ツブコの茶店

ある日ノダさんが、コイシに芋むきを手伝わせながら言っている。

「お前、メッツの新庄に似てるな」

「あ、はい、よく言われます」

「だろ。新庄はいい男だ」

「へ、は、ぁはい」

「なに遠慮してんだよ、ばか」

「あ、う、う」

「いーんだよ。似てたって。

　モ・ン・ダ・イ・は、　　だ」

と、ノダさんはイモと包丁を同時に置くと、コイシの薄い両肩をつかんで、

「新庄の根性ッ！　　　ナッ

そこまで似てこそホンモノだぞ、おまえ」

と言った。

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なにがホンモノか、根性の内容がどんなコトなのか、よくわからないが、

ノダさんのなにか熱いものが、聞いている私のほうにも、伝わってくる。

なんだかんだといいながら、ノダさんはコイシの面倒見がいいのだ。

ＯＦＦの日に海釣りに連れて行ったりもしているそうだ。

おとうさんと二人暮しのコイシが、ひよひよと迷子のコのように

たよりなげに見えるのかもしれない。

コイシも特異の嗅覚で、そんなノダさんのまわりをうろうろしている。

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ノダさんはふたこと目には

「コイシぃ、おまえの少年時代はあと２年かぎりだぞ」　という。

それは、（いいなあ、おまえはまだ少年なんだ）と、

過ぎ去った自分の少年の日を、なつかしんでいるようにも、

聞こえる。