辞書も歩けば

　陸上などという因果なスポーツ、スポーツなどという贅沢な趣味、趣味などという人生の余剰部分にかかわっていると、本末転倒、主客逆転、はたまた Con muchos marineros, el barco sube a la monta’naなんてのは日常茶飯事で、何が何だかわからなくなる。

　4月15日、輪島の競歩大会にマスターズの部が加わったので、日本マスターズの副会長からも参加要請があり、練習ができてないなりに参加することにした。
　もちろん、古来より「漁夫の利」とか「おぼれる者は藁をもつかむ」（これ、全然意味合ってない）とか「転んでもただ起きぬ」とか言うように、レースに参加するかぎりは、観光、暴食（いや、食べ歩き）、代行運転前提の飲み歩きなどが常識。

　大会事務局の斡旋など断って、自分で自分の気にいる宿を予約する。レースのことを考えてのことではなく、そのあとの観光、食事のことを考えてのことである。

　そのレースが地震のため中止になった。
　世界選手権の代表選考を兼ねた若者の50キロ競歩は神戸が肩代わりしてくれることになった。年寄りの10キロはそのまま中止。
　でも、これってもしかしたら、武士の情かも。だって、もし年寄りの10キロまで神戸で代替開催されていたら、ぼくはいったいどちらをとればいいの。

　詳しい情報は届かない。
　予約しておいた宿に、ころあいを見計らって電話した。

　このたびは大変なことで、、、もしもご迷惑でなかったら、予約通りに、お願いできませんでしょうか。
　
　地元が風評被害を案じていた通り、団体のキャンセルが相次いだそうだ。お世話になったタクシーの運転手も、地震前から予約していて、予定通り来たことに驚いていた。
　地元の人だれもが、そのことをとても喜んでくれた。
　こんな時にこそ来てくれる観光客が、復興へのいちばんの心の支えになる。
　そう言ってくださった。

　輪島の朝市でも、こんな時によく来てくれたという感じで迎えられた。

　ボランティアもいいけれど、被害に遭った人たちを支援する方法はひとつではない。
　同情だけでは何もはじまらない。

　これからのぼくにできること、能登のよさ、能登の魅力を伝えていくこと。
　微力だけれども、それしかできない。

　能登、がんばれ。

←ランキングに登録しています。何かちょっとでも得るものがあったと思われたら、ぜひクリックをお願いします。