こころの時代~宗教・人生
NHK教育テレビで「こころの時代~宗教・人生・・・響きあういのち つないで」を放送していました。精神科医の平山正実先生との対談でした。平山氏は地域の中に溶け込む医療を目指して,大学病院を辞めて診療所を開業したそうです。3階建てでうちワンフロアがデイケアのために利用されています。彼が精神科医として心の病をなんとかしたいと思ったきっかけは,友人の死があったそうです。友人はビルから飛び降り自殺をしたそうです。死ぬ数時間前に書いた手紙には,「どうか自分と同じような人をなくすためにがんばってほしい」との内容があったそうです。死んで数日たってから郵便で届いたそうです。対談の中で印象に残っているのは,「病者の祈り」です。作者不明だけれど訴えかける何かがあります。「病者の祈り」大事を成そうとして力を与えてほしいと神に求めたのに、慎み深く従順であるようにと弱さを授かった。より偉大なことができるようにと健康を求めたのに、より良き事ができるようにと病弱を与えられた。幸せになろうとして富を求めたのに、賢明であるようにと貧困を授かった。世の人々の賞賛を得ようとして権力を求めたのに、神の前にひざまずくようにと弱さを授かった。人生を享楽しようとあらゆるものを求めたのに、あらゆることを喜べるようにと生命を授かった。求めたものは一つとして与えられなかったが、願いはすべて聞き届けられた。神の意にそわぬものであるにもかかわらず、心の中を言い表せない祈りはすべてかなえられた。私はあらゆる人の中でもっとも豊かに祝福されたのだ。以下,原文I asked God(A CREED FOR THOSE WHO HAVE SUFFERED)I asked God for strength, that I might achieve I was made weak, that I might learn humbly to obey...I asked for health, that I might do greater things I was given infirmity, that I might do better things...I asked for riches, that I might be happy I was given poverty, that I might be wise...I asked for power, that I might have the praise of men I was given weakness, that I might feel the need of God...I asked for all things, that I might enjoy life I was given life, that I might enjoy all things...I got nothing that I asked for -- but everything I had hoped forAlmost despite myself, my unspoken prayers were answered. I am among all men, most richly blessed!(ニューヨークの物理療法リハビリテーション研究所の受付の壁に掲げられている作者不詳の詩)ここには,イエスの生涯との共通点を数多く見出すことができるといいます。イエスは生前,民衆からも時の権力者からも虐げられました。ユダなど弟子にも嫌われました。彼を味方するものは一人もいなかった。そして十字架にかけられて惨めな殺され方をします。その悲惨な状況は,現代の自ら命を断とうとしている人の境遇にも当てはまるのではないか。自分で自分が置かれた状況がどうにもできなくなっている。絶望的な状況を変えるには自ら死を選ばざるを得なくなっている。そこにあるのは,絶望です。どうすることもできない絶望感と不安に襲われるといいます。すなわち,まわりから認められていない,自分を評価してくれるものはいない,自分の存在価値がわからなくなっているそうです。リストカットによる傷口から流れる血を見て初めて自分が生きていることを実感できることなどはそのことを象徴しています。安易に宗教にはまってしまうことの危険はあると思いますが,神様の存在を信じられればもう少し自分の存在価値を認めてあげられるかもしれません。いつも神様が見ていてくださる。どんな行いも許される。それは罪であっても,小さな過ちであっても一切咎められることはありません。その代わり,どんなに大きな成功であっても一切褒められることもありません。物言わぬ神にただ見守られている。そうした安心感が心のざわめきを少しは和らげてくれるのではないでしょうか。