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カテゴリ:日々日記
聴く曲たくさんあって困るわ~(笑)
そういえば最終話をUPすんの忘れてた気がする…… と、いうことで最終話~ * * * * * 平家物語演義 「木曾の最後 其の3」 「死ぬなよ、か……」 剣を閃光のように抜くと、敵の馬上からの一撃を片手で受けた。 「ああ!生きてやろうじゃねーか!それがあんたの最期の望みだってんならな!」 今井は自分の馬に飛び乗ると、50騎ほどの中にたった一人で飛び込んでいった。 右左と走り回り、敵を切り捨てていくと、すぐに正面に敵がいなくなった。 その代わりに、自分を囲うようにして敵が集まっている。 「なるほど。普通にやっちゃあ勝てねえってか」 敵陣のどこからか、命令の声が聞こえた。 「放てっ!」 と同時に、敵の矢が雨のように降りそそぐ。 「あいつが逃げるまで、俺は死ねないって言ってんだろうがッ!」 矢が今井を襲う。 が、その矢が鎧を貫くことはなかった。その隙間を射ることもない。 今井は傷一つ負わなかった。 その頃。 義仲は松原へと馬を急がせていた。 早く、早く松原へ……! が、焦ったのが悪かった。 バキッ! 「なっ……!」 馬が沈んでゆく。 沼の上に張っていた薄氷が、その重さに耐えられずに割れていた。 「くそっ!おい!こら!しっかりしろ!抜け出せ!」 鞭打ち、馬の腹を蹴るも、その体はどんどんと沈んでいく。 くそっ!くそっ!今井が生かしてくれた命なんだぞ!俺のために!今井が、今井がっ! ふと、後ろのほうで大声が聞こえた。 同時に聞こえる、矢の音。 「今井っ!?」 沈む馬の上で立ち上がり、さっき自分が来た方向を見た。 今井……っ!やられてるのか……? しかし、その思いこそが義仲最後の失態だった。 「いたぞ!義仲だ!」 義仲ははっと振り返る。 しまっ……! 時すでに遅し。後方から放たれた矢が、遠くを見るために上げていた義仲の兜の下を射抜いた。 「がっ……はっ……」 意識が遠のく。 最後の最後に油断した……。 「討ったり!」 矢を射た者が駆け寄り、ついに義仲の首を討ってしまった。 「近ごろ日本国に名を馳せられていた木曾殿を、三浦石田次郎為久がお討ち申したぞ!!」 その声は、勝利の雄たけびとともに、大将を討られた義仲軍の敗北を意味していた。 「嘘だろ……」 今井は馬上で倒れそうになった。 あまりにも、あまりにも残酷な通告。 それは自分の後ろから大声として届いた。 そう、ちょうど義仲を逃がした、松原の方から。 何が死ぬなよだ。お前が討ち取られてどうすんだよ……っ! 今井はキッと敵を睨むと、自分の太刀袋を投げ捨てた。 「義仲が死んだ今、もはや誰を守ろうと戦おうか!よく見ておけ!これが日本一の剛勇の者の自害する姿だっ!」 悪い、義仲。生き残れなかったよ……。 と、今井は刃を自分の口にくわえ、馬上からさかさまに飛び降りた。 かくして、栗津の戦いは幕を閉じた。 日ごろ名を轟かせていた者たちには、あまりにもあっけない最期である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.11.16 20:25:31
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