さすらいの天才不良文学中年

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  松内則三と和田信賢という名アナウンサーがいた

  松内則三と和田信賢という名アナウンサーがいた「落語知ったかぶり」が続いているので、今回は寄り道をしたい（写真は、神宮球場）。　第四次落語研究会の補足ということで、笑角亭朝生師匠より同研究会の顧問であった松内則三のことをご教示いただいた。　松内則三（明治２３年～昭和４７年）は、知る人ぞ知るNHKのスポーツ中継の草分けアナウンサーである。この人のことを知らないスポーツファンはもぐりだと云われる。　だから、今回は脱線して松内則三についてカキコする。　松内則三は慶大経済出身で、昭和２５年にNHKへ入局した。大相撲、東京六大学野球、プロ野球、競馬などの実況中継のスタイルを確立したと云われる。　野球中継においては、「ピッチャー振りかぶりました」「打ちも打ったり取りも取ったり」と表現するアナウンス方法を創っている。何もないところからこういうアナウンスを編み出すところがスゴイ。　松内則三のアナウンスは留まるところを知らない。昭和４年の早慶戦中継終了時に「夕闇迫る神宮球場、ねぐらへ急ぐカラスが一羽、二羽、三羽……」と球場の風景を描写するのである。　この松内の名アナウンスが評判となり、松内は毎回、神宮でのゲームセット時にはこのアナウンスをしていたという。　そのせいか、彼の実況録音盤「早慶野球争覇戦」（当時はSPレコード）は、１５万枚の売り上げと大人気になったほどである。　興味深い人物なので、昭和３年の春場所から本邦放送史上初めて始まった大相撲の実況中継についてもカキコする。　松内は、大相撲の「左四つ」「右四つ」の区別もつかないほど相撲音痴であったが、國民新聞記者の石谷勝を隣に座らせ、石谷が書いた決まり手の紙を松内が読むという実況方法をとった。　彼の実況中継を聞いて国技館はファンが行列をなし、千秋楽には満員御礼となった。相撲協会はNHKと松内に特別感謝状を贈ったというエピソードまである。　松内の大相撲中継スタイルは、実況の合間に力士のしこ名にちなむ川柳や狂歌などをはさんだ。これは取り組みの際の前後を埋めるために、桟敷席で観戦していた久保田万太郎（ここでも登場！）や久米正雄が即興で書いて松内に渡し、読み上げたという。　また、昭和１１年に本邦で初めてのプロ野球中継となった「巨人軍対名古屋軍戦」では、後輩の和田信賢アナウンサー（わだ のぶかた、明治４５年～昭和２７年）とかけ合うスタイルで実況を務めた。　ついでだから、この和田についても触れる（写真は、和田信賢）。　彼が一躍有名になった場面は、昭和１４年の大相撲１月場所の実況中継である。１月１５日に７０連勝を目指していた双葉山が、結びの一番で安藝ノ海に敗れ、連勝が６９で止まったときの実況中継をしていたのが和田である。　取組前には「不世出の名力士双葉、今日まで６９連勝。果たして７０連勝なるか？　７０は古希、古来稀なり！」とアナウンスして始まった。　当然、この日に連勝記録が止まるなどとは誰も予想しておらず、和田は双葉山が敗れた瞬間に控えにいた先輩の山本照アナウンサーに対し「双葉山は確かに負けましたね!?」と慌てて確認を取ったほどである。　続いて、「双葉敗る！双葉敗る！双葉敗る！！時、昭和１４年１月１５日！旭日昇天、まさに６９連勝。７０勝を目指して躍進する双葉山、出羽一門の新鋭、安芸ノ海に屈す！双葉７０勝ならず！！」と絶叫したのである。　和田は「不世出の（アナウンスの）天才」と称され、その華麗で情緒に溢れ、語彙の豊富な中継は、磨き上げられた芸にも例えられた。　和田は、自分の中継を「瞬間芸術」と呼んでいた。さもありなむである。和田のことを知ると面白い話しばかりであるが、脱線しすぎるので稿を改めたい。　それにしてもラジオ創世記のNHKアナウンサーには人物が多くいたものよのぅ（次回は落語に戻り、久保田万太郎の痛快話し）。

  August 4, 2021

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  落語知ったかぶり（後篇その２）

  落語知ったかぶり（後篇その２）　前回、ホール落語のことをカキコしたら朝生師匠から連絡があり、「落語研究会」や「東横落語会」などの貴重な小冊子を拝見させていただくことが出来た。　写真は、「（第四次）落語研究会」の小冊子である。これはスゴイ。恐らく落語研究者以外は収蔵されていないのではないか。　ここで「落語研究会」について触れておこう。「落語研究会」は落語の興行の一形態であるが、商業目的というよりも、落語のあり方、理念を追求する会である（研究会への出演には高いハードルがあり、落語家にとっては出演することがステータスとなる）。　その歴史は古く、すでに明治３８年に発足している。当時の落語は初代三遊亭圓遊（鼻の圓遊、ステテコの圓遊）に代表されるような珍芸が一世を風靡していた。　しかし、落語は見世物ではないとし、良識派の落語家が「落語は普遍的芸術である」として初代三遊亭圓左などが立ち上げたものである（創始者は、講談、落語を専門とした速記者の今村次郎）。　面白いのは、当時の落語家は袴の着用がタブーであったことである。講談は一流芸、落語は袴を付けられない二流芸という考え方が定着していたのである。　したがって、参加者は落語家の手本を見せるべく全員に袴の着用を義務付けた。これが、落語家が袴を常用するきっかけとなったのである（余談だが、初代林家三平は講座では生涯袴の着用を貫いていた）。　畢竟、落語研究会は既存の寄席と競合関係になり、寄席側はこの会と敵対的となる。しかし、この会が成功すると見るや態度を変え、のちには開催のために会場を貸し出すようにもなる。　さて、落語研究会が活発に活動するようになったのは、やはり戦後からである。昭和２１年２月に久保田万太郎（作家、劇作家、俳人。浅草を舞台とした江戸情緒豊かな情話で活躍。文化勲章受章者）が会長となって第三次落語研究会を旗揚げした。このときにあの「安藤鶴夫」（後述）が参与として登場する。　理由は不明だが、この第三次落語研究会は半年後に解散しており、実質的に活動したのは第四次落語研究会からである（昭和２３年から昭和３３年までに１１５回開催された）。林家彦六が発起人となり、主事を今村次郎の息子である今村信雄が務めた。　第四次落語研究会の最終興行は昭和３３年４月１９日であり、そのときの小冊子が下の写真である（朝生師匠収蔵）。　出演者は、小さん、可楽、正蔵、三木助、円歌、文楽、柳枝、志ん生、小勝、圓生に番外として全生（後の5代目三遊亭圓楽）という錚々たる顔ぶれである。　この小冊子の中で久保田万太郎が当時の（一部の）落語家を酷評しているのだが、これが痛快至極である。これについては次回に（この項続く）。

  August 2, 2021

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  落語知ったかぶり（後篇その１）

  落語知ったかぶり（後篇その１）　そして、落語を決定的に人気付けたのが「ホール落語」の出現である。　昭和２８年に久保田万太郎の提唱で始まった「三越落語会」（会場は三越劇場）と昭和３１年に始まった湯浅喜久治の「東横落語会」（会場は東横ホール）が双璧であった。　初めてホール落語という言葉を聞いた人のために最小限の解説をすると、寄席や演芸場のように演芸を上演する目的で造られた場所での落語ではなく、通常は演芸を上演しない劇場やホールで開催される落語会のことをいう（ホール落語の演目は落語だけで、寄席と決定的に違うのは奇術などの色物がない）。　寄席ではかけられない大きな演目が中心となり、一人あたりの上演時間も制限がない。したがって、このブログでカキコした「替り目」も途中でサゲることはなく、最後まで聞くことができる。　そういうことからホール落語が出来て、通は寄席よりもホール落語に通うようになったのである。　特筆すべきは、東横落語会をプロデュースした湯浅喜久治（残念だが、今では誰も彼のことを知らない）の功績である。　結論から云えば、彼の好みがホール落語を規定したのである。具体的には、東横落語会の出演陣を桂文楽、古今亭志ん生、三遊亭圓生、柳家小さん、桂三木助のみとし、この五人以外は二流の落語家としたのである。　その基準はあくまでも湯浅喜久治の基準であったが、当時の誰もがそれを認めたところがスゴイのである。　余談だが、このメンバーに春風亭柳枝や三笑亭可楽が入っていてもおかしくはない。　たまたま三木助が入っただけで、もしも柳枝が入っていれば、柳枝の晩年も変わっていたかも知れない。また、三木助にしてみれば選ばれたことによって絶頂期を迎えることになったのである。　だから、矢野誠一が昭和３７年に始めた「精選落語会」（会場はイイノホール）に三笑亭可楽が選ばれたときの本人の喜びようったらなかったのである。　さて、その湯浅喜久治である。　新聞コラム風に書けば、「湯浅喜久治（昭和４年～３４年。享年２９歳）新劇、映画を経て、古典落語に行き着き、雑誌「寄席風流」を創刊。安藤鶴夫の知遇を得、三越落語会に関わる。その後、若手落語会、東横落語会などをプロデュースし、四つの芸術祭奨励賞を受賞、自身もプロデューサーとして文部大臣賞を受賞」となろうか。　夭折した理由は自殺と云われているが、詳細は不明である。ほとんど本人のことについて記録されたものがないからである。「落語名作全集1」(吉川義夫・安藤鶴夫監修、普通社、昭和４５年)の月報に写真と東大落語会創立者・山本進による人物紹介が載っているようだが、内容は閲覧していないので不明である。　ネットで拾ったものでは、「悪筆で読み違いを恐れてか、美意識のためか。字の上手な友人をこまめに訪れてメモを読み上げ、自分の手帳にスケジュールを書き入れてもらっていた」や、「本は版元で購入し、ページがシワになるとアイロン掛けしていた。背広も靴も決まったブランドのものしか着なかったという一流好き」など興味津々の人物であるが、どうも全体像がつかめない。　これはもったいない。戦後の落語スタンダードを創ろうとした湯浅喜久治がこのまま忘れ去られてよいとは思えない。落語関係者よ、不義理ではないか（この項続く）。

  July 30, 2021

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  落語知ったかぶり（中篇）

  落語知ったかぶり（中篇）　落語の歴史は江戸時代から始まったから三百年と云われても、それを伝えるすべがなければ何も分からない（写真は、初代桂春団治）。　結局、おいらたちが今、落語を知るすべは、寄席（ホールでの落語を含む）、テレビ（ラジオ）、CD（DVD）、書籍（速記本）である。　実は、戦後の落語は昭和２６年に開始された民放によるところが大きい。　当時のNHKは春風亭柳橋、桂三木助を専属にし、ラジオ東京（現TBS）は桂文楽、古今亭志ん生、昔昔亭桃太郎、三遊亭圓生、柳家小さんを専属とした。　NHKは巻き返して、三遊亭金馬、三遊亭円歌、古今亭今輔を準専属にするのである。　出遅れたニッポン放送はラジオ東京から古今亭志ん生を引っこ抜き、文化放送は三笑亭可楽を迎えるなど、ラジオが落語の人気を一気に広めたのである。　ところが、当初はこのラジオでの放送が難航したのである。ラジオに落語家が登場すると寄席に客が来なくなる恐れがあるというので、席亭（寄席の主催者）などがラジオの出演を禁止していたのである。　これと似たような話しはレコード吹込みである。本邦のレコードは既に明治末期に吹き込みが行われていたが、レコードが出ると寄席に行かなくてもいいと思われた。　云われてみると、かのジャズの歴史も同様で黒人発祥の初期の音源が残っていないのは、レコードにすると曲を盗まれるので録音を拒否したという話しがあるくらいだ。　戦前の話しであるが、上方落語は吉本興行が仕切っていた。その吉本興行は「ラジオは敵だ」と決めつけて芸人が大阪放送局（NHK大阪の前身）へ出演することを禁止していたのである。　昭和５年、「桂春団治ラジオ出演事件」が起きる。　人気絶頂であった桂春団治（「後家殺し」の異名を持つ破天荒の落語家。写真上）がラジオに出るという噂が出たので、吉本が警戒していたのだが、変装した春団治が人目をかいくぐって京都の放送局に飛び込み、「祝い酒」をオンエアしたのである。　これに激怒した吉本が春団治を干しにかかったが、ラジオを聴いた客が春団治を聴きたくて劇場になだれ込み、ますます春団治の人気が沸騰したという。結局、吉本も考え方を変えて和解。落語家がラジオに自由に出演できるようになったという経緯がある。　要するに戦後の落語の普及は、ラジオが寄与したのである。今と違って、聴衆が落語家に直接触れるメディアは、ラジオ、レコード、映画しかなかった時代である。庶民はこぞってラジオを聴いたのである。　しかも、落語はラジオにあう。制作の手間もかからない。ラジオが安易に落語に飛びついたというのも頷ける。おいらも小学生のころからラジオで落語と漫才を聴いたのをよく覚えている（この項続く）。

