今日で終わりだとしたら
斎藤茂太(2003):「なぜかやる気が出ない人へ」成美文庫.すべては変化し,新しくなると考える人生が辛いと感じている人も,人生は楽しいと感じている人も,いつかはその終わりを迎えます。そんなことは誰でも言われなくても分かっているのですが,日々の忙しさにかまけて,「終わり」についてはあまり考えていないものです。日々の仕事や人間関係がマンネリ化していると感じているのは,その証拠です。もし,仕事の仲間や家族,友人たちと,もう二度と会えないとしたら,マンネリ化などするでしょうか。その一瞬を大切にして,思い残すことがないように,きちんと仕事をまとめたり,あるいは遊びにつきあうはずです。その日が最後,ということは考えてみると結構あるものです。たとえば,10年来会っていなかった友人に久々に会ったとしたら,その友人とはもうこの世では会うことがないかもしれません。その日が人生で最後の出会いです。職場を去る人がいます。定年退職をしたり,病気などの個人的都合でやめたりと理由はいろいろでしょうが,同じ職場の仲間として,ともに同じ職場の空気を吸うのはその日が最後です。それまで,お互いにいろいろ気に障ることもあったかもしれませんが,その時を最後に,もう二度と一緒に働くことはないでしょう。今後,一生お互いに会うことがないかもしれません。これは,「一期一会」です。別れを惜しむと同時に,お互いがどんな存在だったのか確かめる瞬間でもあります。自分の生命が,今日で終わるということだってあり得ます。武士道の「葉隠(はがくれ)」のように,毎日遺書を書くというつもりで,一日を過ごしたら,人生に対する考え方はかなり違うものになるでしょう。地球にだっていつか最後が訪れます。なんにでも最後はいつでもやってくるのです。それが,自分が納得し,満足できる時間になるように,日々を生きるのが幸福というものでしょう。---------------------------いつでも会える近しい人間には,明日以降でも・・・と先延ばしにしてしまうことが多いかもしれない。縁遠くなってしまった友人や知人とはなんとなく連絡をとるのが億劫になる。仕事ややるべきことにしたって今やらずに現実逃避に走ることもあります。それは,頭の中で時間はまだあると考えているからではないか。実はいつやろうかなどと考えているときには,すでにやるべきタイミングを逃してしまっていることが多いものです。人生の終わりは多少の時間の差があるにせよ誰にも平等に訪れます。それまでの一瞬一瞬を一生懸命に全力で過ごして充実したものにするか,なんとなく辛いことから逃げ続けて時が過ぎるのを待つかは自分次第。マンネリを感じたら残り時間を考えてやるべきことを考えよう。