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新しいことばや語法が生まれると、定着したかどうかが問題にされる。
この定着という言い方ほど、あいまいで何ら根拠のないものも珍しい。まさに、本人の感触でしかない。 その昔、シェープアップのようなおぞましいカタカナを耳にしたかと思ったら、それから2ヵ月もたたないうちにテレビで「もうすっかり日本語に定着した」と言っているのを聞いて、やはりこの国は西ハワイ人なる異民族に支配されていると思ったことがある。 それと逆に、高校の授業で、純文学と大衆文学の中間に位置するものとして中間小説という概念を習った。それから数年後、大学の同級生が「そんな言葉は定着したとは言いがたい」と言って、議論すらさせてくれなかった。 同じ定着と言っても、人によってこれくらいの差がある。 かつて、定着どころか、日本中を席巻したと言ってもいい「ナウい」ですら、今や死語になったと言われる。もしも、それが定着であったとしたら、これほど簡単に廃れ、わずか20年で死語になる憂き目を見るだろうか。 定着したと言えるためには、広く全国で使われるようになっただけでは十分ではない。やがては日本語の血となり肉となるような表現でなければ、定着の名に値しないのではないか。 そこで、どんなことばがふさわしいか。いろいろ考えて「仮着」はどうかと思った。そんなことばが本当にあるのかと思って調べてみると、接着の分野で実際に使われている。 よし、これで行こう。雨後の竹の子のように現れてくる表現がそう簡単に定着するはずがない。疑わしきものはみな、仮着と呼ぶことにする。 のちに詳しく書くことになるが、ことばの変化というものは突然変異と同じで、ほとんどのものは本当はその言語にとって具合が悪い。俗語や単にある個人が使うだけのものも含めて、この瞬間にも無数の新語が誕生しているが、そのなかで生き残るのはほんの一握りである。 新しいことばについて議論するとき、「でも、もう定着しているよ」と議論を打ち切られてはたまらない。そのとき、いや定着でなく仮着だと言えれば、心強い武器になる。 ただひとつ、こんなふうに切り返される懸念は残る。 その「仮着」って、定着してないですよね。 ←ランキングに登録しています。クリックおねがいします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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