  July 28, 2021

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  落語知ったかぶり（前篇）

  落語知ったかぶり（前篇）　今月初めに「死ぬまでに一度聴きたい落語」のことを書いた（写真は、「三代目三遊亭歌笑」）。　それは、おいらの落語道の師匠である笑角亭朝生師匠から拝借した圓遊の「替り目」を聴いて落語に再び目覚めたときから始まったのである。　何事も本物の芸はスゴイ。おいらは古希を迎え、残りの人生は十年と決めている。だから、この期間を無駄にしないため、落語のおさらいとして、志ん朝カセット全集で古典落語の大半を再び聴き直してみた。　そして、可楽全集を堪能し、返す刀で枝雀を聴き落語の奥の深さに脱帽したのである。そのとき、まだ、聴いていない至極の落語が無数にあるのではないかと急に不安にかられたのが発端である。　おいらはその近道として、死ぬまでに絶対聴いておきたい落語のベストテンを知りたいと思ったのである。　だが、ネットを検索しても落語のベストテンなどないと知るに至り、朝生師匠と、仕事仲間であった落語の鬼、落語屋さんのお二方にお伺いをたててみた。　すると、お二方からは落語のベストテン選定は難しいが、推薦する落語のベストテンならやってみようとのご回答をいただいたというのがこれまでの経緯である。　そこでおいらも物好きというか、それを契機としておいらなりに落語の全体像と戦後の歴史をなぞってみることにしたのである。　ネタ本は、日本コロンビア「落語名高座全集」（昭和５６年。全２６面）と「古今東西噺家紳士録」（正００年、続０５年、発売元丸善）である。　さて、戦後の落語は、今では誰も知らない「三代目三遊亭歌笑」（写真）に始まったと云われる。　この歌笑の落語は、とにかく面白かった。当時のNHKラジオでその名が知られると日本劇場や国際劇場等を満員にするほど人気が沸騰した伝説の落語家である。　元祖「爆笑王」、「笑いの水爆」とも呼ばれ、一世を風靡したのである（しかし、「笑いの水爆」とはスゴイ。その威力が伺える）。　あまりにも売れっ子だったのだが、昭和２５年、突然、銀座で米軍のジープに轢かれて急逝する（雑誌「夫婦生活」の大宅壮一との対談終了後、夕暮れの銀座松坂屋前の路上横断中での事故死。先天性弱視が災いしたといわれる）。享年３２歳。真打としてはわずか２年半の生涯であった。　ウイキペディアによれば、立川談志の少年期に影響を与えた一人ともされており、歌笑の急逝を知った談志は生まれて初めて他人のために涙を流したという。　それほどの人気者がいなくなり、戦後の落語は一時プツリと切れるのだが、そのことが結果として時代は古今亭志ん生や桂文楽に目が向くということになる（この項続く）。

  July 26, 2021

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  昨日から四連休なので本日のブログはお休み

  昨日から四連休なので本日のブログはお休み　昨日から四連休なので、本日のブログはお休みとします（ブログの再開は、２６日（月）からの予定です）。　世間では二日前から東京五輪の予選が開始しているらしいのですが、このご時世です。どうも気乗りがしません。　それに五輪関係者の不祥事と云いますか、失態続きと云いますか、前代未聞の連続で、これはもう「呪われている東京五輪」のような様相です。　何だかなぁ。

  July 23, 2021

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  コロナワクチン２回目接種

  コロナワクチン２回目接種　今週の日曜日（２１年７月１８日）にコロナワクチンの２回目接種を受けた。　今回も１回目同様、同じ場所、同じ時間帯である。　予約時間の２０分前に集団接種会場に到着し、前回同様、摂取券と身分証明書（免許証）、問診票の３点セットを渡し、スムーズに接種を受けることができた。　何事も２回目となると余裕である。　あっという間に終わった感じであるが、前回と違ったのは、ベテランに見える看護師が「今、お薬が入っていますよ」といいながら注射をしたことである。　わずか２秒ほどの注射時間であるが、こういう話しをされると新鮮である。　さて、２回目の問題点は副反応である。　メディアで散々、２回目は発熱などの副反応があると聞かされていたので、イヤだなと思っていたのである。　ところが、おいらの周りの人間と話しをしていると、こぞって「何もなかった」という話しばかりである。　え、え～。　考えてみると、おいらの周りの人間とはいずれも高齢者ばかりである（そりゃ、そうだ。現時点では高齢者以外、医療関係者などを除いてワクチンは打てない）。　高齢者には老人力がついているので、副反応が出ないかも知れないと思うようになった。　そして、おいらのケースである。　接種した左腕の上腕部分が少々痛む程度で発熱など全くなく、その日は普通であった。　ただし、翌日から接種部分が少し腫れて痛み始めた。明らかに１回目よりも痛い。腕が上がらないほどである。寝るときは接種部分を下にすると痛いので、右側を下にしなければならない。　だが、これも二晩寝るとほとんど感じなくなった。友人がこぞって「何もなかった」というのはこういうことかも知れない。　老人力が付くというのは、ありがたいものである。オシマイ。

  July 21, 2021

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  眼科のこと（おいらの左眼の真ん中が見えていない）

  眼科のこと（おいらの左眼の真ん中が見えていない）　５０代前半に左眼が「黄斑上膜」という病気になり、大学病院で眼球にメスを入れるという大手術をした。そのときに網膜剥離を併発していたことも分かった。　この「黄斑上膜」を簡単に云うと、網膜の上にセロハンのような膜が出来てそれが網膜と癒着し、眼に見える像が歪むというものである。　画像が歪めば直ぐに分かりそうなものだが、右眼が正常に見えるので脳が補正し、両眼で見ている限り、歪んで見えることはない。　だから、右眼を見えなくして左眼だけで見ると真っ直ぐな障子の桟がくねくねと曲がって見えるので腰を抜かすのである。「黄斑上膜」が進行すると失明の危険もあるので、そのセロハンに当たる部分を取り除く手術だったのである。　術後の経過は、進行が止まったということで良かったのだが、「くねくね」は元の直線には戻らなかった。　しかし、脳の補正によって日常生活には支障がない。　ところが、古希を迎え、老人力が付いて最近転ぶようになった。足元の障害物に気付かないのである。　大学病院の主治医に相談すると緑内障の恐れがあるという。視野狭窄の可能性である。　そこで、先週の月曜日、大学病院でオクトパス（静態視野検査）という検査を受けた。　いやはや、最近の検査はスゴイ。　右眼と左眼のそれぞれ画面上に「点」が現れたら手元のボタンを押すという単純な検査なのだが、最初は昔ながらの子供だましかと思って軽い気持ちで受けていた。　ところが、これがバカにできない。明るくて赤い色の大きい点が画面左上に現れたと思ったら、ほとんど見えないような小さな暗い点（色が付いていない）が画面右下に現れたり、時間が経ってもフェイントで点が現れなかったりで、途中から本気になって検査を受けるはめになった（集中しないといけない）。　その結果である。　緑内障ではなかったので、ご同慶の至りである。しかし、左眼の中央右側部分に視野欠損の個所があることが判明した。　主治医は「黄斑上膜の手術時のセロハンを取ったときの傷だと思われます。進行しないので心配する必要はありません」とのこと。　いやぁ、びっくりした。左眼の一部が盲点のようになっており、おいらの左眼には盲点が２か所あるのだ。ただ、上述のとおり右眼で補正しているので日常生活に支障はないが、気を付けるに越したことはない。　歳を取ると予測もしないことが出てくるものである。

  July 19, 2021

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  黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線（後篇）

  黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線（後篇）５．ビゴーに光を当てた清水勲　ビゴーの名前は、その後忘れ去られていたが、そのビゴーに光を当てたのが漫画・風刺画研究の第一人者、清水勲氏（昭和１４年～令和３年）である。　三省堂編集者などを経た氏は昭和４５年、それまで１５年にわたり収集したビゴーの作品や研究成果を５００部限定の「ジョルジュ・ビゴー画集」として自費出版する。　詳細な作品の解説と貴重な年譜を付することで、ビゴーの研究と再評価に大きく貢献したのである。　また、氏は平成６年に渡仏し、ビゴーの子孫が屋根裏部屋に保管していたビゴーの日本に関する風景画や漫画を大量に買い取り、宇都宮美術館や千葉の美術館に寄贈や引き取りをしてもらったのである（写真上。千葉市美術館は「稲毛海岸」を千葉県立美術館は「稲毛の女漁師と子ども」を所蔵する。）。　それによって、宇都宮美術館は世界最大級のビゴー作品コレクションを有することになった（今年ビゴー展を開催済）。　なお、清水勲氏は死去する前に自らの戒名を「釈美郷信士」と決めていたほどのビゴーファンであった。６．清水勲氏と鈴木理夫氏の共著　鈴木理夫氏は清水勲氏という盟友を得て、漫画家横井福次郎（１９１２年～４８年）についての研究成果を共著「戦後漫画のトップランナー　横井福次郎―手塚治虫もひれ伏した天才漫画家の軌跡」（２００７年、臨川書店）として上梓されている。　横井福次郎とは先駆的ＳＦ漫画「ふしぎな国のプッチャー」や「冒険ターザン」を戦後まもなく発表し、手塚治虫のお手本となった漫画家である。　天下の手塚治虫が師と仰いだのが横井であり、その横井漫画が鈴木理夫氏の漫画研究の原点である。それを見抜いた清水勲氏は、まさに鈴木理夫氏と刎頸の交わりであったのである。　以上、黒田清輝、ビゴー、清水勲氏、鈴木理夫氏とが一直線と考える所以である（この項終わり）。

  July 16, 2021

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  黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線（中篇）

  黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線（中篇）３．ジョルジュ・ビゴー　そのビゴー（パリ生まれのフランス人、１８６０年～１９２７年）は明治１５年に２１歳のときに横浜に来日、以後１７年間日本に滞在し、当時の日本の世相を伝える多くの絵を残した（写真は、ビゴー）。　来日前のビゴーはフランスで一定の知名度を得ていたが、日本への思いが強く、陸軍大学校で教官を務めていた在日フランス人の伝手を得て、お雇い外国人の絵画講師として来日。　日本の社会を知るため遊廓にも出入りし、日本の庶民の生活を描いた画集を出版する。　後にフランスの新聞「ル・モンド」などの日本を題材とした報道画家となり、明治２０年に横浜で風刺漫画雑誌を創刊、以降、日本の政治を題材とする風刺漫画を多数発表した（下の写真は、清水勲「ビゴーが見た日本人」講談社学術文庫。０１年９月）。　私生活では、明治２７年（ビゴー３４歳）士族の娘、佐野マスと結婚した。マスは美しい切れ長の瞳を持つ美人で、ビゴーより１７歳年下であった。後に離日に伴い、離婚している。ビゴー、３９歳であった（フランス国籍の長男は、自らが引き取ってフランスに連れ帰った。なお、帰国後、フランス人女性M・デプレと再婚し、二人の女子をもうけている）。４．ビゴーと黒田清輝との接点　この頃、ビゴーはフランスから帰国して間もない黒田清輝と知り合う。　ビゴーは画壇の重鎮である黒田の知遇を得ようとしたが、印象派を学んで帰国した黒田に対し、古い写実主義一辺倒のビゴーとの間には美術に対する考えに大きな違いがあった。　このため、二人が友好関係になることはなかったが、黒田清輝の裸体画論争事件はこのころの話しであり、既に黒田とビゴーとには接点があったことが分かる（この項続く）。

  July 14, 2021

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  黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線（前篇）

  黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線（前篇）　本日より三日間は、関ネットワークス「情報の缶詰２０２１年７月号」に掲載の「黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線」をお送りします。「黒田清輝、ビゴー、清水勲氏と鈴木理夫氏は一直線」　ジョルジュ・ビゴーと聞いて黒田清輝の絵を思い出す人がいよう。　かく云うおいらもその一人なのだが、そのビゴーが漫画・風刺画研究家の清水勲氏や誌友の鈴木理夫氏と繋がりがあるとは誰も思わない。１．発端　今年３月２１日のBS朝日の特集番組「あなたの街の名画を旅する」でビゴーの絵とともに清水勲氏の解説が放映された。　また、５月２日の読売新聞の日曜版（写真上）でもビゴーの絵が特集され、清水勲氏についても大きく取り上げられることになった。　清水勲氏は鈴木理夫氏の漫画研究の盟友でもあり、本邦におけるビゴー研究の第一人者であったが、その氏が今年３月鬼籍に入られた（享年８１歳）。　今回は、そこでこの４人について触れる。２．黒田清輝の裸体画論争事件　黒田清輝の代表作「朝妝（ちょうしょう）」（写真下。空襲によって焼失）は明治２８年、京都で開催された内国勧業博覧会に出展されて大事件となる。　この裸体画は海外でも認められ、日本でも明治美術会第６回展に出展されており、そのときは何の問題もなかった。ところが、東京朝日新聞はこの絵をワイセツとするのである。　朝日は「『或る筋の人』の弁として、美術展などに出品されるような美術品の条件として、『両股相接する体勢を顕わし●毛を描かず』というようなものが一般的」とし、そのほかのメディアも「ワイセツ」「風紀を乱す」などとして作品と黒田の両方を攻撃するのである（注、●には「陰」の文字が入る。ブログ掲載上、自動的に伏字になるため）。　やれやれ、表現の自由を守るはずのメディアが官憲と同じというのは、昔も今も変わらない。おいらは今でも朝日を信用していない。　ということで、バカバカしい近代日本の裸体画論争が始まり、フランス人画家のジョルジュ・ビゴーは日本では裸体画を芸術ではなく、あたかも見世物を観るものと揶揄したのである（写真上。この項続く）。

  July 12, 2021

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  日本は戦時中か「緊急事態宣言下でオリンピック開催」

  日本は戦時中か「緊急事態宣言下でオリンピック開催」　４回目の緊急事態宣言である。　確か、オリンピック開催は「コロナに打ち勝った証」であったはずである。　したがって、今回の開催はどういうことを意味しているのだろうか。支離滅裂の様相である。　菅首相は、二階幹事長に対し「今はワクチン一本で行きたい」と接種拡大に全力を尽くす考えを示したという。しかし、そのワクチンも今や希少である。　コロナ対策では、ワクチン接種以外に何をやったかよう分からん菅内閣だ。　だが、オリンピック開催については相変わらず熱心と見える。結局、政府がコロナでやっていることは、今に至っても国民と居酒屋への自粛の要請だけである。　しかも、オリンピックには現在も否定的な意見が多い国内世論にもかかわらず、開催を強行するようだ。　これって、戦前の日本とどう違うんだろうか。精神論だけが横行する時代というのは、どう考えてもアブナイ。

  July 9, 2021

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  なぜ男女のボタンは左右逆なのか

  なぜ男女のボタンは左右逆なのか　昔から不思議だったことを書く。　上着などの男女のボタンの位置は、左右が逆なのである。　このことを知ったのは小学校高学年だったような気がする。不思議だったので、確か、母に聞いたような気がするのだが、「そうなのよ」で、それ以上は何とも思わなかった。　多分、小学校のレベルではそういうものなんだろう。　もし、中学や高校で知っていたら、どうしてなんだろうと調べていたはずである。おいらはそういう性格なのである。　だが、小学校で知ったからか、そういうもんだろうとその後は調べることもせず、単なるファッション（の伝統）だろうと思っていた。　しかし、おいらが好きなフランス史を観ていたらひょんなことからその理由が判明したのである。　それは、１４世紀ごろの欧州において、ボタン付きの服は縫製に手間がかかり、貴族階級にしか身につけられない高価なものであったということである。　しかも、フランスの貴族の女性は自分で服など着ないのである。当たり前だがメイドに服を着せてもらうのである。だから、対面から留めやすいようにボタンを左側に付けていたというのである。　これに対し、男性は自分でボタンをはめるので、左右逆になるという理屈である（昔も今も右利きが主流である）。　これでおいらは目からうろこが落ちた。　調べてみると、男性の軍服由来説（懐に入れた武器を利き腕の右手で取り出しやすいように右にボタンを付けたという説）というのもあるが、後付けだろう。　ファッションは、やはり欧州、それもパリから生まれるのである。

