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 以前にもましてロボットをよく見かけるようになった。肘を直角に曲げ、その肘を上方に突き上げるようにして進む。脚は腕の動きとはまったく無関係に動き、一歩ずつ、さも重そうに運ぶ。一歩が終わるごとに次の命令が出るらしく、全体が前進運動というひとつの流れになっていない。

 公園に行くと、そんなロボットに何台も続けて出会うようになった。

 しばらく前までは、こういう動作のロボットはスポーツクラブの生産ライン上でしか見ることがなかった。それが今や、どんどん街に流れてくる。鉄腕アトムの夢がこんなかたちで実現しようとは、手塚治虫さんも草葉の陰できっと苦笑いをしていらっしゃるにちがいない。

 そもそも曲げた肘を前方に突き上げる奇妙な動作はどこから来たものなのか、スポーツクラブのインストラクターに訊いたことがある。エアロビクスの影響ではないかということだった。確かに、エアロビクスでは同じ位置で歩く動作をするようなレッスンがある。

 ある日、まさにそのレッスンを目にする機会があった。するとどうだろう。インストラクターは肘をしっかり後ろに振っており、前方に突き上げるような動作などしてない。生徒たちは、その動きを見て自分も同じ動作をしようとしているはずなのに、腕の動きがまったくちがうものになっている。

 見るべきところをまったく見ていないのだ。インストラクターがそのことに気づいていないはずがない。気づいていて、あきらめているのかもしれない。他人にモノを教えることのむずかしさ。そこには人智を超えた力が働いているように思えてならない。翻訳でも同じこと。こちらが何を言っても、みながみなまったく別のところを見ている。

 こういうロボットの存在は非常に困ったものだ。スポーツクラブでも、そういうことは何も指導しないものだから、生産ラインを歩いているロボットを見た人は、歩くという動作がそれでいいのだと思ってしまう。すると、また1台ロボットが増える。

 もちろん、個人個人がどんな歩きをしようと、その人の自由である。だから、どうすることもできない。だけど、そんなロボットが公園にあふれるようになったら、どうなるか。それを見た人が、歩くというのはこんなものでいいと思ってしまう。それがいちばん怖い。

 近ごろ、中高年でも競歩に興味をもって自己流で始め、まず歩型を問われない「速歩」の大会に参加し、次に競歩の大会に挑戦する人が増えている。ところが、たいていは途中で反則を取られて、ゴールにまで辿りつく人はほとんどいない。

 別にだれもが競歩をめざしているわけではないけれども、せっかく新しいスポーツに挑戦しようとしたのに、街にあふれるロボットの影響を受けてこんなことになっては、大変不幸なことだと言わざるをえない。

 いや、そんなことよりももっと大事なことがある。競歩というものがけっして特殊な歩きではなく、姿勢を正して腰を高い位置に保ち、無理な力がまったく入っていない理想の歩きの延長線上にあるものだということがわかっていない。ファッションモデルの歩きも、基本的にはこれと同じもので、要は速さを競うか競わないかのちがいである。

 ふつうの歩きの延長線上にあると言われて納得できない人は、オーストラリアやニュージーランドに行ってみればよい。腰を高い位置に保ったまま、申し分のない姿勢できれいに膝を伸ばして歩いている。せかせか歩いているわけではないのに、けっこう速い。

 それに比べて、近ごろの日本人はいかにも姿勢が悪い。

 背筋を伸ばし、膝を伸ばして歩くことは、競歩とか、健康のためとか言う以前に、人間が人間として歩く時の最低限の作法であるはずだ。その作法がないがしろにされている。

 作法をいい加減にしたまま、上っ面だけを真似するから、ロボットのような歩きになる。まず、姿勢を正し、しっかりと腰を入れ、膝を伸ばす。肘なんてものはその動作を楽に続けることができるようにするためのもので、敢えて曲げる必要などないものだ。腕はだらりと下げた方が楽なはず。敢えてしんどい方法をとるかぎりは、見返りがなくては。どうしても肘を振りたいのであれば、ひたすら後ろへ振る。その反動で前に行くだけのことであって、意識して前に振ることなど百害あって一利なし。

 つまり、姿勢と腰と膝、本当に大事な3つのものには目もくれず、いちばん最後に考えればいい肘だけを真似し(本質的には真似になっていない)ているのがロボットたちである。

 そんなことをしても、ただただ奇妙に見えるだけで、姿勢の悪い若者たちに何ら訴える力がない。自分たちの歩きの方がまだしも「きれいに」見える。だから、若者たちはますます、だらしなく背中を曲げ、腰を落とし膝を曲げて歩くようになる。


 人類とは「直立歩行する霊長類である」と定義するのであれば、その人類が地球上から、少なくとも日本からはどんどん姿を消しつつあると言えるのではないか。
それでいて、自由の女神のある国にだけ盲目的にあこがれるのも、もしかしたら「猿の惑星」をめざしてのことなのかもしれない。



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最終更新日  2006年09月11日 12時40分52秒
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