前回の肩鎖関節脱臼からの流れでは鎖骨骨折の方が良い気もしますが、明日の夕方から柔道整復師の近畿ブロック学会に参加のため、奈良に行ってくるので土曜の晩は中学の頃の友人(私の数少ない優等生の友人、今は高校教師で陸上部顧問のようです)宅で結婚式以来に一杯やり、ブログ更新が途切れる可能性があることと、来週火曜の再テストに備えるため、今ひとつ自信のない肘関節脱臼を先におさらいしたいので今回は肘関節脱臼です。
・肩関節脱臼に次いで多発する(全脱臼の27%)
・青壮年に好発する(12歳以下では脱臼より顆上骨折の方が多い)
・前腕両骨後方脱臼が大部分を占める
分類前腕両骨脱臼
・後方脱臼:多発、大部分がこの型である
・前方脱臼:きわめてまれである
・側方脱臼:a.外側脱臼(まれ)
b.内側脱臼(まれ)
・開排脱臼:a.前後型(まれ)
b.側方型(まれ)
単独脱臼(まれ)
・尺骨脱臼:後方へ脱臼するがまれ
・橈骨脱臼:尺骨骨幹部骨折に伴って起ることがある(たとえばMontegia骨折)
a.前方脱臼(まれだが単独脱臼ではもっとも多い)
b.後方脱臼(まれ)
c.側方脱臼(まれ)
*肘内症
前腕両骨後方脱臼
発生機序
肘を伸ばしたまま手を衝いて倒れたり、後方から強い衝撃を受けて肘関節が過伸展を強制されると肘頭の上縁が肘頭窩の上方に突出し、ここが支点となり、上腕骨遠位端を前方に押し出す。したがって強い張力を受ける関節包の前面が断裂し、上腕骨遠位端が前方に転位して(前腕骨は結果的に上腕骨の後方に位置する)橈骨頭は上腕骨小頭の後面に接し、尺骨鈎状突起は上腕骨滑車の後壁に乗る。
患者の肢位
肘頭が後方に突出し三頭筋腱が索状にみえる。患部の動揺を防ぐため患肢前腕部を健側の手で固定し来院する
転位
上腕骨遠位端が前方に転位し、前腕骨は結果的に上腕骨の後方に位置する
臨床症状
・肘関節軽度屈曲位(30~40度)に弾発固定され、肘関節自動運動は不可能である
・骨傷を伴う場合、あるいは受傷後時間が経過している場合は腫脹が肘全体に波及し、肘頭の後方突出を見定めるのが困難な場合がある
鑑別診断
上腕骨顆上骨折との鑑別
(肘関節後方脱臼)
・青壮年に多い
・持続性脱臼痛
・腫脹は漸次出現
・弾発性固定
(上腕骨顆上骨折)
・幼少児に好発
・限局性圧痛著明
・腫脹は速やかに出現し著明
・異常可動性
整復
整復前の注意
・橈骨動脈の拍動と手背部、手掌部の皮膚知覚
・末梢部の運動神経の検査(正中・橈骨・尺骨神経)
注意する合併症
・上腕骨内側上顆、外顆、鉤状突起、橈骨頭骨折
・骨化性筋炎
・正中・橈骨・尺骨神経損傷
・内側側副靭帯
整復法
座位または背臥位の患者の上腕部を助手に固定
術者は一方の手で手関節部を、他方の手で肘関節部(患部)を把握し、脱臼肢位の角度のまま徐々に末梢牽引する。
(回内を回外にして牽引、回旋転位を取る)
(手掌で押し、側方転位を取る)
一度過伸展(肘頭を押し上げる)させ、肘頭窩はまっている鉤状突起をはずす(牽引は持続)
鉤状突起を外し、牽引を持続しながら肘関節を屈曲させ、このさい肘関節部に当てた手指の一部(親指)で上腕遠位端部を前方から後方へ、残りの手指で肘頭部を後方から前方へ圧迫し整復する
整復確認
肘関節の軽い屈伸、前腕の回内回外運動
固定
5裂包帯 クラーメル副子 三角巾
固定肢位
橈骨動脈の血流を阻害しないように肘関節をほぼ直角位に固定する
後療法
注意事項
・可能な限り早期より肘関節自動運動を開始する
・無理な他動運動は骨化性筋炎を惹起するため禁忌である
・他動的に全指を完全伸展させたさいの痛みや、水泡を伴う腫脹、知覚異常、運動麻痺、皮膚色調変化などがみられる場合は、コンパートメント症候群(筋区画症候群)を疑う、早急に専門医に委ねる