宝塚駅」は、暇さえあれば図書館に通いつめるほど 本好きの男性の目線で語られています。 今津線の車輌内で、いつも図書館で見かける名前も知らない女性が 不意に自分の隣の席に座ったことから物語が始まります。 2篇目の「宝塚南口駅」は、結婚目前に彼氏を友人に寝取られ、 その二人の結婚式に、花嫁顔負けの純白のドレスを身にまとって 「討ち入り」をした帰りの女性・翔子の目線で語られます。 ちなみにこの女性、1篇目に登場する二人と同じ車輌に乗ってます。 3篇目の「逆瀬川駅」は、孫娘とドッグガーデンに行った帰りの 年配女性・時江の目線で語られます。 電車に乗ると、純白のドレスを着て引き出物の紙袋を持った女性が。 それを見た孫娘が「花嫁さん」と声をあげたことで、その女性が 泣き出してしまったことから、ある程度の事情を察していた祖母は 「討ち入りは成功したの?」と、その女性(翔子)に声をかける。 と、こんな具合に、登場人物が少しづつリンクしていきます。 その他の主な登場人物は・・・。 顔はいいけれどちょっとしたことですぐにキレる暴力男の彼氏に いつも振りまわされている大学生・ミサ。 社会人なのに「絹」という漢字が読めない、ちょっとおバカで でも優しい彼氏を持つ、女子高校生・えっちゃん。 見た目はパンク風なのに実は「軍事オタク」の大学生・圭一と 子供の頃から「権田原」という苗字をからかわれ続けたことで 男の子と話すのがちょっと苦手な大学生・美帆。 これらの登場人物それぞれが、時には会話をしたり、 遠くから見ているだけだったり、すれ違うだけだったり。 何かしらの関わりを持って物語が進んでいきます。 折り返し以降の8篇は、前半の8篇の半年後が描かれているため 登場人物たちの置かれている状況が少し変化しています。 後半になって新たに登場し、強烈な印象を与えるのは 派手な服、派手なアクセサリー、高級ブランドを身にまとい、 甲高い声でやかましく、マナーが最悪のオバちゃんグループ。 その中にいて、周りのオバちゃん達の強烈さについていけず 内心ではグループから抜けたいと思っている年配女性など。 色々な形でリンクしていく様が本当に見事でした。 この作品、関西の話だというのに、なぜか関西弁率が低くて 主な登場人物で関西弁なのは、本好きの男性とミサくらい。 関西弁が大好きな私としては、全部関西弁でもOK!って 思うんですけど、たぶんたまにちらっと出てくるからこそ、 関西弁のいい味が出てるような気もするんですよね。 ちなみに無法者のオバちゃんグループも全員標準語 なんですが、これは大正解!という気がします。 関西の方には失礼かと思いますが、関西のオバちゃんなら これくらいのことはありかなーと妙に納得しちゃいそうで。 しかも、ついつい笑っちゃう展開になりそうな気もするし。 その点、標準語だと笑える要素ゼロなので、品の悪さが際立つ。 関西の方からすれば、また違う感覚なのかもしれないけど 作品全体の関西弁と標準語の配分は、本当に見事だと思いました。 読みながら声を出して笑っちゃったり、ジーンときたり。 ページをめくる毎に、どんどん幸せな気持ちになっていく。 何度でも読み返したいと思える、本当に素敵な作品でした♪ 余談ですが、私ずっと有川浩さんを「ひろしさん(男性)」だと 思い込んでたんですが、「ひろさん(女性)」だったんですねー。 あとがきで知って、ちょっとびっくりしちゃいました(^_^;) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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