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カテゴリ:翻訳
 時代が動くときには、その前に必ず何らかの予兆がある。


 翻訳会社と翻訳者との対立など、別に目新しいことではない。ぼくも翻訳会社の立場から一挙に十人ほど翻訳者をやめさせたことがあるし、下訳を出して出来の悪さを非難するたびに一人や二人、翻訳者が場合によっては悪態をついてやめていくのは、それこそこの世の理でもある。受講生のなかにも細かい指示に対して「正直言って、本会の(だれの会だと思っているのか)方針にはついていけなくなりました」と言ってやめる者がいる。それだって、方針がまちがっていると言っているわけではない。「厳しい世界であることはわかりますが、それでは面白味もなくなってしまうと思うのです」と、結局は自分にとって都合が悪いだけのことだ。


 誤訳をはじめ不備は認めながらも、「自分はこの仕事がしたいのに」という理由で低い評価を受けたことに不満を表明する人もいれば、「厳しすぎます」と言って「こんな私でも使ってくれるところを探します」と、何とも自己中心的な理由でやめる人もいる。


 だから、それと同じようなことがあちこちで起こるだけなら、別に何ということはない個別の事件にすぎない。ところがである。



 「中世キリスト教世界の掟」と名乗る翻訳会社があって、今そこで一騒動もちあがっている。


 それまで従順であったはずの信徒が次々に反乱を起こしている。「中世キリスト教の掟」社が「誤訳もほとんどなく、内容を正確に把握しています」と評価した翻訳者が、会社の方針に異議を申し立てた。


 それもそのはず、翻訳理論がまるで天動説なのだ。正確に言うと、プトレマイオスの理論のままでは惑星の逆行が説明できないので、太陽だけは一応地球の周りをまわっていることにして、惑星が太陽の周りを回っているという苦し紛れの説明で、観測結果と辻褄を合わせようというものだ。ちょうとティコ・プラーエの理論と同じである。


 観測結果からすればコペルニクスやガリレオの主張する地動説を採らざるをえないのだけれども、それでは、法王としての立場がないらしい。


 だが、それから400年の歳月を経て、ヨハネ・パウロ二世はガリレオに対して下した宗教裁判の判決が誤りであったことを認めて謝罪した。



 「宇宙の構造は聖書に書かれた文の文字通りの意味によって決定されるわけではない」



 原文の構造と形態を盾に自己弁護を続ける翻訳者にとっては、何とも身につまされる話ではないか。


 これまでに、複数の翻訳者が個別の原文理解をめぐって翻訳会社と対立した歴史はあるが、翻訳者が大挙してその理念や方針に反旗を翻すような事態は、人類がその歴史のなかで初めて経験することではないだろうか。


 しかも、出来が悪いからやめてほしいと言ったのであればともかく、ある程度高い評価を受けた翻訳者が、いったいどのような理由で自分に損になるような行動に出るのか、「中世キリスト教世界の掟」社は、この事態を真摯に受けとめ、科学的な思考を以ってその分析に臨むべきであろう。



 コペルニクスが地動説を唱えたとき、法王庁ははるか遠くの新教国での出来事と静観したきらいがある。だが、新教国とカトリック諸国との戦争が激しさを増したのと時を同じくして、法王庁のお膝元でガリレオが地動説を唱えるに至っては、もはや黙認しておくことはできなかった。



 遠からぬ将来、日本の翻訳業界にも火がつき、日本を二分する戦いが必ずや始まるにちがいない。


 翻訳者の反乱など、その予兆にしかすぎないものである。


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最終更新日  2006年11月17日 10時38分49秒
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