  July 7, 2021

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  死ぬまでにもう一度聴きたい落語（前篇その２）

  死ぬまでにもう一度聴きたい落語（前篇その２）　その近道として、死ぬまでに絶対聴いておきたい落語のベストテンを知りたいと思ったのである（写真は、三代目桂三木助）。　ところが、ネットを検索しても落語のベストテンなどないと知るに至った。　なぜなら、落語の数は演者と演目を掛け合わせるほどあり、その演者も同じ演目を何回にも渡って演じている。実際、初期と晩年では芸風が変わることがある。　さらに新作を入れれば落語の数は無数にあるため、どうやらベストテンなど考えられないようだ。　確かに云われてみればそうである。　ネットで見つけたのは、「好きな落語家ベスト１０」などである。そうか、好きと云うことであれば人気投票でよい。　そこで、おいらの落語の師匠である笑角亭朝生師匠と、仕事仲間であった落語の鬼、落語屋さん（フリーページ「高座の愉しみ」上野広小路亭『しのばず寄席』に登場のM君のこと）のお二方にお伺いをたててみようと考えたのである。　そうすると、お二方からは落語のベストテン選定は難しいが、推薦する落語のベストテンならやってみようとのご回答をいただいたのである。　同時に、笑角亭朝生師匠からご提案をいただいた。　それは、「将棋の封じ手のように、おいらを含めた三人が同時にベストテンをオープンにしたらどうか」と云うものである。　おいらは嬉しくなってしまった。これならお互いに相手が何を推薦したかということに惑わされなくて済む。しかも、開けたときに「むむ、お主、出来るな」という遊び心がくすぐられる。　その封じ手開封の日は、７月１１日（日）と決まった。　おいらもこの無謀な企みに参戦させてもらえることになったので、今はおいらの「ゼッタイお薦め落語」を厳選しているところである。　この顛末は、「死ぬまでにもう一度聴きたい落語（後篇）」で今月後半に掲載予定である。落語を知らない方でも、逆に、通の方も唸る落語を紹介できればと今から愉しみにしている（この項「後半」に続く）。

  July 5, 2021

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  死ぬまでにもう一度聴きたい落語（前篇その１）

  死ぬまでにもう一度聴きたい落語（前篇その１）　６月１８日の拙ブログ「つき米屋と酢豆腐」で次のように書いた。「思うに、落語は一級の芸術品だよなぁ。　聴いているときは、間違いなく浮世を忘れるよ。忘れないとしたらそれは、ヘタな落語だからである。　ヘタな落語と二流の芸術は蹴とばしてしまうしかない。何事も一流でなければ愉しむ価値はない」　今でもこの考えに異論はない。だが、おいらはハタと思ったのである。今まで数知れず落語を聴いてきたが、これまでに本当に上手い落語を聴き逃してはいないか、である。　例えば、八代目可楽（1898年-1964年。写真上）である。おいらが中学生のときに他界しているのでほとんど記憶にない。だが、ジャズ通に云わせれば可楽を知らなければ落語ファンではないということになる。　小島正雄（名門ジャズバンドであるブルーコーツのバンドマスター）や北村英治（クラリネット奏者、解説不要）の可楽好きは有名である。　フランク永井との交流も知られており、可楽十八番の「らくだ」に出てくる屑屋のセリフに「低音の魅力ってやつだね」というクスグリが入るほどである。　幸いおいらは笑角亭朝生師匠から可楽の「反魂香」や「巌流島」などのテープを拝借していた関係もあり、また、拙ブログで披露しているとおり北村英治の大ファンでもあるので、物好きにも可楽CD全集をゲットしてしまった。　実は、今回、圓遊の「替り目」で落語に再び目覚めたのである。　だから、落語のおさらいとして、可楽を聴く前に志ん朝カセット全集をゲットし、志ん朝のカセットで古典落語の大半を再び聴き直したのである。　その感想。いやはや、志ん朝はスゴイ。親父の志ん生も天下一品だが、志ん朝の落語は（江戸）落語の王道である。落とし噺であれ人情噺であれ右に出る者がないと云っても過言ではない。　そして今、可楽浸りである。　しかし、である。　おいらは高校卒業まで広島にいたので、上方落語の鬼才、枝雀を忘れてはいけない。　今回、改めて枝雀の「親子酒」をCDで聴いたのだが、これは別格である。これほどまでに全身全霊を落語に打ち込む落語家がほかにいるだろうか。　そう思い始めたら、まだ、聴いていない至極の落語が無数にあるのではないかと急に不安にかられたのである（この項続く）。

  July 2, 2021

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  オンライン飲み会

  オンライン飲み会　３か月ぶりのオンライン飲み会をこの日曜日に実施した。今回のメンバーは、おいらを入れて７名である。　外で全く飲まなくなったので、「オンラインであっても他人と飲める」と云うのが嬉しく感じるようになった。　このオンライン飲み会、おいらのへっぽこ大学の同期同窓会である。　本来は盆と暮れの１年に２回の定点観測のような会合であったが、密閉、密集、密接の権化のような飲み屋で実施していたので、久しくオンライン飲み会に模様替えとしていた。　しかし、バーチャルな飲み会である。最初はぎこちなかったのだが、ここまでコロナが続くとさすがに飲み会に飢えてしまう。さりとて、外飲みなどやはり怖くてできる分けがない。　となると、「人間、何でもあり」でオンライン飲み会でも充分イケるようになってしまうのである。　今回もそれで盛り上がってしまい、久しぶりにおいらもメートルが上がってしまった。おいおい、メートルが上がるなんて今や死語である。　ちなみに今回の飲み会の開始時刻は夕方６時前であり、終了は８時半であった。使うソフトはＺＯＯＭである。　それはさておき、どういう内容で盛り上がるかと云えば、これが他愛ない話しばかりである。　近況報告も３ヶ月ぶりのため、「コロナで外出しておらず前回と変化なし」ばかりとなる。　話す内容も皆が古希を超えているので、コロナワクチンの接種状況、健康談義（最近、歯がもろくなって欠ける。転倒する。漢字を忘れる）、孫の世話、ボケ防止のドリルなどばかりである。　だが、これが盛り上がる。　サラリーマン時代と同じように飲んで喰ってオダを上げてストレスを解消するのである。　それが昔と違うのは、現役ではないので「旧交を温める」という点である。　利害関係は何もないし、そういう脂ぎった人物はもともとこのメンバーにはいない。だが、話している内容のレベルは低くない。８名前後の人間が居ればそれぞれの分野にプロもどきの知恵があり、大体のことは解決できる（と思っている）。　やはり、人生で大切なのは信頼できる友と、そういう友と語り合う場である。　オンライン飲み会は、ウマの合うメンバーであればそのうち定番になるような気もする。なぜなら、ワクチン接種後であってもデルタ株やら何やらで日常生活が昔と同じに元通りになることはないような気がするからである。

  June 30, 2021

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  週刊現代、意外に健闘

  週刊現代、意外に健闘　産経新聞の「週刊誌ウオッチング（６月２６日付）」が昨年（２０２０年）下半期の週刊誌実売部数を掲載していた。　面白いので、そのまま紹介する。それによれば、１位　週刊文春　　２７万２位　週刊現代　　２０万３位　週刊新潮　　１６万４位　週刊ポスト　１６万５位　週刊大衆　　　９万６位　アサヒ芸能　　６万７位　週刊朝日　　　６万８位　アエラ　　　　４万９位　サンデー毎日　３万10位　ニューズウイーク　２万　とうことらしい。　さすがに王者週刊文春が第１位である。しかし、週刊誌の実売部数はひと昔前では１００万部が普通であったはずだ。それが今や、往年の３分の１以下の売り上げでしかないというのは寂しい限りである。　コロナで人が外に出なくなったのも週刊誌が売れない理由の一つらしい。まったくひどい世の中になったものだ。　意外だったのは、週刊新潮が週刊現代に負けていることである。いや、そうではない。老人週刊誌の現代が健闘しているのである。　毎号毎号、年寄りの健康とセックスと終活しか掲載しない週刊誌が２０万部も売れているのである。いやはや、老人パワーは侮れない。週刊ポストも１６万部売れているには舌を巻く。　かく云うおいらも週刊現代の老人特集記事につられて買ってしまうことがあるので始末が悪いということか。現代とポストはスクープしないでも売れる雑誌を創ればよいと割り切っているのだろう。　週刊誌は売り上げと広告収入によって日銭の入る安定したビジネスだからであるが、そういうことばかりしているといずれ誰も買わない雑誌になる。　また、週刊大衆（９万）とアサ芸（６万）も健闘していると云っていいのだろう。だがねぇ、エロ雑誌もどきでは週刊誌の資格はない。　記事の中で、月刊「文芸春秋」の実売部数が２０万で前期比７％ダウンとあった。売れていないのである。　そのテコ入れとして、来月から文春編集局長の新谷氏（文春のエース）が月刊文芸春秋の編集長に就任するというから面白い。文芸春秋には眼が離せなくなるだろう。

  June 28, 2021

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  オリンピックとは、興行と見つけたり

  オリンピックとは、興行と見つけたり　どうやらオリンピックは強行されるようだ。　今ではどうか知らないが、ついこの間までの世論ではオリンピック開催を否定する人がほとんどだったような記憶がある。　それがあれよあれよという間に「オリンピックありき」になって今では開催が前提に何もかも動いている。　おいおい、いつからオリンピックってこういう風にヘンなことになっちゃったの？　ほとんどの人が迷惑だと思っているはずなのに（おいらは、やるならもう一年延期すべきと今でも思っている）やるのである。　だったら、無観客でやればいいと思うのだが、どうしても有人でやりたいらしい。全てやり方が中途半端である。　素朴に思うのだが、オリンピックとは皆に喜ばれて行われるものではなかったのか。クーベルタンが今回のケースで生きていた場合、果たしてこういう判断をしたのだろうか。　百年経って、オリンピックの歴史を振り返ったとき、「２０２１年のオリンピックは、世界中がまだパンデミックの継続にもかかわらず強行した」という蛮行が記録されるのではないだろうか。　今のオリンピックとは、どうもカネにまみれた亡者のオモチャに成り下がっているようだ。いや、単なる興行なのかも知れない。そう思えば納得できるし、ハラも立たない。　これはつまり、ＩＯＣという拝金主義の興行主がいて、日本政府という小屋があり、そこでアスリートが闘っているのである（考えようによっては、一番の被害者はアスリートである）。それって、何とか組が行う八百長試合の興行とどこが違うのだろうか。　おいらはそういうオリンピックをやって欲しくはない。だから、このようなオリンピックが続く限り、おいらは金輪際、オリンピックを観ることはない。それだけのことである。追記　陛下の昨日のお言葉は重い。それに対してどうして政府当局はこのコロナ禍でのオリンピック開催強行について何もメッセージを発出しないのだろうか。この国はいつからこういう腑抜けな三等国に成り下がったのだろうか。心が痛む限りであるが、永井荷風ならもともとそういう三等国なのだと云うに違いない。永井荷風は布団をかむってオリンピックなど見向きもしないのだろう。

  June 25, 2021

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  圓遊の「替り目」考、余話

  圓遊の「替り目」考、余話　前回の圓遊の「替り目」考をカキコした後、笑角亭朝生師匠から再びコメントをいただいた（写真は、志ん生）。　これが実に落語の「深い話し」である。　それは、前回、「師匠によれば、落語ではオチが題名になっているものが多くあり（中略）、これらの落語は最後のオチまで聴いて初めて演題の意味が分かるのである。　だから、これらの落語では演者も必然的にオチまで語ることになるが、物事には例外がある。　この「替り目」もそうで、途中にもオチがあることから演者によってはその途中のオチの部分で終わらせることが多いと蘊蓄を披露されるのである。」と書いた部分についてである。　これについて師匠は、うどん屋の延長の部分は「８のものを１０に伸ばしたのではなく、１０の中の重要な肝の部分」と本質を指摘されるのである。　それは、オチまで行かないと酒飲みがまた飲み直すのが「替り目」の落語だと絶妙な比喩を開陳されるのである（う～む、この表現はよく分かる。中途半端な飲み方では家に帰れないという心境は、おいらも酒飲みだから理解できる）。　だからこそ、逆に「替り目」を中途で切り上げたとしても（例えば、志ん生の「替り目」は１０のものを８で切り上げている）、一昔前の落語ファンであれば最後の「落ち」を心得ているから納得して帰路につくというのである。　師匠曰く、この途中で落とすやり方は主として寄席の場合で、お後の時間が押しているときなどにこの噺は絶好なのである。したがって、独演会やホール落語ではやってはいけないことだという。　さすが師匠の蘊蓄である。　ところで、素朴な疑問が生まれる。では、途中でやめる志ん生の「替り目」は邪道か、である。　これについて師匠は、「他の噺家では終われないところで切っても『絵になり』、誰もが満足できるという点で超一級の落語家である」とのご宣託である。　おいらも文句なしにそう思う「志ん生の替り目」である。　う～む、落語は奥が深い。しかし、その奥が深いところを簡単には表に出さないところがまた落語の深いところである。

