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カテゴリ:翻訳
 ある学校の教師が「赤ちゃんの頭蓋骨は骨がつながっていないから、指で押すと簡単に殺せるよ」と教えたことが問題になった。気分が悪くなった生徒もいたという。

 失言した本人は「自分では、こうやったら死んでしまうよ、と言ったつもりだった」と弁明している。

 この教師を処分するのはたやすいが、いったいそれだけですむ問題なのだろうか。

 ぼくは『学校英語よ、さようなら』のなかで「ライム病は免疫ができないので、再感染が可能です」などという文を平気で書いてお金をもらっている翻訳者がいることを指摘した。そこには人間の立場というものが抹消されている。「こうすれば死ねるよ」と「そんなことをすれば死ぬよ」は、外国人にとっては同じように映っても、日本語の母語話者にとってはまったくちがうメッセージを伝えるものである。

 人間の立場からすれば「再び感染するおそれがあります」、「再感染のおそれがあります」か、せめて「再感染の可能性があります」でないといけない。

 こういう感覚のズレた文を探そうと思ったら、むかしはずっしりと重い医学書のページを繰るしかなかったが、今ではインターネットのページに不法投棄されたものがいくらでも見つかる。

 今日いちばん最初に目についたのが「骨壊死は、高用量ステロイドの結果として恐れられている」だ。「恐れられている」とはまたたいそうなこと。大蛇や天の祟りでもあるまいし、いったいだれがどういう状況でそのような心情を抱くのか。英語を訳したものか、ふだん目にしている英語が頭にあってこういう文になったのかはわからないが、書いた人の意図をいろいろ想像するに、本当なら「高用量ステロイド治療には骨壊死のリスクがある」、「ステロイドを高用量で使用すると、骨壊死を来たすおそれがある」「高用量ステロイド治療では、骨壊死の発現が危惧される」(本当に「恐れる」という意味を出したいのであれば、この文がいちばん近いことになる)ほどの文に落ち着くはずのものである。「骨壊死は、高用量ステロイドの副作用のなかで最も××なものである」のような文でないかぎり、「骨壊死は」で始まる文はありえない。その意味でも、この文は人の生理をズタズタにする文である。

 「こうすれば死ねるよ」と「そんなことをすれば死ぬよ」との差、「再感染が可能です」と「再感染の可能性があります」との差、「骨壊死は、高用量ステロイドの結果として恐れられている」と「高用量ステロイド治療では、骨壊死の発現が危惧される」との差が意識にのぼることがなく、どれも同じようなものとしてドロドロに溶けていくのであれば、もはや人は母語など必要としない。片言の英語で十分事足りる。そのために、小学校から英語を教えるというのであれば、一応筋だけは通っている。

 違和感を覚えても、目上の者が使っているものを無下に否定するわけにもいかない。上にいる者に言語感覚が乏しく、傲慢で独りよがりで、支配欲が強い組織ほど、下にいる者の意識もドロドロにされていく。

 日本中至るところに、こうして意識をドロドロにしてしまう環境がある。

 そういう環境で4年間も鍛えられた者が教師になれば、ふと集中力が切れた瞬間に「死んでしまうよ」と「殺すことができる」の差が意識から消えてしまったとしても不思議ではない。さいわい、ドロドロになった意識でも、人権にかかわることだけはみな敏感になるようになっている。この教師の発言が赤ちゃんの命に直接かかわることであったから、問題になっただけのことで、「再感染が可能です」などと言ったとしても、聞き流されていたにちがいない。

 処分するのであれば、このようなかたちで意識がドロドロにされている現状を放置した教育委員会、文部科学省の関係者も同時に処分するのでなければ意味がない。

 さらには、この教師のドロドロになった意識を徹底的に解明し、その意識がどこでだれによって操作されたものであるかを明らかにする必要がある。きっと、大学時代にとんでもない教授が上にいたにちがいない。

 物事を単に「失言した」という「点」で見るのではなく、そういう失言を許してしまう潜在的なメカニズムを「線」として究明するのでなければ、問題は何も解決しない。このような教師の何気ない一言一言に、生徒たちの意識もやがてドロドロにされてしまう。そのなかのだれかが教師になったとき、想像もつかないような失言をしてしまうことは想像にかたくない。

 「小学校から英語」などと、国際感覚に欠けた呑気なことを言っている場合ではない。

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最終更新日  2006年12月25日 09時42分08秒
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