冒険を許さない文化
冒険を許さない文化 三島由紀夫は、皆が寝静まった真夜中に小説を書いた。 深夜から書き始めるので眠くなることもあったらしい。そこで彼は書斎に長椅子を置き、眠くなったらそこで横になり、5分でも10分でも休んで再び小説を書いたという。小説を書くのに、転寝(うたたね)をしていては自分として許せなかったというのがその理由らしい。 良いねぇ、この話し。三島はやはり異端だったのである。人が寝静まって一人、誰にも邪魔されないで書く。 それに対して晩年の太宰は、サラリーマンよろしく昼過ぎに書斎に入り、夕方には切り上げて晩酌を楽しんだという。 何が云いたいのか。日本は異端を許さない社会なのである。 大英帝国が凄いと思うのは、冒険を許す文化の国ということだからである。 冒険貸借(辞書で調べてくれ)などはその典型である。ロンドンのロイズというコーヒー店で海上保険が発祥したというのも、どうしたらリスクがコントロールできるかと考えた結果の知恵からである。 それに較べて、日本の文化は均質である。冒険をするような輩は村社会では生きていけないのである。かつてはルソンやシャムに出かけていた日本人であったが、江戸時代に鎖国令が敷かれ、日本は均質化したのである。 幕藩体制の存続のためには、秩序の維持が何よりも大切であったのだ。異端や冒険は悪なのである。だから、均質がキーワードである。均質化によって、江戸時代は300年も続いたのである。冒険したのは、講談に出て来る紀伊国屋文左衛門位のものであろう。 総選挙が始まった。異端や冒険を許さない社会のなれの果てが今の日本である。 一方的にイギリスが良いと云うつもりはないが、彼の国のように冒険するのが文化であるということは評価してしかるべきである。 NO PAIN, NO GAIN.と云う言葉を思い出す。**************************************************謎の不良中年 柚木惇 Presents**************************************************