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カテゴリ:翻訳
 ぼくはかねてより、医学の文章は本来の日本語で書くべきであり、その方が論理的にも優れていると主張している。

 本来の日本語で書くというのは、原文を訳すために、これまで使ったことのないような構文をムリヤリ作らないということである。


 もちろん、日本語というものが翻訳を通じて豊かになったという考え方もないではないし、ヨーロッパ語との出会いがなければ、現在のような文体の日本語が存在しなかったのも事実である。だが、ヨーロッパの言語から知恵を拝借して、新しい時代の日本語を創造する仕事は、福澤諭吉あたりの仕事で終わっている。

 それ以後のものは、欧米の言語の構造をもちこんで日本語を豊かにしたというより、むしろその構造に力負けして、十分に消化することができないまま、元の構造が残ってしまったというだけのことである。


 日本語には日本人にいちばんわかりやすい文の流れがある。翻訳調にすると、その流れが崩れる。一見論理的に見えるけれども、文とは別に頭で考え考え読まなければならず、文を読んだ瞬間に頭に入るものではない。文を読みながら、どの論理がおかしいかを考えるとき、常に神経を集中していなければならない。これに対して、日本語本来の文で書いてあれば、論理のおかしいところは直感的にわかる。

 それが母語の力というものである。


 先日、この考えを裏づける絶対的な証拠が得られた。

 20年来仕事をいただいている医学専門の翻訳会社から、ドイツ語翻訳の依頼を受けた。クライアントが最初に訳したらしく、チェックですむなら料金を安くしてほしいということだったが、誤訳があるという以前に、ほとんど意味がとれていない。

原文をごていねいに学校英語ならぬ学校ドイツ語の訳で処理しようとしているが、「これらの」、「すべての」、「より~」、「~における」をはじめ、ありとあらゆる西ハワイ語を駆使しているだけで、まるで意味がわかっていない。かろうじて、ある程度は意味がとれているところでも、冠詞を読まずに「すべての」だけはバカ丁寧に使っているものだから、「すべての物質は」なんて文ができてしまう。それじゃあ、宇宙に存在する物質全体を指すことになってしまう。この試験で使用した物質のことだから「被験物質はいずれも」でないと意味が通らない。

 もちろん、ぼくは「これらの」、「すべての」、「より~」などはいっさい使わない。

 そのことを理由にクレームを受けたことは一度もない。

 実はこの仕事、一箇所だけ、ちょっと首を傾げる部分があった。最初にあまりにもひどい訳を見てしまったものだから、気がゆるんだということもあるだろう。その箇所はドイツ語がおかしいのだろうと安易に考えてしまった。

 納品したあと、もちろんクレームはつかなったが、一箇所だけちょっと意味が取りにくいところがあると言って質問が来た。

 30枚ほどあるなかのわずか一箇所。しかも、それはぼくがちょっと気を抜いてしまったあの部分だった。

 それにしても、最初はあれほど意味不明の文を書き連ねていた人が、いったいどういうメカニズムで、それほど短時間の間に、文の論理に不備がある部分を見つけ出せたのだろうか。

 それこそが、母語の力にほかならない。全体を本来の日本語で書けば、日本語の感覚が全開となり、論理に不備のある箇所だけがまるで精巧な検知器にかけたようにはじきだされる。


 今回の一件こそ、「医学は本来の日本語で書くべき」ことを裏づける絶対の証拠である。


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最終更新日  2006年11月04日 12時31分17秒
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