黒瀬川構造帯
黒瀬川構造帯の特異性について話を聞くことができました。日本列島は付加体が大半です。海底だったプレート上の土砂の付加作用でできている。時期としては,2~1.5億年前のジュラ紀が大半です。しかし,黒瀬川構造帯は古い大陸由来の岩石が起源で,4.3億年前の地層であることが特定されています。1,000kmの長さで,幅は数km~数十kmと狭くなっています。高知県は広く分布しており,鴻ノ森,大高坂山,岡豊などにあります。蛇紋岩が多く出て,火山岩がそれに取り込まれるように産するそうです。蛇紋岩はマントルを構成していたカンラン岩が変質したものです。蛇紋岩の採石場としては円行寺温泉が有名で,5~6年前まで動いていたそうです。産出される蛇紋岩の7~8割が高知県産です。鉄鉱石を精錬するときに,不純物を分けるために粘度を下げるために使うそうです。粘度を下げれば,重くて溶けた純粋な鉄のみ抽出できます。しかし,大量に算出できる石灰石の方が安価なために,とってかわられたそうです。黒瀬川構造帯は赤道付近の大陸が,4.3億年前から数万年かけて移送してきたものです。4.3億年前はシルル紀からデボン紀にあたります。この時期の特定には,放射性同位体の半減期を用いて調べることができます。また,赤道という位置の特定には,古地磁気学の成果が用いられています。磁性を持った岩石を調べれば当時の移動がわかり,その結果,低緯度であったことがわかりました。そして,ジュラ紀はじめという比較的若い時代に高緯度へ移動したこともわかりました。こうして黒瀬川構造帯は長年の地質学の謎でしたが,徐々にその成因がわかってきました。蛇紋岩メランジュ帯といって,大陸のかけらが入った化石のようなものです。大陸を削って沈み込むタイプ=構造浸食によってできました。実はプレート浸食の大半がこの構造浸食だそうです。そして,蛇紋岩は浮力があるために,大陸のかけらを持ち上げて,取り込まれるのだそうです。地質学の知見をフル活用して,プレートテクトニクスのダイナミックな動きを読み解くことの醍醐味を感じることができました。