己のルーツに誇りを持て
NHK「こころの遺伝子」で辻口博啓がゲストでした。出身地は石川県七尾市。彼が高校三年生のときに担任となった四柳嘉章先生からの言葉が、ずっと心に残り続けていました。「己のルーツに誇りを持て」人生でつまづいたときにヒントをもらおうと辻口さんは四柳先生のもとを訪れます。四柳先生は輪島漆器のルーツについて研究しています。それまで輪島漆器は江戸時代が発祥とされていましたが、9000年も前にさかのぼることを突き止めたそうです。辻口さんは努力の末、フランスの洋菓子コンクールで銀メダルを取りましたが、スポンサーがあらわれなかったといいます。逆にフランスの技術の高さに感嘆します。しかし、四柳先生から、自分が生まれ育った場所のことをどれだけ知っているか?と問われて、もっと生まれた場所に誇りを持てと諭されます。そこで、飴細工のコンクールで、日本文化をミックスした洋菓子をつくり、見事優勝したとのことです。土台には漆塗りのように何層かの生地を重ねていますが、外からは見えにくくなっています。てっぺんには大きな羽を広げた鶴、赤と白を基調としていて、異色の作品だったそうです。スポンサーも現れました。大学の講義では、最後に「グローバルに考え、ローカルに行動できる人に(Think globally, act locally)」とのメッセージを伝えています。口で言うのはたやすいですが、実行するのはなかなか大変です。己のルーツ=ローカルに置き換えてもいいのではないかと思いました。情報や物の流れは国を超えて展開されています。グローバルな視点がなければ、物事は把握できなくなっています。一方で、多様な文化が均質化していくことに対する危惧もあります。日本は海外、特に欧米に対する憧れのような感情が根底にあるような気がします。それは日本が培ってきた独特の感性に対する自信のなさの裏返しではないか。自分の夢をかなえるためには、自分に誇りを持たなければなりません。つまりそれは自分の生まれた場所や環境に誇りをもちつつ、守り育てるということではないでしょうか。