  June 23, 2021

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  圓遊の「替り目」考

  圓遊の「替り目」考　四代目三遊亭圓遊の「替り目」である（写真左が圓遊）。　その演目のカセットテープを笑角亭朝生師匠から拝借したのである。　これが師匠推薦のことだけあって、ことのほか面白い。そういうわけではないのだが、３回も繰り返し聴いたのである。　実は、おいらの落語を聴く作法は1回目は雰囲気を、２回目は細部を、３回目はもう一度全体を聴き直すというものである。　特に今回の「替り目」は何度聴いても捧腹絶倒である。　それは何故かと云うと、おいらも「替り目」が好きだからである（特に志ん生。CDを持っている）。また、中身がいい。女房を持つならかくありたいという落語だからである。　ところが、今回聴いた圓遊の「替り目」は、志ん生の「替り目」と少々中身が違うのである。　結論から云うと、圓遊の「替り目」の最後には延長部分（うどん屋の話し）が入っているのである。それを今回初めて聞いたものだから実に新鮮であった（申し訳ないが「替り目」はユーチューブで聴くことができるので検索されたい）。　ここで笑角亭朝生師匠の登場である。　師匠によれば、落語ではオチが題名になっているものが多くあり（例。寝床、替り目、酢豆腐、二番煎じ、目黒のさんまなど）、これらの落語は最後のオチまで聴いて初めて演題の意味が分かるのである。　だから、これらの落語では演者も必然的にオチまで語ることになるが、物事には例外がある。この「替り目」もそうで、途中にもオチがあることから演者によってはその途中のオチの部分で終わらせることが多いと蘊蓄を披露されるのである。　ひえ～、知らなんだ。志ん生も途中脱落組なのだ。　実際、笑角亭朝生師匠によれば、「YOUTUBEで『替り目』を見ると７人の落語家（枝雀、志ん生、米朝、志ん朝、鳳楽、白酒、雀太。残念ながら圓遊のものはない）のものがあるが、うどん屋の“落ち“までいくのはこの中で三遊亭鳳楽のみである」とされる。　う～ん、そうだったのか。聴き比べると断然最後まであった方がいい。だからという分けでもないだろうが、笑角亭朝生師匠も「替り目」は圓遊にとどめをさすと宣われるのである。　では、何故圓遊がいいのだろうか。それは、圓遊の来歴にもよるところが多い。　大正11年（1922年）に六代目雷門助六に入門し、大正15年（1926年）には六代目都家歌六を襲名し、真打昇進となる。　ところが、その後昭和金融恐慌などにより寄席では食えず、昭和5年（1930年）ころに柳家三太郎として品川区西小山で幇間に出るのである。その後紆余曲折があって、戦後、昭和21年（1946年）四代目三遊亭圓遊を襲名した。落語芸術協会の大看板として、またTBSの専属落語家として活躍したのである。　また、今回の圓遊の「替り目」には軽妙洒脱な謡が数多く入っており、それがまた聴かせるのである。テープ解説の玉置宏によれば、幇間時代の芸が落語に磨きをかけたという。　その圓遊のエピソード。　楽屋では同輩、後輩の誰かれとなく語りかけ、賑やかに笑わせていた。笑わされ過ぎて高座に上がれなくなった者もいたという。　なお、特筆すべきは愛弟子の四代目三遊亭小圓遊に先立たれたことであろう（昭和55年（1980年））。圓遊はその悲しみから高座が遠のき、昭和59年（1984年）に他界している（享年８１）。　圓遊の「替り目」、古典落語の十指に入れていい。

  June 21, 2021

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  つき米屋と酢豆腐

  つき米屋と酢豆腐「つき米屋（つきごめや）」と聞いて分かる人は落語通である。「つき米屋」というのは、今では死語だからである。　なぜこのようなことをカキコするかと云うと、おいらの敬愛する笑角亭朝生師匠から貴重なカセットテープを拝借したからである。　テープには、文楽（ご存じ黒門町の８代目桂文楽。写真上）の十八番「酢豆腐」と圓遊（あの小圓遊の師匠、三遊亭圓遊）の名落語「替り目」が入っているのである。　これが抱腹絶倒の内容であるが、落語自体は諸兄がユーチューブなどで探して堪能して欲しい。　さて、「酢豆腐」である。文楽を聴いてやはり文楽恐るべしと思ったが、おいらの悪い癖で「他の落語家で同じ演目を聴く」というおいらの密かな落語悦楽法をとることにした。　これを始めると病気になるので諸兄はお止めになられた方がよいと思われるが、どうしてもおいらはそうしてしまうので仕方がない。やはり聴くなら志ん朝（古今亭志ん朝）である。　幸い志ん朝の「酢豆腐」をおいらもカセットテープで持っており、これを聴くとまた捧腹絶倒である。志ん朝は天衣無縫である。　余談だが、「酢豆腐」とは諸兄ご存じのとおり知ったかぶりのことであり、「酢豆腐」という料理そのものはない。　笑角亭朝生師匠もこのことについて蘊蓄を傾けられ、一般の国語辞典には酢豆腐の掲載はないとされる。　確かにおいらの愛用する「明鏡国語（大修館、北原保雄、２００３年）」を調べてみても酢豆腐は掲載されていない。　師匠ののたまわれるには、「言林（新村出、昭和３７年）」と「新明解（金田一京助、昭和４０年）」には「１．生の豆腐に酢をかけた食品　２．半可通、知ったふり」と掲載されているそうである。　要するに、豆腐に酢をかけてもそれは料理ではないということである。知ったかぶりで初めて「酢豆腐」と云う言葉が生きるのであり、そこが「酢豆腐」のキモである。　さて、志ん朝の「酢豆腐」に戻る。江戸っ子の跳ね上がる喋り方に舌を巻くのである。大文楽師匠と比較すると怒られるが、今の時代に合うのは志ん朝かも知れない。　話しは変わるが、おいらの持っている志ん朝の「酢豆腐」のテープのB面が「つきや幸兵衛」なのである。「つきや幸兵衛」は「小言幸兵衛」でも知られているが、「つき米屋」に特化した落語である。　志ん朝の話芸が冴えに冴える演目だが、最初に聴いたときはここで出てくる「つき米屋」の意味が分からなかった。「つき米屋」とは、「玄米を精白する小売店のこと」（江戸時代にあった）であるが、この商売の中身が落語の最後で生きるのである。最後までオチが引っ張られる上質の落語でこれも志ん朝節がたまらない。是非とも音源を探して聴いて欲しい落語の一つである。　思うに、落語は一級の芸術品だよなぁ。　聴いているときは、間違いなく浮世を忘れるよ。忘れないとしたらそれは、ヘタな落語だからである。　ヘタな落語と二流の芸術は蹴とばしてしまうしかない。何事も一流でなければ愉しむ価値はない。　さて、圓遊の「替り目」についても次回述べたい。圓遊の「替り目」は、笑角亭朝生師匠の一押しでもある。これがまた人生に直結する深い話しである。乞うご期待！

  June 18, 2021

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  おいらのコロナワクチン、1回目接種顛末記（後篇）

  おいらのコロナワクチン、1回目接種顛末記（後篇）　前の老人の接種が終わったので、おいらの番である。　おいらが前の椅子に移動しなければならないのかと思ったら、看護師がおいらに近付いて来た。「利き腕でない方の肩を出してください。アルコール消毒でこれまで異常があったことがありますか」である。看護師がいつの間にかおいらの横にいる。　ビデオテープでもう一度で看護師はおいらの手が下にダランと降りていることを確認してあっという間においらのワクチン接種は終わった。　注射部位に絆創膏もどきが貼られ、揉んではいけないとの指示である。あっけないことこの上ない。　すると、番号札を渡され、今度は会場の前方に行けと云う。　会場の中央付近にピケもどきが張られており、その前方に無数のパイプ椅子が整然と配置してある。アナフィラキシーショックなどの副反応が出ないかどうか１５分間の待機エリアである。　しかも、目の前を見ると大きなモニターが複数設置されていて、そこに番号が並んで映っている。　何の番号かと観ていると、番号の色が赤に変ったら１５分間経過したので退席していいという表示と分かった。　同時に自分の番号を探すとあと何分で退席していいかも分かるシステムだと気付いた。これは優れモノである。　ところで肝心の副反応である。　これが、打ったときの痛みは普通の注射と同じである。筋肉注射だから痛い？かとも思ったが、普通の注射と変わりない。チクッとするだけであり問題ない。　それよりも、普通の注射ならもっと注射の時間が長いはずだが、今回の注射時間は２秒以下である。だから、えっもう終わったの？という感じである。　１５分間待っている間、痛みや発熱があるかと思ったが、全く異常なし。　自分の番号の色が変わり、退席可となったので会場を後にした。　さて、肝心の副反応はその後、どうなったか。　帰宅して少しして頭痛がしたのである。鈍痛である。我慢できないほどではないが、夕寝を1時間程度したら消えていた。　それとは逆に注射をした部位が痛み始めた。ただし、腕を動かしても肩から上まで無理なく上がるので、左程の痛みではない。　注射二日目の翌日、発熱するかと思ったが、平熱。しかし、腕の痛みが増え、何もしないでもズキズキするという感じとなった（ただし、日常生活に支障が出るほどではない）。　そして三日目にはほぼ痛みが消えた。ま、副反応はほとんどなかったに等しい。　以上が第1回目の接種顛末であり、これで抗体が約３割完成するようだが、本丸は１か月後に予定している２回目接種である。はてさて、これからのコロナとの付き合い方はどうなるのかのぅ（この項終わり）。

  June 16, 2021

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  おいらのコロナワクチン、1回目接種顛末記（前篇）

  おいらのコロナワクチン、1回目接種顛末記（前篇）　コロナワクチンの1回目接種が完了した。昨日（６月１３日（日））の午後のことである。　単刀直入に書く。コロナワクチンの副反応が怖くて直前まで接種を迷った。だって、これほど副反応が発生する注射をおいらは知らない。　怖いのは、発熱（おいらの打つファイザー社製の場合、第1回目の発熱割合は６％、２回目は３１％）と注射部位の腫れ（同様に４％、１４％）である。ひどいのは吐き気（同様に５％、２４％）も伴うという。　しかも、おいらはインフルエンザの予防接種で前科２犯である。接種部位が毎回腫れるのである。結局、おいらの主治医はインフルエンザの予防接種をドクターストップとした位である。　さらに厚生労働省の発表によれば、因果関係は不明であるが、コロナワクチン接種で既に１３９人が死亡している（国からの補償金が４千万円以上出るらしいが、因果関係の証明はどうするんだろう）。　そうだからどうかは知らないが、旧友のTさんはコロナワクチンの接種を受けないという。　あっぱれである。　ワクチン注射の先進国であるイスラエルでも接種率が６割を超えると急激に接種をする人が少なくなるらしい。やはり、ワクチンを嫌がる人は必ずいるのだ。　ところで、おいらも当初はワクチン接種に否定的だったのである。だって、こんなに短期間にワクチンができるというのはどう考えてもうさんくさい。　だが、主治医によれば、体内に抗体を創るタイプのワクチンだから従来のワクチンとは異なり、副反応が出るのは当然の結果だという。　むしろ少々副反応が出た方が抗体を創っているエビデンスだと教わり、おいらは日和（ひよ）ったのである。　おいらの場合の結論。　打たないリスクと打った場合のリスクを考慮すると、「打った場合のリスクのデータがほぼ問題ないと出揃ったので、打つしかない」である。　さて、実際にワクチンを打った顛末である。　予約した午後２時の２０分前に接種会場へ車で到着すると、会場の隣の駐車場がテント張りの受付会場になっていた。　市の職員らしき担当者が大勢交通整理していて、あれよあれよという間に受付に誘導された。　なりすまし受診を避けるための身分証明を求められ、予約の有無と整合したら今度は接種会場に行かされた（この間数分。テキパキとしているのでスムーズである）。　接種会場は体育館で、そこには大量のパイプ椅子が整然と並び、入り口で医師の問診を受ける。何も問題がないと医師が判断したので、目の前の列の空いている好きな椅子に座れと支持される。　こういうときは、前の人の後ろが空いている席に座るしかない。　座ったとたん、目の前に座っていた老人が左腕を捲り上げた。　中年の看護師がアルコールで老人の上腕を拭きながら「アルコール消毒で異常があったことがありますか」と聞いている。「ありません」と答えた老人に「手を下にダランと降ろしてください」と云っている。それを確認した看護師は素早くワクチンを注射した。　２秒もかからないうちに看護師は「はい終わりました」と云い、目の前の出来事が終わった。　おいおい、もうおいらの番かよぅ（この項続く）。

  June 14, 2021

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  山持ちの憂鬱（後篇）

  山持ちの憂鬱（後篇）　だが、山の経済的価値が低下しても、固定資産税は毎年かかる。　高額ではないもののこれが毎年課税されている。１０年、２０年と継続すればバカにならない金額だと気付く。　そこで、座して死を待つのではなく、何らかの対策を立てることも必要になる。　具体的には、山の管理をすることである。それによって山の価値はプラスとなる。実際、役所によると山の管理委託費は国や町による７割補助があるので、それを利用しない手はないという。　結局、山持ちは自己責任ということである。　では、今後、どうするべきなのだろうか。　役所からアドバイスを貰ったところ、山の現状を知ることが第一歩だという。　なぜなら役所がアドバイスしようにも、山の場所、植えてある木材の種類、間伐の必要の有無、間伐する際の現状（木材は山の上なのか、下なのか）、道路は隣接しているかなどが分からなければ何も判断できないからである。　例えば、どんなに立派な木材が育っていても山のふもとに道路がなければ搬出出来ないのである。宝の持ち腐れである。同様に山の中腹以上にいくら高価なヒノキがあってもそれを切り出すのは相当な手間がかかる。　だから、まずは現場に行って現状を把握することが先決だという。なるほど、これは仕事の流儀と同じである。　おいらは思ったのである。約３０年前に母が実際に間伐をしており、その際そこそこの金額を得ている。　だから、山に道路は隣接しているはずだし、そのときに植林していれば現在は収穫の時期である可能性が高い。つまり、それなりの山である可能性がある。　そこで、まず、法務局にある公図を調べて山の場所を確認し、しかるべき方法によって実査をしようと思い始めている。　ご先祖様が残してきた山である。そのご先祖様が今、再びおいらとおいらの兄弟の前に現れてきたのである（この項ひとまず終わり）。

