希望格差社会
【送料無料】希望格差社会 [ 山田昌弘 ]価格:1,995円(税込、送料込)職業・家庭・教育、そのすべてが不安定化しているリスク社会日本。「勝ち組」と「負け組」の格差が、いやおうなく拡大するなかで、「努力は報われない」と感じた人々から「希望」が消滅していく。将来に希望がもてる人と、将来に絶望している人の分裂、これが「希望格差社会」である。本書では所得の量的格差というよりも,将来の見通しのなさという質的格差(希望格差)について格差が生じるメカニズムをリスクと二極化から論じています。リスクは普遍化した結果,リスクを意志でもって避けることができなくなっている。しかし,普遍化したリスクは個人の対応能力でもってその発生確率を低くすることができる。つまり,二極化の勝ち組は,稼いだお金やその知的能力で,リスクに遭遇することを避けることができる。一方,負け組に分類される人は,リスクを事前にヘッジするコストが払えないのである。経済の高度成長期における生活の安定の秘密は,ただ単に,マクロ的に見た経済成長率が高かったことに求められるのではない。「みんな一緒に豊かな生活を築くことができた」という点が重要なのである。たとえ,平均値としてみた経済成長率が高くても,貧富の差が広がっていると感じられれば,人々の不満は高まるであろう。いま,日本で生じつつある社会変化は,能力のあるものの「やる気」を引き出すかもしれないが,能力がそこそこのものの「やる気」をそぐという側面がある。苅谷氏が,教育状況の分析から,やる気の断絶(インセンティブ・ディバイド)と呼んだのも,この状況を表している。二極化とは,単に生活状況の格差拡大なのではなく,努力が報われるかどうかという「希望の二極化」なのである。これらに対する方策として,筆者は「個人的対処への公共的支援」を挙げている。能力をつけたくても資力のないものには,様々な形での能力開発の機会を,そして,努力したらそれだけ報われることが実感できる仕組みを作ることである。職業訓練などをした後は必ずそれらの努力が無駄にならずに定職につながるようなシステムの構築を訴えている。雇用のミスマッチに対しては,自分の能力に比べて過大な期待をクールダウンさせる職業カウンセリングを充実させる。重要だと思うのは,機会の平等を与えつつ,そのチャンスをうまく生かせずに失敗してしまった人にセーフティネットだけを与えても仕方がないということです。これまでしてきた努力が水泡に帰し,再チャレンジできない絶望感(やる気の断絶)を生むことが問題です。必要なのは,失敗しても再チャレンジしたいと,やる気が起こるような制度をつくることです。一番雇用の機会に恵まれていない一定年齢以上の未経験者がどれほどの雇用機会を見出せるか。安倍政権の公共政策にもその手腕が問われてきます。