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カテゴリ:翻訳
(ソレイアHP「講師の雑記帳(4月13日分)」から転載)
ここでちょっときわどいことを書いてみよう。講座誕生の秘話でもあり、裏話でもある。もともと、ぼくは大阪の人間だから、大阪東京間を往復すれば、新幹線で3万はかかる。それまでにも、ぼくを呼んで翻訳講座を開こうとした翻訳会社があったけれども、採算の問題で立ち消えになった。それを、単なる受講生の集団にすぎないソレイアが実現した。それはそれで凄いことだと思う。発想も凄いし、それを実行に移した決断力も凄い。翻訳もこれくらいできれば申し分ないのだが、天は二物を与えないらしい。 いくら金に糸目はつけないと言ったって、これだけの交通費の上に講師料を払うのは辛かろう。そこで、ソレイアが目をつけたのが一般講座である。一般講座の受講料については講師との取り分を決め、運営費に充てれば多少なりとも経費が浮く計算になる。一般講座を開くのにはそういう切実な事情がある。一般講座がなければ絶対やっていけないというものではないが、運営上重要な収入源であることは否めない。 ただし、ソレイアはけっして利益を上げてはいない。自分たちの受講料が多少安くなるだけで、会計上はだれも得をしていない。そこが、講師料を払った上になおも利益を上げる講座とは決定的に異なる点である。 だからこそ、いわゆる営利企業にできなかったことを実現することができたわけだ。目論みは成功し、講座は軌道に乗った。5回、10回と回を重ねても、ソレイアから10名、一般から10名ほどの参加者がある。その意味でも安定した講座になった。その安定性こそが実はいちばんの命取りになる。講座をつぶしはしないが、講座の目的を骨抜きにしてしまう。 ソレイアの講座が実現したあと、翻訳会社でも一社、講座を実現させた会社がある。サングローバル社である。それで、その会社が利益を上げたかというと、そんなことは絶対にない。会長の櫻井恵美子さんは「何としても情報量理論を広めなければ」と言ってくれた。もちろん、理念に賛同したというだけの理由ではない。経営者が理念だけで動くはずがない。講座は吐き出しでも、そのあとに期待できる経済効果がある。年間5万枚を受注するとして、チェックにかかる人件費を1枚100円節約できれば、年間500万円の経済効果を生む。櫻井さんの血圧も20mmHg、血糖値も30は下がるはずだ。翻訳業界のためにも櫻井さんには健康でいてもらわなければならない。 日本の翻訳業界にいちばん欠けているのは、技術の共有である。めいめいが自分勝手なやり方で翻訳している。英語の顔さえ立てれば、日本語としての体裁などおかまいなしの翻訳者があまりにも多い。これではチェックする者が大変だ。力及ばず不十分なまま納品していては、いつまでたってもクライアントからの絶対的な信頼を勝ち取ることができない。解釈はともかく、もう少しまともな日本語にしてくれれば、どれだけ仕事が進むだろうか。翻訳会社が日々悶々としているのに、翻訳者だけが涼しい顔をしている。医薬が儲かるとみれば、自社に技術の蓄積もないくせに節操なく進出する会社とちがって、サングローバルは医薬への進出に踏み切れないでいる。チェックから納品までの態勢を整える算段がつかないからだ。 そう、講座の目的とはまさにそのことにほかならない。技術の共有を実現することである。そこから生まれる経済効果は計り知れない。 ←ランキングに登録しています。クリックおねがいします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年10月10日 11時25分44秒
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