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おじいちゃんの桜 *素敵な画像はクロはっちさんから頂いたものです。 「お花見に行きたいね。」 建物と曇り空しか見えない病院の窓に目をやり、私は祖父に言いました。 昨年がんで胃を全摘手術した祖父が、胸の痛みを訴えて今週から再入院することになったので、 両親とお見舞いにきていたのです。 今週に入って3回目のお見舞いでした。 「水上村のダムのほとりの桜は見事。綺麗か。」 「そうなんだ・・・見てみたいな。 あ!熊本城の桜も綺麗だよ。石垣と合ってて。」 「そうね、熊本城の桜も綺麗か。風格の違う。」 おじいちゃんの眼がキラキラしました。 それからおじいちゃんは背中をさすってくれと言い、しばらくさすって あげると安心したように眠ってしまいました。 1回目にお見舞いに来たとき祖母に聞いた話では、 祖父の肺はすでに胃から転移したがんに侵されており、 レントゲンを撮ると右肺が真っ白に写るくらいだそうです。 もってあと半年。 祖母はそう先生に告げられていました。 でも祖父はまだ、その事実を知りません。 しばらくして、祖父が目を覚ましました。 「また近いうちに来るね。」 「またすぐ良くなるんだけん、無理して来んでもよかよ。」 笑顔で言いました。 隣に座っている祖母も笑顔なのを見て、涙が出そうになりました。 「桜、はやく咲くといいね。」 心からそう思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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