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カテゴリ:翻訳
 本場イタリアで、カーデザインの仕事を取り仕切っている日本人がいる。世界各国からあちこちで修行を積んだデザイナーを部下に従えて、自ら猛獣使いと称しながら見事な采配を見せる。

 時にはF1仕様の車もデザインする。

 デザイナーたちはみな、並外れた感性の持ち主で、それぞれにすばらしいデザインをひっさげて乗り込んでくる。だが、機能とデザインとが最高のかたちでひとつになるには、まだまだ足りないところがある。

 機能や性能を犠牲にすることなく、むしろ余すところなく活かしながら、しかもデザインの最高に美しい車を生み出す。それがこの人の仕事である。

 この人、もちろん只者ではない。デザイナーとしても一流で、そのうえに車の構造や機能に精通している。


 いくら美しいシルエットが頭に浮かんでも、車の機能と折が合わなければ、当然ながらそのデザインは成立しない。

 してみると、その意味では技術翻訳者の仕事もまったく同じことではなかろうか。
車は美しくなければならない。それなのに、技術文が美しくなくてもいい理由はどこにもない。

 車の美しさは当然、花や自然の美しさとは同じものではない。技術文の美しさが文学作品の美しさと同じでないのと、何ら変わるところはない。


 翻訳講座の講師のなかには「内容を正しく伝え、しかも日本語として自然な文にするのが、プロとしての腕の見せ所です」なんてシャーシャーと言ってのける者がいるが、そんなものはプロとしての腕の見せ所でも何でもなく、ただただ当たり前のことである。プロとしての腕の見せ所はもっとずっとずっと先にある。その言葉を聞いただけで、どの程度の翻訳をするかは自ずと知れる。

 ところが、世の中、上には上がいると言うべきか、下には下がいると言うべきか、さらに上の立場にある人間で、「どんなに上手な日本語に訳しても」と但し書きをつけてから文章を始める者がいる。できるだけ穿った見方をしないようにと言い聞かせて読んでみても、「私は日本語には自信がありません」と断って、自己弁護をしているようにしかとれない。


 技術翻訳者は工業デザイナーでなければならない。日本語をデザインできなければならない。そのうえで科学技術にも通じている必要がある。まさに、カーデザイナーと同じである。

 車のデザインにも、もちろんクライアントはいる。クライアントのおよその希望はある。しかし、それだけでは最高のものは生み出せない。そこにこそ、カーデザイナーの出番があるわけだ。

 このことは、料理に喩えて考えるともっとよくわかる。クライアントたる客が自分で料理の見本を作って、これと同じ味のものを作れと要求するような話はもちろん聞いたことがない。調理人として雇われた先から、そのようなことを要求されることはあるだろう。その場合にはもちろんそれに従うしかないが、究極のクライアントはあくまでお客さまなのであるから、いつかはそのお客さまの本当の希望を叶えるのだという思いを持ち続けることが必要だ。

「この味が食べたかったんだ」と言われるより、「どうやったら、この味が出るのう」と言われたい。それは、客の希望を汲んでなお、その上を行くことでもある。


 技術翻訳者も同じこと。ぼくは漢字かなの書き分けや、形式にかかわることを除いては、クライアントの指示にはいっさい拘泥しない。そうではなく、その指示に潜むクライアントの希望に耳を傾ける。

 指示に従うのではなく、希望を叶えるのが工業デザイナーの仕事である。


 まさかこんな文体で技術文が書けるとは思ってもみなかった。明快でわかりやすい。これまで見てきた文とは確かに違うけれども、けっして文書の性格に反するものではない。


 これが、工業デザイナーとして勝ち取ってきた評価である。


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最終更新日  2006年11月02日 01時57分54秒
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