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カテゴリ:翻訳
(ソレイアHP「講師の雑記帳(4月18日分)」から転載)

 世の中でいちばん大胆な業種は何かと問われたら、ぼくは躊躇することなく翻訳業だと答える。翻訳会社はクライアントからの発注を受けて、ほとんどは下請けに出す。そこまではいい。でも、これがもし製造業だとしたら、その下請け会社の工場を見学し、生産ラインを自分の目で確かめておかないかぎり不安でしょうがない。

 そのために現場に足を運んだ翻訳会社の社長がいったい何人いるだろうか。ぼくなら、できあがった製品からおよその見当はつくけれども、現場を見ないことにはわからないことが山ほどある。

 どんな生産ラインを備えているかもわからない複数の下請けに外注し、納品された中間製品に俄か仕立ての修正を加えただけで、最終消費者に納品する。いったい世の中にこれほどの暴挙があるだろうか。これまで何度も、いろんなところから翻訳会社をやらないんですかと訊かれたが、この問題が解決しないかぎり、ぼくが翻訳会社を興すことはない。

 ここまで書けば、サングローバルの講座が何を目指したものであるかがわかるはずだ。下請け工場の生産ラインを見学して、不良品を生み出す原因を見つけ出し、生産ラインの改造を迫ることが最大の目的である。

 購入者の立場から生産ラインを見学しに来てくれて、不良品を生み出す原因を指摘してくれるのだから、工場にとってはとてもありがたいことであるはずだ。逆に、工場への立ち入りを拒んだり、改造をしぶったりすれば、もうそれで取引はしてもらえない。このまま不良品を作り続けても、そんな商品を買ってくれる会社が現れるとは思えない。資金面の問題はあるが、生産ラインを全面的に改造する以外に生き延びる道はない。

 製造業の理屈からすれば、櫻井さんの筋書き通りに進まない道理はない。ところが、そこに待ち構えていたのは、古い体質から抜け切れない抵抗勢力の存在だった。ばくはまさに、外務省の改革に取り組んだ田中真紀子さん、大阪市の改革に着手した大平光代さんの立場に立たされた。

 大きく見て問題は二点ある。ひとつは飲食店の原理、もうひとつは素人経営者の存在である。

 一流レストランと、漫然と商売を続けている食堂とでは味の差は歴然であるけれども、味がよくないものが不良品だというわけではない。「あそこの店はまずい」と言われることはあっても、生煮え生焼けや黒こげのものを出したり、食中毒を出したりしないかぎり、欠陥商品にはなりえない。それほどおいしくなくても安ければ客は来る。

 食中毒は論外として、生煮えや黒こげはだれにでも簡単に判断がつく。人によって見解が分かれることはあまりない。ところが、翻訳ではいったい何が生煮え生焼けや黒こげに相当するのかがわかりにくい。ある人には生焼けでも、別の人には素材の旨みを最大限に生かしていると思えることがある。ほとんどの翻訳者は、自分自身の出すものがそれほどおいしいものだとは思っていないにしても、生煮えや黒こげだとはゆめ思っていない。不良品かどうかの見分けが容易でなく、当の本人にもその自覚がないのであるから、生産ラインを改造する必要がありますねと言われても、そう簡単には「はい、そうですか」と言えるはずがない。

 どの翻訳者の生産ラインも、それぞれ独自のやり方で築き上げてきたものである。もちろん、改造してもっといいものにしたいと思っている。ただし、それは客の立場から見たものではなく、専ら作業する自分の立場から見たものである。スピードを上げたり、自分にとってむずかしい構文や単語を処理しやすいように工夫したりすることは、あくまで翻訳者の都合であって、客の都合ではない。客の立場からすれば、翻訳者がそれほど気にしていないところに問題があることが多い。翻訳者は原文と格闘してねじ伏せた時点で作業が終わったと思っているかもしれないが、本当の作業はそこから始まることを忘れないでほしい。料理だって、ひとつひとつがいくらおいしくても、盛り付けもあれば、全体のバランスもある。コース料理なら、流れというものがある。

 生産ラインを改造しましょうという話をもちかけたとき、工場側と購入者との間にはこのようなズレがある。翻訳者は自分自身の作業効率の改善に必死になっており、客の立場から改善を求める翻訳会社の話など上の空である。生産ラインを改造するということは、いったん生産効率を落とすことでもある。

 もちろん、それで仕事を干されてしまうのであれば、翻訳者だって少しは客の声に耳を傾けるはずだ。そうはならないのには、素人経営者の存在がある。さらに、それ以上に困るのが素人客の存在である。 (つづく)

 
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最終更新日  2006年10月26日 09時00分59秒
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