  June 11, 2021

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  山持ちの憂鬱（前篇）

  山持ちの憂鬱（前篇）　山を持っているとこのブログで書いた。　その山の名義変更の手続きがこの度完了した。　山の問題には二つがあり、一つが名義変更、もう一つが山の管理である。　一つ目の山の名義変更は、これをしないで放置しておくと罰則（過料）が課せられるという法律（民法および不動産登記法の改正）がこの４月に成立したので、これについてはクリアしたことになる。　問題は、二つ目の山の管理をどうするかである。　今回の問題の発端は、この春に「山の管理をどうするかというアンケート」が広島山間部の役所からおいらのところに届いたことにある。　これについて、おいらは「山の管理は役所か森林組合にお願いしたい」と返事をしていたのである。　そのことを思い出し、こういうときには行政の力を借りるべしというオーソドックスな方法に辿り着き、先週、役所にお伺いをたててみた。　すると分かったことは、同じような悩みを抱えている山持ちが多いということである。　何と回答のあった約４割がおいらと同じように管理を任せたいというらしい。　しかし、役所は万能ではない。予算はないし、人もいない。結局、森林整備の計画を立て、地区を決めてできる範囲内から順次対応していくしかないという。　これは、つまり、役所は当てにならないということである。実際、役所は山の寄贈は断っている（実は、国への寄贈も同様で、国が山を受け取る場合はそのための諸費用と今後の経費込みでなければ受け付けない模様である）。　その背景には、山の経済的価値が昔と比べて下落したことにあるようだ。　ひと昔前なら植林をすれば３０年後は退職金より多い金額が貰えるというのでこぞって山を欲しがったという。　ところが海外から安価な木材が入り、国内の木材価格は５分の１に低下、また、林業従事者のコストも上昇し国内の植林の採算は取れなくなったからのようだ。　おいおい、聞いてないよぅ～（この項続く）。

  June 9, 2021

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  奥田恭子ハープ・チャリティ・コンサート

  奥田恭子ハープ・チャリティ・コンサート　３か月半ぶりの奥田恭子ハープ・チャリティ・コンサートである（２１年６月５日（土）午後３時から）。　今回もネット配信で参加させていただいた。　ただし、今回のネット配信対応は油断してしまった。慣れは、禁物である。開始３０分前にネットが繋がったので安心していたが、直前にジョインしようとすると画面が出てこない。　おいおい、どうなっているのだと試行錯誤するが繋がらない。結局、３時開演にもかかわらず、３時８分ごろにやっと画面が出てきた。　どうやら開演も少し遅れていたようで１曲目のノクターンに間に合ったのだが、やはり、オンラインにはこういう不慮の事態は付きものだと思わなければならない。　さて、今回のコンサートも古野淳さんのホルンと奥田恭子さんのハープのデュオ演奏である。　これが今回も良いのである。前回も書いたが、ホルンの暖かい音色とハープの澄んだ音が妙にマッチするのである。ホルンが金管楽器にもかかわらず、木管楽器のように柔らかい音を出すからであろう。　さて、今回の構成は前半が４５分、休憩を１０分挟んで後半が４０分、アンコールが約１０分（４時４５分終了）。　コンサート前半の山は、Ｊ・シンガーの「ホルンとハープのための組曲」であった。この組曲の出だしの低音と高音のバランスが良いのである。それは、あたかも黒沢明の映画のサウンドトラックを聴いているような愉しさであった。　その前に演奏されたグリエールの「ハープのための即興曲」もなかなかのものである。肩肘を張らなくても聴ける曲だから良いのだろうか。　奥田恭子さんは、のたまわれる。「ハープのための曲というのは少ないのです。だから、ハープのためにこういう曲を残してくれたことに感謝したい」と。奥田さんのハープへの愛情が吐露され、こちらも思わず頷いてしまう。　ところで、今回感心したのは画像が鮮明だったことである。ハープの弦の色が鮮やかに分かるのである。ネット配信の映像技術も回を重ねる毎に上達している。休憩時間の少し前にその旨をツイートしていたら休憩時間においらのツイートがＭＣによって披露された。　コンサート後半は「グリンカ」でスタートし、その後、テノールの鈴木ヒロミツさんがゲスト参加。　会場が「聖グレゴリオの家」（東久留米市）であり、音がクリアでよく響くので歌曲が似合うのである。　以上の感想である。　今回のコンサートはポピュラーっぽい曲も多く、また、古野さんの選曲であろうか日テレ開局記念ドラマ「波の盆」（実相寺昭雄監督、倉本聰脚本）の主題歌などもあり、アイデアが盛りだくさんの内容で大変愉しませてもらった（下の写真はアンコール「少年時代」）。　もとよりこれはひとえに奥田恭子さんのハープが素晴らしいからである。奥田恭子さん、今回もありがとうございました（奥田恭子さんのチャリティコンサートを継続されておられる姿には、毎回頭が下がります）。

  June 7, 2021

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  お色気漫画家（風俗漫画家）の系譜（後篇）

  お色気漫画家（風俗漫画家）の系譜（後篇）　我が国におけるお色気漫画家（風俗漫画家）の系譜は、田中比左良⇒小野佐世男⇒杉浦幸雄（写真下は、杉浦年賀状）⇒小島功の四氏である。　既に今週の拙ブログでは田中比左良のことを、小野佐世男と小島功については過去の拙ブログで述べている。　そこで、後編では杉浦幸雄について触れてみたい。　実力派である。昭和７年に、近藤日出造、横山隆一と若手漫画家の団体「新漫画派集団」を結成している。もとより近藤日出造、横山隆一は、本邦漫画界の重鎮である。　ところが横山隆一のセンスと技術に圧倒された杉浦は、「横山氏にできないもの（略）をやるしかない」「彼の女には色気がない」「女が主役の風俗漫画をかいて、女をかかせたら日本一の漫画家になってやる」と決意し、女性を題材にした漫画に活路を見出したというのである。　これはわかるなぁ。空き巣理論である。ランチェスターの法則とも云う。　すでに田中比左良と小野佐世男がお色気漫画の開拓をしている。　それに、それまでのギャグ漫画は見るからに滑稽な人物が滑稽を演じるさまを描いたものが主流であった。　杉浦は新機軸として、美男美女の失態と恥じらいをユーモアに描写したのである。　これが評論家の目にもとまり、佐藤忠男は「エロチシズムだけ、あるいは諷刺だけではそうとうな後輩も出てきているが、笑いと、エロチシズムと、ペーソスと、絵の背後に生活のリアリティを濃密にうきあがらせる風俗描写の正確さや滋味においては、杉浦幸雄の一枚ものは真似手がない」とべた褒めである（写真下は杉浦幸雄「当世おんな風俗画集」から）。　そして、曾野綾子は「杉浦さんがここ数年間・・・延々と書いてこられた女性は、その無知、狡猾、ハレンチ、欲張り、動物的（人間的にあらず）だらしなさ、無能さ、お人好しの点において、まさに目を覆わしむるものがあった。この方、ツワモノである。真実を描いてゾーとさせ笑わせる。単なる漫画ではない。人間洞察であり、文明批評である。一九六〇年代の全女性のテキとして、昭和史に名をとどめるに値する」と絶賛である。　おいらも思う。女の美しさと可愛さは、その背後に見え隠れする女のいやらしさと愚かさという毒があるからこそ映えるのである。女の相反する両面をたった一枚のイラストで表す杉浦の力量は只者ではない。　だから、四大お色気漫画家（風俗漫画家）では杉浦幸雄が抜きん出ているように思う。　氏の美人描写は小島功（写真下）に大きな影響を与えたが、杉浦自身は「（私は）小島氏のように上品にかきません」と謙遜している（しかし、謙遜しながら「まだまだひよこ」と思っているんだろうなぁ）。　　　この河童のエロティシズムも確かに完成されているが、杉浦幸雄の毒には敵わない（この項終わり）。

  June 4, 2021

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  お色気漫画家（風俗漫画家）の系譜（中篇）

  お色気漫画家（風俗漫画家）の系譜（中篇）　田中比左良（ひさら）である。　写真は、氏の「潮干狩り（仮題）」である。こういう絵を戦前に描いていたというのは驚きである。　岐阜県美術館発行の図録「昭和モダンとユーモア・田中比左良展」によれば、「田中比左良は、『西洋文化の移入、模倣、折衷などで疲れた精神を脱ぎ捨て、軽やかで遊び心に満ち溢れた“娯楽”を絵と彫刻に引き込』んだ≪比左良調≫といわれた漫画・挿絵を生み出した人です。「社会がある意味で男だけで構成され、戦争への関心を高揚させるぐらいしかなかった窮屈な世の中にあって田中比左良はおそらく初めて、あるがままの女性を大衆に登場させました」とある。　そうか、田中比左良の絵はそれまでの単なるお色気漫画とはディメンションが違うのである。　だから、本邦のお色気漫画の嚆矢は、田中比左良でなければならないのである。　ところで話しは脱線するが、この月曜夜、鈴木理夫氏からご連絡をいただいた。　上の画集が某ネットオークションに出ているとの情報である（田中比左良の代表的画集。講談社、昭和５３年）。しかも、これが超廉価。　本来ならそこそこの値がつくはずであるが、今や田中比左良のことなど誰も知らないと見えて、運よく底値でゲットすることができた（本件については、鈴木理夫氏のご厚意に深く謝す）。　だが、ある意味で文化遺産にも等しいこういう貴重な文献をタダ同然で入手できるというのは正直、複雑な気持ちである。　同時に、今週中には届くであろうこの画集を捲るのは、またかけがえのない愉しみな時間を過ごすことになる。　いやはや、人生を愉しむには、おいらの残りの時間が少なすぎる（この項続く）。

  June 2, 2021

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  お色気漫画家（風俗漫画家）の系譜（前篇）

  お色気漫画家（風俗漫画家）の系譜（前篇）　先週水曜日に富永一朗のことをこのブログにカキコした際、おいらの敬愛する鈴木理夫氏にその旨をメールで伝えたところ、氏から返事が来た。　ご本人の了解をいただいたので、今回はそのエッセンスを紹介させていただく（写真上は、田中比左良「からっ風銀ブラ風情今昔」（紙に水彩、鈴木理夫氏蔵））。　鈴木理夫氏によれば、我が国におけるお色気漫画家（風俗漫画家）の系譜は、正しくは田中比左良⇒小野佐世男⇒杉浦幸雄⇒小島功の四氏と述べられるのである。　この系譜の列挙に、氏は絶大の自信を持っておられるのである。　田中比左良（たなか　ひさら）は、戦前戦後（大正末から昭和４０年代）にかけて女性風俗を描いて活躍し、特に戦前は竹久夢二と人気を二分したと云われたほどの人気漫画家である。　続く小野佐世男は、以前おいらのブログでも紹介したことのある紛れもない偉大な風俗漫画家である（このブログのフリーページ「小野佐世男」参照）。　そこでは、小野佐世男のことを「モボ・モガを描かせたら天下一品である。肉感的な女風俗絵図を描く天才的画家とでも云おうか。彼の描く絵は、何とも云えない猥雑さが漂いながらも、一級品の芸術に仕上がっているのである」とおいらは評している。　ところが、おいらは迂闊にも田中比左良のことを知らなかったのである。おいらはまだこの世界ではもぐりであると、不明を恥じるばかりである（恐らく鈴木理夫氏からは、以前に教えていただいていたはずである）。　だって、戦前はあの竹久夢二！と人気を二分したと云われたほどの人気漫画家だよ。　ところが、早速、田中比左良のことをウイキペディアで調べてみるとこれがない。　類似のもので全体像を掴むと、田中比左良は大正から昭和時代の漫画家、挿絵画家であり、松浦天龍に南画を学んだようだ（主婦の友社と読売新聞で活躍）。昭和初年代の女性風俗、特にモダンガールを描き、また家庭ユーモア小説を独特のエロチシズムで表現したとある。　おいおい、一体どういう人だったのだろう（この項続く）。

  May 31, 2021

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  ネットがダウンで原始生活に

  ネットがダウンで原始生活に　火曜日の深夜、ネット接続機器が突然ダウンした。　ネットが繋がらなくなったのである。おいらのブログの更新も当然できなくなった。　同時にアイホンのWi-Fi機能もダウン。　電話もネット回線なので、不通。YouTubeもネット回線利用なので、テレビで観ることもできなくなった。　おいおい、これでは原始生活と変わらないよ。　で、原因を探ったが、２台のネット接続機器（モデム？サーバー？と云うのか、正式名称が不明。暫定的にモデムと呼ぶ）に異常はない。　嫌な予感がした。これまでもモデムは何回か壊れている。今のネットはソネットを利用して４年目だが、横浜にいたときはヤフーを１０数年使っており、その間、二度もモデムが故障している（その都度、新しいモデムに交換してもらった）。　だから、今回は４年目でモデムが壊れた可能性があり、少々ペースが速いと思いながら、ソネットに電話することにした。　故障であれば一日も早く代替品を送って欲しいからである。普通なら、最低二日間は原始時代になる。　翌朝、ソネットに電話した。　ところが、これがコロナワクチンの予約と一緒である。何回電話しても繋がらない。ただし、ワクチン予約と違って、通話中のままで「ウントモスントモイワナイ」というのではない。電話が繋がって自動音声になるのである。　そして、シチメンドクサイやり取りがあって、先方から自動的にショートメールを送るのでそれを見て欲しいと伝えられた。　トホホ、オペレーターに繋げてくれないのである。しかも、ショートメールを観てもおいらのネットがソネットと繋がっているのかどうかは分からない。切り捨てられたのである。　仕方がない。オペレーターに繋がるまで電話するしかない。　だって、パソコンが動かないのも困るが、今の世の中はネットで情報が伝達され、その情報を前提に動いているからである。　だから、再び電話する。オペレーターに繋がるのをひたすら待ち、待って、待って、待って３０分。　もう繋がらないと思ったら、オペレーターが出てきた。　おお、助かった。こういうのを干天の慈雨という。　女性のオペレーターは手際よくおいらのネットがワークしていることを確認して、おいらのモデムに何らかの不具合があることを指摘した。　そして、マニュアル通り、おいらにモデムの電源への接続の確認を求めたのである。　そうすると、あっと驚く大三元。　二台あるモデムのうちの一台の電源コードが外れているではないか。これでは、不通になるはずである。　原因は、書斎の机の下のタコ足配線であった。芸術的な配線にしていたため、何らかのショックでモデムの片方のプラグが二股ソケットから抜け落ちていたのである。　トホホ。「弁解の余地なし」である。　おいらはオペレーターに丁寧にお礼を云い、即座に書斎のタコ足配線を改善したのは云うまでもない。　教訓。　ネット社会は、たった一つのタコ足配線で崩れ落ちる。　何らかの理由、例えば大地震で大規模停電が発生したとすれば、これと同じことが起きるはずである。　考えてみれば、これは現代の怪談である。

