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カテゴリ:翻訳

 「通訳翻訳ジャーナル」2000年3月号に、「翻訳は犯罪捜査に似ている。専門知識がないから翻訳できませんというのは、被害者と面識がないから捜査できませんというようなものである」と書いた。
 この件がなかなか「受けた」ようで、引用してくださる方が何人もいるのは嬉しいことである。
 このたび、「関係者は捜査からはずされる」点についても書いてほしいという要望があった。
 幸い、ぼくの元受講生に「はぐれ刑事」で女刑事役をしている岡本麗に似た人がいて、そういう情報には事欠かない。
 
 それにしても、これは相当むずかしい注文だ。
 業界ではむしろ、翻訳は関係者がするのが最善であるように思われている。翻訳では利害関係云々よりも、専門知識があることの方が重要視される。
 もちろん、そうはそうで、ある程度専門のことがわかっていない者が翻訳をするのは、刑事でもなんでもない素人が捜査にかかわるのと同じことである。
 ただ、刑事に必要なものは捜査のプロセスであって、捜査を開始した時点でつかんでいる情報ではない。

 薬剤師や医師をはじめ、ある程度最初から専門知識のある人のなかには、自分がこれまで身につけた知識をいわば食いつぶしてお金に換えようとする人がいる。
 その昔、下訳をお願いしたところ、ad libitum(任意量で)を「リビジウムを投与して」と訳してきた薬剤師の人がいた。
 これなどは、捜査を開始した時点でつかんでいた情報で最後まで行けると安易に考えている刑事に似ている。

 本当に困るのはそういう人ではない。
 専門知識のある人のなかには、いつまでたっても翻訳という作業をしない人がいる。原文のなかに出てくる専門用語のひとつひとつに、自分自身の思いを投入する。どの文にも、(本人の考えでは)「読んだ人がわかりやすいように」自分の知識を盛り込んで訳文を膨らませる。もちろん、そんなことは原文のどこにも書いていない。

 それからまた、こういうこともある。
 時々、届いた原稿にやたら、単語の意味が書きこんであるのがある。途中までの訳をつけてチェックですむならその旨を伝えてほしいと言うのだが、とてもチェックなどですむものではない。
 それにしても、自分が理解できた専門用語だけをつないで、原文とはまったく論旨のちがう文を作ってしまうのだから、その想像力の豊かさには脱帽である。なぜ、作家にならずに医師になったのか、不思議でしょうがない。

 翻訳は捜査とちがって関係者がかかわってはいけない絶対的な制約はないのだが、10人のうち2人か3人はひたすら読み取った情報に自分の知識を付け加える。10人のうち何人かは原文が読めないので、専門用語だけで自分の物語をつづる。
 どちらも書いてあること自体、知識としてまちがっているわけではないので、訳文を読んだだけでは翻訳としておかしいことがわからない。
 
 だから、翻訳というものは、対象とする分野の知識がある程度あって、その分野から少し離れたところにいる人がするのがいい。
 
 原文をよく見ないでもそれなりの文を紡ぎ出せるような人は、ある意味であぶなっかしいとも言える。
 原文の言語学的な問題にばかり目が行く人も、危険きわまりない。

 いちばんいいのは、対象とする分野の知識がそこそこあって、原文を注意してみていけばけっして大事なところを踏み外すことのない人である。
 理解もしっかりしており、しかも原文の細かいニュアンスまできちんと伝えてくれる。

 捜査とちがって、言い切ってしまえないが、そういうことは言えると思う。



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最終更新日  2007年05月16日 11時41分10秒
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