ツブコの茶店

M劇場の幕が開きました。

年に一度の＜伝統江戸芸・かっぽれおさらい会＞です。

新人も、上級組も、みんなこの日を目指して、精進してきたのです。

私は初出演の家族らしい人たちに混じって、久しぶりに客席に坐りました。

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新人の家族は、写真を撮ったり、声援を送ったり夢中です。

孫や娘、母や父、あるいは配偶者のための拍手が湧き上がります。

その拍手は、絶えず会場のあちこちから、パラパラ、ぱちぱちと、

灯りのように、明滅しています。

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舞台をみていると、踊る人にもいろんなタイプがあるのに、気づきます。

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　”ごらん、わたしはウマイのよ”

　”ワタクシ、手順に、ひとつの狂いもないよう、努力一筋でまいりました”

　”さあどーだ！”　
　
いろいろです。　
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だれだって、ヒトは（ジブンの花を咲かせたい）のだと思いました。

　　　　　　　　　　　　　　　　
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さて、プログラムは★桃太郎★になりました。

舞台中央には、小さなお婆さんが、立っています。

若い踊り手が二人づつ、お婆さんの両脇にいます。
　　　　　　　　　　　　　　　　

曲が流れ、四人は踊り始めました。
　　　　　　　　　　　　　　　　　
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♪むかぁし～　　むかぁしぃ～
　　　おじいさんと～、
　　　　おばあさんが～、　　あーったーとーさハァア　キタコラ　
　　　　　　　　　　　　　　　　


踊っているのはかねてうわさの、九十何歳の人でした。

♪おばあさんは、川へ～～～～

お婆さんは、洗濯に行きます。

大きな～桃が～、、、、、

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お婆さんは桃をひろいます。

お婆さんはお婆さんのままで、おばあさんを演じます。

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両脇の二人は、上級の中でも、選り抜きの人たちのようです。

ふたりはお婆さんを護るように、踊っています。

お婆さんは、青い色の浴衣に、

風月を経た流木のような色の帯をしています。

お婆さんは、ほとんど動かない踊りを、おどります。


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流木が、

砂浜で、波の音を聞きながら、

ときどき訪ねてくる波に、かすかに揺れるように

おどります。


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お婆さんは、青い大きな花になって、踊っています。

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ひとは歌い、

ひとは踊ります。

それは、花の咲くのに似ています。


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無心のとき、

ひとは咲くのだと、おもいます。