  May 28, 2021

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  富永一朗の漫画、好きだったなぁ

  富永一朗の漫画、好きだったなぁ　訃報である。　漫画「チンコロ姐ちゃん」などで知られる漫画家の富永一朗（とみなが・いちろう）氏が５日、老衰のため死去した。享年９６歳。　おいらは富永一朗の漫画、好きだったなぁ。　下ネタが得意で下品すれすれなのだが、すれすれの具合が絶妙で決して下品の粋までには堕ちない立派な漫画に仕上がっていたからである。　苦労人である。大分県の小学校で図画の教諭をした後、上京して帝国興信所の臨時雇いとして会社年鑑の編纂をしながら「サンデー毎日」に漫画を投稿。　当時、勤務先の向かいに新太陽社（旧「モダン日本社」）があったため「モダン日本」編集部に作品を持ち込んだところ、編集者時代の吉行淳之介から才能を認められ、後に吉行が移った三世社の「講談讀切倶楽部」に作品を多数掲載されたという（ウイキペディアによる）。　いやはや、これで富永一朗がホンモノだとおいらは膝を叩いたのである。認めたのが吉行だよ。だから、彼はどこか違うと見込んでいたのだ。　もう一つ。　富永一朗の師匠である。お色気漫画の巨匠、杉浦幸雄氏というではないか。　おいおい、恐れ入ったよ。杉浦幸雄氏はおいらの敬愛する鈴木理夫氏も太鼓判を押すお色気漫画家（イラストレーター）の巨匠である（余談だが、鈴木理夫氏によればお色気界の巨匠のもう一人に小島功氏がおられる。おいらも納得、大満足）。　だから、富永一朗はお色気漫画の正道を歩んでおられたのだ。　しかし、漫画の弟子というのは美術の弟子と同じで難しい。だって、師匠の漫画をそのままマネしても仕方がないからである。　ここが、落語の子弟と違うところである。円楽が圓生の芸をそっくりそのまま盗んで演じればそれはそれで評価されるが、絵や漫画の世界で師匠とそっくり同じタッチで漫画を描いたのでは洒落にならない。　おいらが思うに、富永一朗は師匠である杉浦幸雄の下品にならないというお色気を盗んだのである。だから、下品ぎりぎりの美学に到達したのである。　いい師匠に、いい弟子あり、である。　では、最後においらのお宝を。　神田神保町で入手した、富永一朗の直筆色紙である（為書きの「浅川今朝義」氏には、京葉線建設をめぐる疑獄事件の著書がお有りになるようである）。　富永一朗が４８歳、まだ油が乗っているときの作品である。本物を手に取って観ることが出来るというのは眼福である。

  May 26, 2021

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  広島市の緊急事態宣言とは「カープの緊急事態宣言」と見つけたり

  広島市の緊急事態宣言とは「カープの緊急事態宣言」と見つけたり　今月１７日にカープの菊池、小園、正随の３選手がコロナ陽性と診断され、また球団の判断で松山、西川、磯村も同時に登録抹消とされた。　続いて、２０日夜、今度は鈴木誠也、長野、羽月、石原、大盛の５選手も感染が判明した。これに伴い、球団は坂倉と塹江に自宅待機を命じた。　全員、熱がなく、無症状だというが、これでカープは１軍選手のスタメンほとんどが欠場となる。　カープの最近でのスタメンは、１番セカンド　　　×菊池（リーグ打率トップ）２番センター　　　×羽月（勝負強い）３番ライト　　　　×鈴木（WBCの主砲）４番ファースト　　×松山（大砲）５番キャッチャー　×坂倉（スラッガー）６番サード　　　　　堂林（プリンス）７番レフト　　　　×西川（天才打者）８番ショート　　　×小園（ラッキーボーイ）　というケースが多かったが、これでは堂林以外スタメンは全員欠場である。これに、代打の切り札長野を欠くのである。　ひぇ～！パンデミックである。　先週末の阪神３連戦はこのコロナ禍で中止となったが、明日からは地元のマツダスタジアムで西武との交流戦が始まる。　強力打線の西武と戦うのだから、飛車角落としというより飛車角金銀落としでは勝ち目がないと思われる。　だが、こういうときこそ若手の絶好の出番となる。　カープの２軍には、イキのいい若鯉が山ほどいる。ピンチをチャンスとするラッキーボーイの出現を期待する。若鯉よ、羽ばたけ。　しかし、コロナの収束が見えないので、こういう異常事態はどこのチームでも起こりうるだろうなぁ～。　首位を走るタイガースやホークスであってもこの事情は同様である。ということは、今年のペナントレースはまだまだ「何でもあり」である。

  May 24, 2021

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  手動式カメラにハマル

  手動式カメラにハマル　カメラが好きである。　中でもライカで写真を撮る醍醐味は、何よりのものである。このブログでもカキコしているがおいらの愛機は「ライカM3」である。　無論、フィルムカメラである。　だが、フィルムカメラの悩ましいところは、やはり、フィルム代と現像代がバカにならないことである（そもそもフィルムを売っているお店をみつけること自体が最近は難しい）。　そこでどうするかである。　フィルムカメラの良さを生かして、同時にデジカメの機能を使うことができれば一石二鳥となる。　前にもこのブログで紹介したと思うが、そこで登場するのが上の写真である。　ソニーのデジカメ（ソニーαNEX-5）とライカのレンズ（Summicron沈胴式）をアダプターで組み合わせたカメラである。　これが全自動ではなくなるので、絞りとピント合わせは手動でするしかない。　だが、写真を撮るという醍醐味をこれほど味わえることはない。ライカのレンズの深みとソニーの一眼レフの機能が相俟って出来上がりの写真も大満足である。　しかも、何枚撮ってもフィルム代は不要、現像代もかからない。　前にも書いたが、手動式のカメラを使いこなすには、人とカメラとが一体化していなければならない。そうでなければよい写真は撮れない。カメラの機能を最大限に引き出すのはあくまでも人間なのである。　だから、カメラは体の一部になる。当分、この愉しみを続けてみようと思う。

  May 21, 2021

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  コロナワクチンの予約完了

  コロナワクチンの予約完了　神奈川県某市、根岸の里もどきに住むおいらのワクチン予約の顛末である（写真は、コノハナサクヤヒメ）。　御多分にもれず、前回のワクチン予約ではコールセンターに何度電話してもつながらなかった。　だから、今週月曜日の予約再開でも悪戦苦闘が予想されたのである。予約開始の８時４５分からコンタクトを取っても通話中に決まっている。　ところで、今回からはネット予約も可能だというではないか。　だが、それもテレ朝某ニュースワイド番組でコメンテイターを務める石坂浩二氏の話しによれば、パソコンの前に座りっぱなしで予約開始の二日目の昼頃にやっとコンタクトが出来たとの話しである。　ということは、人口１０万人の地方都市で年寄りが３万人から４万人として、これが一斉に電話しても回線が２０そこそこであってはつながる分けはないという理屈になる。　要するに、針の穴にラクダを通そうという話しである。期待してはいけない。　さて、月曜日の朝が来て、開始時間には電話が殺到しているはずだから、おいらは１０時過ぎに電話してみた。案の定、通話中である。何度、電話しても事態は同じである。　電話したのには理由がある。愚妻と同じ時間に同じ集団接種会場でワクチンを打ちたいからである。ネット予約だと、おいらと愚妻の申し込みが別々になるのである。　しかし、そういうことは云ってられない。電話がダメならネットでの申し込みしかない。　そう思ってネットで予約したら、あっと驚いた。一発でつながったのである。　しかも、手続きがイージー。クーポン番号と生年月日だけ入力すればよい。簡単に予約が取れた。　返す刀で、今度は愚妻の予約取りである。これもスムーズにいき（ただし、おいらの予約済みの画面がネットの画面で自動的に出るので、それをログアウトしなければならないのが面倒）、同じ時間、同じ場所での予約が取れた。　奇跡だと思ったよ。　思うに、この種明かしは簡単である。　おいらの住む田舎町は歴史のある街で高齢者が多いため、そのほとんどがパソコンなどを使っていないからだろう。　やれやれ、喜んでいいのや悪いのやら。

  May 19, 2021

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  パソコンが動かなくなった

  パソコンが動かなくなった　昨日からパソコンが動かなくなった。いや、正確に云うと、パソコンの動きが急に遅くなり始めた。　例えば、このブログの文章にしても一つのセンテンスを文字返還するのに１０秒以上かかるようになった。これでは全く実用的ではない。　これはデジャブである。過去にもこのようなことがあった。そう、おいらはパソコンの容量が限界に近づいたのだと恐れおののいたのである。　パソコン本体の使用量を調べてみたら、案の定、残りがあとわずかしかない。　おいおい、おいらのパソコンの容量は普通に使っていれば問題がないサイズの0.5TBである。実用的なサイズだが、データが溢れるとこういうことになる。　そこで、どうしてこうなったかを考えると思い当たる節が二つあった。　それは、愛車のドライブレコーダーである。一度ゆっくりと観てみたいと思って、ドライブレコーダーの全てのデータをパソコンに入れてみたのである。　これが、ことのほか面白い。遠出したときなどの前景が延々映るのはワクワクするよ。しかし、こりゃ大容量になるわな。　次に、アイホンの動画の移管である。これを全て移管したら結構な容量になった。　何のことはない、データの入れ過ぎである。　やはり、パソコンはソフトだけ入れておき、データは外付けHDDで保存するのがハッカー対策も含めて正解なのだろう。　ところが、この作業が意外に面倒である。容量が多いとそれなりに時間がかかるからである。それに、そのデータを再び他の外付けHDDにバックアップするための作業がまた必要となる。　要は、パソコン本体には必要最低限のデータしか入れないことである。そして、保存したいデータは外付けHDDに入れ、しかも、そのバックアップを他の外付けHDDに入れておくということである。　やれやれ、パソコンを友達にするということは、ホンマ難儀なことやのぅ。

  May 17, 2021

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  コンピューターの脆弱性

  コンピューターの脆弱性　パソコンのウイルス対策用ソフト（おいらはロシアのカスペルスキー無料版を使用している）が二重三重にハッカー対策をしているせいか、最近はしょっちゅう新しいバージョンへのダウンロードを求められる。　これが面倒である。しかも、内容が高度になっているように思われるせいか指示されている内容の理解に戸惑い、また、有料版へのお薦めも抜け目がない。　たかだか個人所有のパソコンではあるが、それでもおいらはインターネットバンキングはやっているし、アマゾンなどでの買い物もクレジットカードでしているのでセキュリティに瑕疵があってはたまらない。　半分はイヤイヤで、しかし、半分は義務と思いながらウイルス対策用ソフトのバージョンアップに付き合っている。　だが、話しはそのレベルの問題ではない。　巷ではロシアとも云われるハッカー集団がランサム（身代金）目当てのサイバー攻撃を世界中の大企業に仕掛けているという。　おいおい、日本のサイバー攻撃対策は大丈夫なのかね。　ある日突然、日本の中枢企業のコンピューターがイカレ、個人のパソコンも同時に開かなくなったらどうなるんだろう。　世の中の前提がパソコンありきで成り立っているので、もしそうなったら、この世は終わりである。　だから、おいら個人としてできることは、必要なデータを外付けハードでバックアップしておくことしかない。そのうち、どうしても大切な資料や大事な写真などは、紙ベースで保存しておくということである。　使えなくなったパソコンは、カラの弁当箱より始末が悪いからである。　今の世の中、軍事戦争が軽々に起きるとは思わないが、日本上空にサイバー攻撃爆弾の一発でも打ち込まれれば、太平洋戦争時の停電どころではない。　日本政府は、このことについて信頼するに足るや？

  May 14, 2021

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  部分バカ

  部分バカ　テレビのワイドショーはポピュリズムの権化で、フェイクニュースの垂れ流しの様相である。　しかし、おいらは昼食時間に余裕があれば、フジのバイキングにチャネルを合わせる。　なぜなら、MCの坂上氏が本音でツッコミを入れるからである。だが、司会の坂上氏は評判が二極化しているようだ。パワハラを使ってスタッフを意のままにしているなどの不評があるらしいが、真相は不明である。　ところがおいらは、いつだったか某週刊誌で坂上氏のエセーを読んだことがある。これが卓越していた。自宅ではない場所のトイレでトイレットペーパーがもう少しでなくなりそうな場合、どうするかという吐露であった。　普通なら、そのまま放っておくだろうが、坂上氏は「次に入ってくる人のことを考えて行動すべき」と持論を展開されるのである（その内容は割愛するが、一読に値する）。　これに膝を叩き、おいらは坂上氏を信頼に足る人物だと評価したのである。　では、なぜこのようなことを書くかというと、昨日のバイキングで「高橋洋一教授のツイッター事件」が取り上げられていたからである。　事案は、「内閣官房参与を務める高橋洋一嘉悦大教授が１０日までに、インドや欧米各国と日本の新型コロナウイルス感染状況を比較した上で「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止かというと笑笑」とツイッターで発信した。　これを受け１０日、野党やインターネット上では「亡くなった人への配慮を欠く」との批判が強まった。　菅政権は「高橋氏個人の主張」などとしてコメントを避けた」（２０２１年５月１０日東京新聞ウエブ）である。　これについてのコメンテーターの歯切れが悪かったのである。MCの坂上氏も残念ながら舌鋒が鋭くなかった。　なぜかと云うと、高橋教授のデータ自体は正しいからである。　しかし、データが使われるときほど注意が必要である。当たり前のことだが、データはウソをつかないが（中国では当てはまらん）、データを使う人物がウソをつくことが多いからである。　そう考えると、日本の感染状況が他国のそれと比較したデータ上では高橋氏の主張が正解のように思えるが、それは物事の一面の真理でしかないのである。　諸兄ご存じのとおり、事実は単純なデータだけで動くのではない。　事実は多面的に、しかも複雑に絡み合って進むから始末が悪いのである。　人生は、決して一次方程式ではない（余談だが、頭のいい人ほどこういう錯覚に陥ることが多いように思う。こういうのを「部分バカ」と世間では呼ぶ。なお、これに類似する言葉として「合成の誤謬」がある）。コロナは典型的な連立方程式である。　その趣旨のことを坂上氏が一言云えば、議論は紛糾しなかったと思うのである。　だが、そんなことは百も承知で坂上氏が意図を含めて番組を引っぱったのだとしたら、それはそれで坂上氏は名MCである。　坂上氏、恐るべし。

