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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

Nobuyuki Ota

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2024.07.27
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昨年末と今年2月に続いて三度目の中国研修から戻りました。上海から杭州に入ってファッション企業幹部に丸1日、翌日ミナペルホネン皆川明さんの講演を聴いてから一緒に上海に移動。そして次の日は皆川さんと別れて上海の対岸にある寧波に。ここで中国最大手紳士服メーカーYOUNGOR(ヤンガー)創業者や経営幹部と会食、翌月曜日は午前と夕方の二部制で社員研修をさせてもらいました。


ブランドDNA確立と継承が今回のテーマ


最もDNAを継承しているブランド事例を説明

過去2回の中国研修では主にマーチャンダイジングの基本的を中心に、ファッションをいかにロジカルに受け止め計画的に市場展開するか、言い換えれば「儲ける方法を共に考えましょう」でした。が、今回は直接的に儲ける話ではなく、ブランドビジネスの観念論、ブランドにとって重要な他社とは違うDNAをいかに作り上げことの重要性と、それを長く継承することの難しさが主題、果たして中国のビジネスマンに響くのかどうかちょっと心配でした。儲け話ではないのでしらけるのではないか、と。

しかも2日目はデザイナーの皆川明さん、ご自身の展覧会で表明した「百年つづくブランド」を目指してどういう種まきをしているのか中国で話してくださいとお願いしたので、ミナペルホネンの成功体験でもなければ儲ける話でもありません。ところが意外や意外、会場の雰囲気からはセミナー参加者にはかなり響いたみたい、嬉しかったです。

初日終盤の休憩時間中、ひとりの男性が通訳さん(同時通訳レベルで丁寧に解説してくださる方)に何やら長々と話していました。通訳さんに尋ねたら、いかに重要な話を聴いたか、自分はどれくらい感動したかを延々と感想を語ったとか。聴くうちに身体が熱くなり、将来が明るくなった気がする、と私も言われました。講演後参加者とのパーティーでも、ブランド経営者たちはやや興奮気味に感想を私に話してくれました。決して直接的な儲け話ではなかったのに。


オリジナル素材を紹介しながら講演する皆川さん


講演後皆川さんは多くの参加者から質問攻め

地球環境を考え無駄なことはしない。余った生地はホームソーイング用に測り売り。織物工場が安心してものづくりできるよう何度も同じ技法の素材を発注するだけでなく、生産量と工場の空き具合を考えながら素材発注。アトリエのスタッフには刺繡にどれくらい時間とコストがかかったのかを報告させ、ものづくりのコスト意識を持たせる。生地の重量とコートの長さの両方のバランスからコートの最終デザインを決定する等々、ミナペルホネンのものづくりの姿勢を淡々と語る皆川さんの話、素晴らしかった。日本の一般アパレル経営者にも聴かせたいと思いました。

私は「唯一無二」を連発、ブランドDNAは何もシャネルやクロエのようなデザイナー系ブランドに限ったことではなく一般アパレルメーカーにも必要なこと、それがないとブランドはお客様の信頼を徐々に失い、市場での存在感はどんどんなくなるという話をしました。米国GAPはどのタイミングから日本製デニムを使わなくなって低価格アジア製デニムに切り替えたか、それがどういう結果を招いたのかも詳しく話しました。

一方、ユニクロは商品タグにわざわざ「カイハラデニム」を表記、それを使用している理由を消費者に訴求している。またユニクロはパリを代表するブランドと同じウールジャージーを起用していることも伝え、単純にコストカットしているわけではないと説明しました。ブランドDNAはデザイン、アイテム、色や柄の伝承などのではなく、ものづくりの精神性にあるとも説明、これが参加者のハートにそこそこ響いたようです。


初日講演後参加者と記念撮影

講演後、会場からすぐの場所で直営店舗を構えるブランド(経営者は集合写真で私の左)ショップを訪ねました。洋服をかけるハンガーの使い方に関して「どうして中国のブランドは服をこのように掛けるのが好きなんでしょう」と質問しました。トップスは普通にハンガー掛け、ボトムは長いフック(金具)をセットしてそれにハンガーを掛け、トップスの下にボトムがくるように並べる方法、個人的にはこの方法は反対、トップブランドの多くはこんな余計なことしていませんと説明。翌朝このショップを覗いたらハンガーラックにたくさんつけていた長いフックは全て撤収されていました。

中国の人はアドバイスに納得したら即行動、そのスピード感はのんびり日本とは大違い。だから中国ではアドバイスのしがいがあります。






全国オンライン参加もあったヤンガー者の社内研修

寧波では日曜日にも関わらずヤンガー創業者や経営陣が出迎えてくれ、皆さんと楽しく会食しました。ちょうど今年は創業45年、私の講演午前の部と夕方の部の間に創業祭イベントが組み込まれていました。いまやグループ売上は2兆円の大企業、かつてアトリエサブの田中三郎さんら日本や欧米業界人が長く顧問としてアドバイスした会社だそうです。一代で2兆円規模に導いた創業者李如成さんのリーダーシップはさすが、「私の言うことは聞いてくれないので先生から話してもらいたい」と謙遜なさってましたが、でもどう見てもワンマン社長タイプ、彼の強烈なキャラクターが成長要因でしょう。

ヤンガーでは午前の部でマーチャンダイジングの事例をお話しました。誰に、何を、どうのように、いくつ販売するのか仮説を立てて仕事しましょう。発注はギャンブルみたいなもの、リサーチを十分に行って思い切り大胆に発注すべき。ちまちました発注は機会ロスを生むだけ、しかも機内ロスの回数はカウントできない、コンピュータのデータにあがってこない。ファッションバイイングは一種のギャンブル、楽しまなきゃ。いつも日本で教えてきたことを会場150人、全国各地の営業所からオンライン参加も入れると300人の幹部が参加してくれました。

午後の部は杭州セミナー同様「ブランドDNAの確立と継承」をテーマに講演。質疑応答にたっぷり時間をとって欲しい、私をヤンガーにつないでくれた中国コンサル企業からそう言われていたので話をコンパクトにまとめました。ところが、事前に聞いていた質疑応答はなくそのまま終演、ちょっと拍子抜けでした。オーナー社長の前で社員は下手な質問できないだろうと幹部が忖度して切り上げたのか、それともブランドDNAなんて観念論は最大手企業幹部には面白くなかったのかは不明です。

杭州セミナー、寧波のヤンガー社員研修の結果はそのうち2つのプログラムを企画した佐吉事業コンサルティング社の金時光さんから連絡が来るでしょう。儲ける話でない中国でのセミナーが実際参加者にどのように受け止められたのか、本音の意見を知りたいです。





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Last updated  2024.08.03 10:52:13
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