酸素カプセル 2 エコノミー症候群の実態
前回カプセル内の気圧を上げることによって、酸素を炭酸飲料のように血液中に溶け込ませる溶存酸素のことをお話しましたが、酸素をカプセルに注入していないのに、そのまま空気を圧力をかけると、一緒に空気中の二酸化炭素も血液中に溶け込まれるんでは?と思った方もいると思いますので、少々補足を・・・大気中の酸素濃度は約21%、そして最近温暖化で問題になっている二酸化炭素は0.03%。という理由でカプセル内の空気を高気圧にしても血液は炭酸水のようにはなりません(笑)ちなみに、大気中、もしくはカプセル内の酸素濃度が60%を超えると酸素中毒や未熟児網膜症が発生するといわれています。だから、むやみやたらに酸素を添加するのはよくないようです。また、一部の酸素カプセルには酸素を添加し、さらにカプセルの気圧を高めているのもあるのですが、それは、多ければよい、濃ければ効きそうといった、単純な発想で、そうしている酸素カプセルメーカーもあるようなので、ご注意を・・・もちろん病院で医療機器として行われているものはこの限りではありませんし、その方が救急時には効果的です。そんなことで、酸素カプセルの普及、研究が進んでいるアメリカでは酸素を注入するカプセルには危険性もあり、病院で医師しか取扱えないそうです。という感じでかなり前置きが長くなってしまいましたが、本日のタイトル「エコノミー症候群の実態」に入っていきましょう。エコノミー症候群というと、海外旅行などで長時間のフライトで、窮屈なエコノミークラスのシートに座りっぱなしになることで、足の静脈に血栓ができて、その血栓が肺へ流れ、肺拘束など起こすことで知られていますが、実はエコノミー症候群はエコノミークラスではなく、ファーストクラスでも起こるのです。こんなことを書いてしまうと、航空会社から命を狙われそうですが(大袈裟か・・)実際、Jリーガーの高原選手と直接話した方に聞いたのですが、遠征で座るシートは最低ビジネスクラス、またはファーストクラスだそうです。エコノミークラスのような窮屈な席の方が、なりやすいのは確かでしょうが、あまり知られていない原因もしくは要因の一つに気圧というものが上げられます。皆さんご存知の通り、飛行機は空高く飛びますが(当たり前すぎますが)その時の気圧はどうなっていると思いますか?だいたい800~850hPa(ヘクトパスカル)地上が1気圧で1013hPa。だから、飛行機の中は約0.85気圧で低酸素カプセル状態ということです。ちょっと資料集めにネットで調べてみると予想以上に面白いのがありました。exciteニュースより「法令の定めにより、機内の圧力はおよそ750hPa以上にせねばなりません。旅客機は天候次第では13,000メートル以上の高度を飛びますが、外の気圧は160hPaしかありません。地上の六分の一です。機内の圧力の方がずっと高いので、機体の内側には大きな力がかかっています。例えば、縦40cm横20cmの窓一枚に、約500kgの力がかかっています」窓一枚に500kgとは! なんだか窓から外をのぞくのが怖くなりそう。もし、機内の圧力を地上と同じにまで高めると、窓一枚にかかる力は約700kgになってしまう。機体をもっと丈夫にしなきゃならないので、飛行機が重くなる。すると燃料はたくさん食うわ、航空運賃は上がるわで、いいことがないらしい。「お客様に気圧の変化に少しだけご協力いただいて、安い航空運賃を維持しているのです」通常は2,000mクラスの山に登っているのと、同じくらいの気圧になっているそうだ。ということで、お金の為に健康を犠牲にしていたことが分かったんですが、この引用文の最後に「通常は2,000mクラスの山に登っているのと、同じくらいの気圧になっているそうだ」と書かれていましたが、最近では三浦雄一郎さんがエベレストの登頂で話題になりましたが、そんな登山家では昔から高山病対策で常に使われていたの高圧酸素カプセルなんです。なぜかエコノミー症候群から高山病の話になってしまいましたが・・・エコノミー症候群を思い出してみましょう。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より肢や上腕その他の静脈(大腿静脈など)に血栓(血のかたまり)が生ずる疾患。原因としては、脱水、感染、旅行・長期臥床・手術などによる血流鬱滞、抗リン脂質抗体症候群などがある。この血栓が血流に乗って肺へ流れ、肺動脈が詰まると、肺塞栓症となる。肺動脈が詰まるとその先の肺胞には血液が流れず、ガス交換ができなくなる。その結果、換気血流不均衡が生じ、動脈血中の酸素分圧が急激に低下、呼吸困難をきたす。また肺の血管抵抗が上昇して全身の血液循環に支障をきたす。軽度であれば胸やけや発熱程度で治まるが、最悪の場合は死亡する。ややこしいですが、読むと分かる通り、なんとなく肺やらガス交換や酸素分圧やら、出てきますよね。実はエコノミー症候群、正式には静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)は、フライトによる逆高圧酸素カプセル状態(低酸素状態)が続くことが、その発症にも関わっているのです。そういえば、因果関係はあまり言われてませんが、空港に酸素バーや酸素カプセル設置しているところ多いですよね(笑)では次回は「なぜ恐竜は大きくなったのか?」追伸:明日から陸上競技日本選手権が始まりますが、ちょっと気になる内容です。昨日家のファイテンO2に入った子がいるけど・・・大丈夫やろか?次の酸素系ドーピングはエリスロポイエチンから酸素カプセル?中日新聞ウェブサイトより【北京五輪】【総合】酸素カプセル使用禁止の意向 JOC、持ち込まぬよう徹底2008年6月25日 北京五輪で日本選手団長を務める日本オリンピック委員会(JOC)の福田富昭選手強化本部長は24日、けがの治療や疲労回復に効果があるとされる「高圧酸素カプセル」の現地北京への持ち込みを禁止する意向を示した。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が先に、ドーピング違反の恐れがあるために使用自粛を促していた。 世界反ドーピング機関(WADA)規定の2008年禁止表国際基準に「酸素摂取や酸素運搬、酸素供給を人為的に促進すること」が含まれるが「高圧酸素カプセル」による違反の事例は一度も報告されていない。福田団長は、使用した証拠が残らない点を「グレーゾーン」としたが「現地に持ち込まないように周知徹底していく」と述べた。 JOCのこの日の理事会で、日本選手団の上村春樹総監督が「柔道の選手はけがの治りが早いので使っていた。禁止なのかはっきりしてほしい」と質問。JADAの河野一郎理事長は「JADAとしてはJOCに禁止を求めたい。五輪期間中に国際オリンピック委員会(IOC)医事委員会が、違反と判断する場合もある」と説明し、JOCの竹田恒和会長は「IOCに問い合わせる必要がある」と話した。 【高圧酸素カプセル】 内部の気圧を1・3程度まで高め、酸素を体内に多く取り込めるカプセル。中で1時間ほど横になり、多くの酸素を体液や血液に溶け込ませる。けがや疲労からの回復を早めるとされる。サッカー元イングランド代表主将のベッカムや、早実高(当時)の斎藤佑樹投手らが使ったことで知られ、使用するスポーツ選手は増えている。価格は1台400万円前後。