  May 12, 2021

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  連休中にしたこと

  連休中にしたこと　今年（２０２１年）の４月１７日から箱根のポーラ美術館で藤田嗣治展「フジター色彩への旅」が開催されている（会期は９月５日までの予定）。　だが、連休中の都下は緊急事態宣言中である。同時に、横浜もまん延防止なんとかである。　だからではないが、連休に人の大勢いるところには行きたくない。また、公共輸送機関を使うのはもってのほかだろう。そこで、車を出して愚妻と二人でポーラ美術館に行ってみようかと考えていた。　ところがテレビを観ていたら、行楽地である箱根には人が大勢出ているというではないか。　車で行って、美術館だけなら問題ないかと思ったが、人の考えることは皆同じで美術館も満杯かも知れない。　こういうときのおいらの座右の銘は「君子危うきに近寄らず」である。　そうなると連休の奥の手は逆張り、つまり穴場探訪である。　穴場とは、おいらにとっては観光地だが、他の人にとっては誰も興味が沸かない場所、すなわち以前住んだ場所のことである。そう、おいらが以前住んでいた横浜市内某所に出向くことにした。　現在おいらが住んでいる温泉町は、横浜から引越して約４年が経過しようとしている。おいらは、横浜に１２年間住み続けたのである。だから、従前の地にはひとしおの懐かしさがある。　東名を使って１時間足らずでその地に到着した。愚妻と懐かしい街並みを散策する。　当たり前だが、変わっていない場所もあれば、変わっている場所もある。おいらのかかりつけであった医院が広い駐車場だった場所に移転して大きなビルになっていたり、郵便局も移転してモダンなビルになっていたのには驚いた。　思い出がつまっている場所だけに、こういう発見はほかの場所では味わえない醍醐味である。　諸兄よ、連休の穴場探訪は、昔住んでいた場所である。　もう一つ。　連休中に断髪式を行った。愚妻に髪を切ってもらったのである。　ただ、以前の普通の髪の長さに戻したわけではない。ポニーテイルが出来るギリギリの長さまでにしておいた。　髪を後ろで結ぶ快感を覚えたからである。「ちょい悪老人」の雰囲気が好きになったからかも知れない。　ま、いずれはコロナが収束するだろうから、そのときには元の短髪に戻すつもりでいる。　やれやれ、こうしてみるとコロナによって生活様式がすっかり変わってしまったことに気付くのである。いつまでこういう状態が続くのかのぅ～。

  May 10, 2021

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  強くなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない（後篇）

  強くなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない（後篇）　原尞の小説が凄いところは、ハードボイルドとミステリーの緻密な構成とがマッチしているところにある。　これはもう神業である。　日本でこれほど乾いた小説が書けるとは驚きの一言でしかない。しかし、残念こともある。　それは、寡作ということである。　原尞の作品は、長編だがこれまでわずか５作品。短編もあるが、「天使たちの探偵」（早川書房。９０年）の１冊のみである。　長編の５作品を見てみよう。　デビュー作が本格ハードボイルド長編「そして夜は甦る」（同。８８年）。これが「このミス（このミステリーがすごい）８８年第２位」を受賞する。　そして、２作目が「私が殺した少女」（同。８９年）で「このミス８９年第１位」を受賞し、同時に直木賞受賞となる。　とどめは、第５作目の「それまでの明日」（同。１８年）が再び「このミス１８年第１位」受賞となるのである。　おいらは、いずれもリアルタイムで読んでいる。　だが、第３作の「さらば長き眠り」（同。９５年。「このミス９６年第５位」）と第４作「愚か者死すべし」（同。０４年。「このミス０６年第４位」）はそれぞれ前作から約６年、約９年、そして第５作目は前作から１４年という長い期間が経過しないと上梓されないのである。　だから、ファンとしてはどうするか。　次回作を待ちわびていても、次の作品が全く出てこないのである。　それに原尞自身が今年の１２月に７５歳を迎える。下手をすると第５作が氏の最後の小説になるかも知れない。いや、おいらだって４つ年下だから、こちらが先に逝ってしまうかも知れない。　そこで、再読、再々読をするしかないのである。　だが、ある意味でこれは理に適っている。　若いときは速読、つまり読み飛ばしであったが、老境を悟った今は精読なのである。　だから、今月初めから原尞の長編５作品を全部読み直してみた。　読み応えがある。いわば至福の時である。　小説の基本は今更ながら、形より入り、神を細部に宿らせることにある。原尞は、それを忠実に守り、手抜きを一切していないことが分かる。　考えてみれば、おいらは小説作法を吉行淳之介に学び、ストーリなどの構成は高村薫から教わった（と勝手に思っている）。しかし、「ミステリーの神髄はハードボイルドにあり。原尞以外、師にあらず」と今回改めて感じた次第である。　原尞には遠く及ばないが、おいらは今、再び長編にチャレンジし始めている。　悪友であるTさんがおいらに云った、「素質があるのに、それを発揮しないのは悪だ」という叱咤激励に応えようとしているのである。どこまでうまくいくかは分からないが、原尞の小説が身近に感じている今、毎日が新鮮であることは事実である（この項終わり）。　なお、申し訳ありませんが、来週は黄金週間ということでこのブログもお休みをいただきます。５月１０日（月）より再開する予定です。

  April 30, 2021

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  ワクチン予約は電話がつながらない

  ワクチン予約は電話がつながらない　神奈川県某市に居住するおいらと愚妻宛に先週水曜日（２１年４月２１日）、コロナワクチンの予約票（なぜかクーポン券と呼ぶ）が届いた。　噂のワクチンである。テレビでも騒いでいるので「お～、『根岸の里の詫び住まい』の老夫婦にも早速届いたかのぅ～」と、それなりに感動を覚えた。　封書を居間の机の上に一日放置しておいたが、それでも「一応予約すべぇ」と思い、コールセンターに電話した。すると、「受付開始は４月２６日（月）午前８時４５分から」との自動音声が聴こえてきたのである。　実は、おいらはこのワクチンを打つかどうかで真剣に悩んだ。　なぜならおいらはインフルエンザの予防接種で二度も接種部分が腫れあがったのである。２回目などは予防接種した部位が広範囲に渡って盛り上がったのである。熱は出なかったものの半日休んでいたことを思い出す。　こりゃ、ワクチンはトラウマになるわな。　そこで昨年、おいらは現在の主治医にその旨を伝えてコロナワクチンを打つことの是非について相談したのである。副反応をどう判断するかである。だが、微妙な答えしか返ってこなかったのである。　仕方がないよ。当時のデータと情報量は少なすぎて、医者でも判断ができなかったのである。特に、過去にはワクチン禍もあり、重症化すれば死亡する恐れも喧伝されていたからである。　ところがデータも蓄積され、重大な欠陥もなさそうとあって、おいらも「やれやれ、ワクチンは打つしかないか」と思い始めたのである。　歳を取るとあっと云う間に今週の月曜日がやってくる。早朝、おいらは指定された電話番号をダイヤルした。　予想どおり、通話中である。　ま、こんなものかと思い、数分後に再びダイヤルを回す（実際は再通話のボタンを押すだけだが）。再び、通話中。　案内をよく見ると、フリーダイヤルと有料の２通りの電話番号がある。交互にかけたが全て通話中。　これを昨日までの２日間繰り返したが全て通話中！　呆れかえった。　市にやる気があっても、電話がつながらないというのは客観的にはやっていないのと同じである。　が、思うにこれは市役所が無能だからではなかろう。　そういうふうにしかさせていない、時の政府の問題であろう。　だって、１回目の緊急事態宣言を出して既に１年以上も経過しているのだよ。　その間、これだけ猶予があったにもかかわらず、どうしてコロナ病床が増えていないのだろうか？どうしてワクチンの予約さえ取れないのだろうか？　それは、政治家が無能だからと云わざるを得ない。　だが、政治家がもし無能ではないとしたら、それにはもっと深い根があると思わなければならない。日本の既存のシステムそのものがもう限界かも知れない。

  April 28, 2021

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  強くなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない（前篇）

  強くなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない（前篇）　云わずと知れたフィリップ・マーロウ（Philip Marlowe）の名言である。　思えば、こういう科白のある小説に憧れてレイモンド・チャンドラー（写真上）を読み漁った。フィリップ・マーロウは、チャンドラーが生み出したハードボイルドに登場する私立探偵である。　だから、往年のハードボイルドの名作はチャンドラー以外にもかなり多くを読んだと自負している。そのほとんどは邦訳であったが、紐育駐在のときには原書のペーパーバックが安く手に入るので、当時は原文でもよく読んだことを思い出す。　さて、チャンドラーの小説がいいのは、「強くなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」（「プレイバック」）などの心に残る名言がさりげなく小説の中にちりばめられていることである。　作中のヒロインから、「あなたの様に強い(hard)人が、どうしてそんなに優しく(gentle)なれるの?」と問われての返答である。　痺れるのぅ～。　無意識のうちにチャンドラーから人生の生き方を教えてもらっているのである。　余談だが、この原文は「If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」である。　この訳にはいろいろあるが、清水俊二の「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」（「プレイバック」早川書房、1959年10月）が最も原文に忠実な訳かも知れない。　ところが、こういうハードボイルドの小説には日本ではなかなかお目にかかれない。　だが、諸兄、ご心配めさるな。日本にも「原尞（はら　りょう）」という作家がいる。　和製レイモンド・チャンドラーと云っては云いすぎかも知れないが、原尞の作品にはフィリップ・マーロウを連想させる沢崎という私立探偵が登場する。　この沢崎に痺れて、おいらは「原尞中毒」になったのである（この項続く）。

  April 26, 2021

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  佐々木四郎高綱って知ってるかい

  佐々木四郎高綱って知ってるかい　おいらの戯言である。　実家の親父の山のことをカキコしたので、親父の口癖を云う。　親父から直接聞いた記憶はないのだが、末弟によると親父が酔って決まって云う科白に「我が家のご先祖様は、佐々木四郎高綱である」というものがある。　おいおい、あの「佐々木四郎高綱」かよぅ。　しかし、調べてみるとその可能性がないとは云い切れないわな。　佐々木四郎高綱は、広島の当時の奥座敷ともいうべき島根県松江市浜乃木にある善光寺の開基と伝わっている。　そこには高綱が背負ってきたという銅像阿弥陀如来立像(重要文化財)が安置されている。そのほかにも、境内には高綱の墓が存在し、高綱の縁故により末裔を称した乃木希典の遺髪塔もあるのである。　おいおい、乃木希典まで出てくるのである（乃木希典は、佐々木高綱の子孫）。　そもそも、佐々木高綱は鎌倉時代の武将。詳細は省くが、「平家物語」や「源平盛衰記」、さらには歌舞伎の「鎌倉三代記」で宇治川の戦いにおける梶原景季との先陣争いでの活躍が描かれる著名な武士である。　文治３年（１１８６年）に中国地方である長門、備前の守護へと任ぜられ、また同様に安芸周防・因幡・伯耆・出雲・日向などに恩賞地を拝領している。　つまり、親父の実家である広島の山間部と地縁がないわけではない。　それに、これは全く関係がない話しであるが、佐々木高綱の館は今の横浜市港北区鳥山町にある八幡宮付近にあった（写真上は、鳥山八幡宮）。　しかも、その愛馬「生唼」が港北区鳥山町のすぐ近くに馬頭観音（写真下）として今も祭られている。　何が云いたいかというと、末弟が広島から上京した最初の下宿が横浜市港北区鳥山町八幡宮付近の小机駅（日産スタジアム最寄り駅）付近で佐々木高綱の館は目と鼻の先であったのである。これは奇遇である。もはや因縁としか云いようがない。　しかも、おいらが１２年間横浜に住んだのも港北区である。佐々木高綱の館に車で５分とすぐそばである。　これも因縁である。　７年前の話しであるが、末弟と二人でルーツ探しのため佐々木高綱の館を尋ねようとして鳥山八幡宮と馬頭観音を尋ねたことを思い出す。　そのとき、あの世にいる親父が二人に同行していたような気分になったのである。　　今回も山の話しが持ち上がって、親父が我々の前に出てきたと思う。　先祖を敬うというのは、実はそういうことかも知れない。

  April 23, 2021

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  山持ち（後篇）

  山持ち（後篇）　とまあ、以上のような経緯で今回山の手当を行うことにしたのである。　前篇で書いたように固定資産税だけは毎年かかり、何らかの対応をしておかなければ今後面倒が増すことは目に見えている。　さて、山の管理の問い合わせがあったので、役場の山林組合担当者に電話で聞いてみた。　短期的な対応と長期的な対応とについて、アドバイスを受けたのである。　短期的な対応は、今後山林の管理を役場または山林組合に委託することである。具体的には間伐である。３０年以上放置していたので、間伐を行う必要があろう。　次に長期的には、処分の検討である。おいらも二人の弟も終活を考えなければならない年齢である。　ただし、前編で述べたように山は簡単には売れない。役場に聞くと、山の隣の所有者なら購入する可能性がなくはないそうである。また、最近の事例では無人島を買うが如く、山をキャンプ場としてそっくり買う酔狂な御仁もいるという。　ところで、山には水源としての価値もある。最近、北海道の山を中国人が買い占めているという話しも聞く。しかし、おいらは中国人だけには売るつもりはない。それがおいらの良心である。　いずれにしても、５０年前に亡くなった親父の名義変更だけはしておいた方がよさそうだ。　そこで、兄弟三人で電話とメールで話し合うことにした。その結果、弟二人が管理するのは荷が重いと辞退するので、本意ではないがとりあえずおいら名義にしておくことにした。　無論、この山をいずれ処分するときは兄弟全員で話し合ってどうするかを決めようと思っている。実際、おいらの死後、妻や娘がこの山を管理するとは思えない。したがって、生前に処分しておくのが正解かも知れない。　ただ、処分するとなるとご先祖様は落胆するだろうなぁ。いや、それも時の流れなのかなぁ。終活は難しいのぅ（この項終わり）。

  April 21, 2021

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  山持ち（中篇）

  山持ち（中篇）　おいらを含め兄弟三人はいずれも広島県のF市生まれでF市育ちなのだが（正確に云うと親父が県庁に勤務していたので、転勤のためおいらは小学校を３つ通った）、親父の実家が広島の山間部だったのである。　だから、山持ちなのである。思い出すのは、おいらが高校３年のときであった。　親父がおいらと実家に帰省したとき、珍しく「山を見に行こう」と云って、半日がかりで親父が山に連れて行ってくれたのである。　父によれば、祖父は山持ちで今では４つの山しか残っていないが、昔は山を多数所有しており羽振りがよかったという。　おいらの祖父は地元では名士で旅館を経営しており、屋号もあった。しかし、その祖父は晩年、胃ガンになり、当時高価だったモルヒネを購入するために山を処分したので、残ったのが今の山である。　今から思うと親父がおいらに山を見せておこうとしたのには理由がある。親父はそのときすでにガンを発症しており、無意識のうちに終活をしていたのだろう。　おいらも親父に連れられて一緒に山を周遊したときのことを思い出す。　親父がおいらを一人前の息子としてみてくれたことが嬉しかったのと同時に当時のガンは死に病だったので、子供心に親のガンを心配しながら山を見て回ったのである。だが、今では肝心の山の場所はすっかり忘れている。およそ５０年前のことである。　余談だが、私の親父はハイカラ好きで（裏を返せば田舎がイヤで）日大に進み、内務省に入省した。東京に出ていたのである。ところが広島に原爆が落ちたのである。実家を継いでいた長男（当時、広島県庁勤務）が広島市内で原爆で亡くなり次男である親父の人生も変わる。　祖母の面倒を見るために広島に帰り、広島県庁に勤務することになった。　そういうことを知らないおいらは中学生くらいまでは盆と暮れに実家に行くのが愉しみで、実家の二階（結婚式場にもなっていた）で弟と一緒に遊んでいたことをよく思い出す。　実家には、蔵もあった。だが、川沿いに建てられた旅館（裏の川沿いから観ると三階建てだが、道路に面しての二階、三階は地上二階建てとなる）だったので、昭和４０年ごろの水害で川沿いの一階が流出するという被害に遇う。親父も県庁勤めのため実家には滅多に帰れず、その後、昭和４８年１月に４９歳の若さで鬼籍に入る。　したがって、その後の実家の維持は母の手に委ねられ、最低限の管理だけとし、老朽化が進んだこととその後再び発生した水害で家屋が甚大な被害を被ったため更地にした。　その母も平成２６年９月に他界した。父の実家の山と宅地は、その後、手付かずで現在に至っているというのが歴史である（この項続く）。

  April 19, 2021

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  山持ち（前篇）

  山持ち（前篇）「山持ち」である。　意味が分からないと思う。そう、山を持っているのである。　ところが、これが始末が悪い。　価値があれば財産だが、山は（当たり前だが）宅地ではない。木を植えて育てて切ってナンボである。結果をすぐに求める現代とは程遠い世界である。だから、買う人はいない。買う人がいなければ値が付かない。だから、価値がない。　何が云いたいのか。　先日、おいらのところに某山林組合から問い合わせがあったのである。　内容は、「今、お持ちの山林をどう管理しておられますか。また、今後はどう管理されるおつもりですか」というものである。　う～む、おいらは唸ったのである。　自慢ではないが、山の管理は何もしていない。記憶をたどれば、３０年前ごろに母が木を切ったと連絡をしてきたことがある。「少しお金が入ったので送金するよ。兄弟三人ともに送るよ」という内容であった。　おいらがまだ働き盛りのころである。母もまだ還暦のころだろうか、その当時、親父の残した山を管理していてくれたのだ。　だが、全く興味がないのでそのままにしておいた。実際、山の名義は親父のままであり、母の亡くなった今に至るまで、放置してあるので未だに親父名義の山に固定資産税がかけられている。　で、問題の所在である。　おいらは古稀を超えた。母は既に他界している。三人兄弟の一番下も今年還暦となる。このまま座して何もしなければ、おいらを含め誰かが亡くなることになる。そうなれば、将来この山林を処分しようにも名義変更の手続きが面倒になるのが目に見えているのである。　だが、誰の名義にすればよいのだ（この項続く）。

  April 16, 2021

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  僕の髪が肩まで伸びて

  僕の髪が肩まで伸びて　おいらが２１歳のときによしだたくろうの「結婚しようよ」（作詞作曲、吉田拓郎、７２年１月、CBSソニー）が大ヒットした（余談だが、拓郎はこの年の６月、軽井沢「聖パウロ教会」で歌詞そのままに四角佳子と結婚式を挙げている）。　当時は学生運動も下火になっていて、こういう歌が流行っていたのである。　それはなぜか。当時、髪を伸ばすということは反体制の象徴であったように思う。若者は髪を長く伸ばすことによって、体制に組み込まれることを拒絶しようとしたのである。　ところが、この歌はそういう反体制とは別の次元で、新しい世界観を作ろうと聞こえたのである。軟弱かもしれないが、好きなことをしていてもいいじゃないかというアピールが強烈に若者の心を捉えたのである。　実際、阿久悠は「フォークの精神性にはプロテストがあって、当初は、ゲバ棒をギターに持ちかえたかと感じるほど、過激に反社会性を訴えるものが多かったが、誰も彼もがギターを持って自分の歌を歌い、底辺がひろがるにつれて、抵抗の要素は失せて行った。　見事に社会に安心され、認知されることにもなったが、『結婚しようよ』は、そうなることのシンボル的な歌ではなかったか（阿久悠「愛すべき名歌たち」９９年、岩波書店）」と論じている。　さもありなむ、である。　おいらも当時は心情左翼であり、社会のあり方に疑問を持っていた一人ではあるが、髪を伸ばすことはなかった。単純にカッコいいとは思わなかったからである。　それから５０年。　よもやおいらが肩まで髪を伸ばすとは思わなかった。理由は簡単である。コロナで床屋に行かなくなったからである。　手帳をみると、昨年の２月末に床屋に行ったきり髪を切っていない。１４か月間髪を伸ばした勘定になるので１か月１センチとして１４センチ伸ばしたことになる。　普段はミッキーカーチスのようにポニーテールにして後ろで髪を結んでいるので違和感はあまりない（ただし、ちょいワル親父に見えなくもない）。だが、ポニーテールを解くと芥川賞作家の又吉直樹のようにもなる。　しかし、肩まで届くと不便なことが多い。第一、洗髪が面倒である。次に髪を手入れしておかないと髪がもつれる。　また、稀にではあるが、髪が口に入る。これは厄介である。　したがって、そろそろ年貢の納め時である。　断髪するべか。いや、その前に写真館にでも行きスーツ姿でビシッと決めて記念撮影をしようかと現在思案しているところである。

  April 14, 2021

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  不適切思想の自由

  不適切思想の自由　産経新聞で欠かさず読んでいるコラムが「花田紀凱の週刊誌ウオッチング」である。　今や新聞は広告紙になり下がり、スクープは週刊文春か新潮にたよるしかなくなった。野党などは文春と新潮が発売される木曜日まで質問を待つというテイタラクにまでなっている。　そういうわけでもないが、週刊誌はアンテナの役目を果たし、その中でも「花田紀凱の週刊誌ウオッチング」（毎週土曜日掲載）はその週に発売された週刊誌の気になる記事を小気味よく紹介してくれるので重宝している。　そこで、今回（２１年４月１０日）は特に目に留まった記事があったので、そのまま転載する。　事案は、渡辺直美トンデモ事件である。事の本質を見事に突いている。「佐々木氏の「トンデモ案」は、公に出される事なく内部で否定されたのだから、（中略）組織における『良識』のブレーキが健全に作動したと考えてよかろう。　そうすると問題は、そういうことを他人に言ってはいけないのか、またそもそも考えてはいけないのか、になる。　広告業界なんて、非常識なことや不謹慎なことを考えるのが仕事みたいなものではないかと思うが、そういうのを発想から根絶やしにして、商売が成り立つのだろうか」「男女の性別や容姿による差別も、『考えることさえ許されない』ほどの絶対悪なのか？　それを口に出したり、メモに書いたりしたのを暴き立て糾弾するのが正義だとしたら、おぞましき密告社会とどこが違うか。　そのようなディストピアは、２億台を超す監視カメラをもつ中国のことかと思っていたが、日本にもまた出現するのだろうか」（里見清一日本赤十字社医療センター化学療法科部長の連載コラム「医の中の蛙」の「『不適切思想』の自由」から抜粋）　我が意を得たり、である。　この事件は何だかきな臭いと思ったが、ある種の権力闘争によってメモが使われただけのことであろう。筋悪である。

  April 12, 2021

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  菊池の名誉エラー

  菊池の名誉エラー　普通の２塁手ならヒットになるあたりだが、セカンド菊池ならそれをアウトにする。　しかし、菊池でも捕れない球がある。それが菊池ならエラーになるようだ。上の新聞記事（２１年４月７日付産経）はその証左である。　事案はこうである。　４月２日の横浜戦（横浜スタジアム）８回裏２死１、２塁のときであった。　横浜の1番桑原のたたきつけたゴロに対し、菊池がセカンドベース寄りの高いバウンドを弾いた間に桑原が１塁を駆け抜け、エラーが記録されたのである。　これを詳しく述べると、「桑原が叩きつけた打球は、ジャンプした塹江敦哉のグラブを越えて大きくバウンドした。菊池は猛チャージ。　ほぼセカンドベースの横あたりで、ジャンピングスローを試みようとダッシュしながらグラブを差し出したが、打球はグラブの土手に当たって前にこぼれた。　すでに俊足の桑原は一塁ベースの手前まで迫っており、たとえ捕球できてパーフェクトな送球があったとしても一塁でアウトにできたかは微妙な打球だった」（4月3日付「Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE」より）。　これだけならこのエラーを見逃すところだが、菊池はこのエラーによって連続守備機会無失策記録を「５６９」でストップさせた。　この記録は偉業である。実際、昨シーズンは５０３回の守備機会を無失策で終え、２塁手として史上初の「守備率１０割」を達成していたのである（８年連続のゴールデングラブ賞受賞）。　これについて、ネット上では「菊池だからこその名誉エラー」「無理に突っ込んでいなければただのヒット」などと判定を疑問視する意見も少なくなかった。　おいらは思う。　最終的には公式記録員の判断に委ねるが、菊池は連続無失策記録を続けているほどの名手である。だから、積極果敢にチャレンジしアウトにしようとするのでる。　しかし、普通の二塁手ならそういう冒険はしない。待って打球を捕ればよい。エラーにならないからである。　だから、これは菊池エラーなのだ。だが、そういう公式記録員の判断で本当にいいのだろうか。菊池もエラーをしない名手になりたいと思えばチャレンジしなければいいことになる。　だが、それでは野球は進化しない。何より面白くなくなる。　今回の日本野球機構の判断は、プロ野球のファンを失わせるものである。だから、野球が面白くないと云われるようになる。

  April 9, 2021

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  震源地は、相模湾

  震源地は、相模湾　先週のことだったと思う。　相模湾を震源地とする小規模な地震があった。おいらの住んでいる神奈川県某所の温泉地でも少々揺れたのである。　おいおい、相模湾！？　嫌な気分になる。　それは、最近、地震が多いような気がしてならないからではない。相模湾を震源地としたからである。　諸兄もご存じのとおり、関東大震災の震源地は相模湾であった。だから、東京のみならず横浜、神奈川全域まで甚大な被害を与えたのである。　ゆえに関東大震災と銘打ったのである。「天災は忘れたころにやってくる」　おいらが現在住んでいる場所は丘陵地であり、前回の大震災では被害を被らなかったというから地理上の問題は少ないと思う。　かも知れないが、そもそも関東大震災が再発すれば、日本は終わりである。東京一極集中だからである。　こういう国は珍しい。リスクマネジメントができていないように思われる。　だから、関東大震災が起これば、経済は壊滅（円は暴落、株は紙切れ）となってもおかしくはない。　無論、政府を始め、賢明な企業がそれへの対策を講じていない分けがないが、手ぬるいのではないかと心配してしまう。今はコロナで国全体が麻痺しているからである。　関東大震災対策をおろそかにしているとしたら、新たな国難となるのは目に見えている。　だが、おいらにできることは限られている。　自分と家族を自分で守ることである。具体的には、家族の避難経路の確認と一週間分の水および食料の確保である。加えれば、車のガソリンをいつも満タン時の半分以上にしておくこと、災害時の備蓄（風呂桶を満水や乾電池の確保ほか多数）などに尽きる。　嫌な時代になったものである。

  April 7, 2021

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  海老名サービスエリアは満杯

  海老名サービスエリアは満杯　所用があって先週の金曜日、東名を使った。　高速に入るとサービスエリアに立ち寄ることにしている。　サービスエリアやパーキングエリアはトイレを使うだけではもったいない（もっともトイレは最新設備だから、トイレの進化系を知るにはもってこいだが）。　海老名サービスエリアに入った。　あいかわらずそこは柳田国男の使う「ハレ（晴れ、霽れ）」の場所であった。　解説は不要と思うが、「ハレ」と「ケ」とは柳田國男によって見出された、時間論をともなう日本人の伝統的な世界観のひとつである。「ハレ」は儀礼や祭などの「非日常」を表し、「ケ（褻）」は「日常」、つまり普段の生活である。　ハレの場とケの場は厳然と区別され、ハレとケでは衣食住や振る舞い、言葉遣いなどが異なるものとされた。　ま、そういうシチメンドクサイことは抜きにして、サービスエリアはハレの典型であり、今や一大レジャーランドに変容している。　だから、大人も子供もお祭り気分になるし、お金をチャリンチャリンと落とす場所にもなっている。特に、海老名サービスエリアは東名で最初のSAだからテレビのワイドショーでもよく取り上げられているのぅ。　いや、今回云いたいのはそういうことではない。　平日（午後３時ごろ）にもかかわらず、駐車場はほぼ満杯、サービスエリアの建物内も人でごった返していたのである。　おいおい、コロナはどうなっているのだ。　車は他人と非接触なので電車と違いコロナとは関係ないはずだが、サービスエリアは盲点である。　残念だが、当分はサービスエリアに立ち寄るのをあきらめた方がよいのかも知れない。

  April 5, 2021

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