ツブコの茶店

、、、、、、きのうのつづき

店に来たのは三ヶ月ぶりくらいだが、これが半年ぶりでも

三年ぶりでも、

「あ～、きたのぉ～～」　と、

髭もじゃ顔のハスノミさんのあいさつは、変わらない。　　

私も、いつも、

「う～ん」

と返事するだけだ。

　　　　　　　　　　　　＊

バサラはアジアングッズ店特有の、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

洗っていないような手で＜アジア＞を適当に鷲掴みにして、

”ドン!”　と置いたような、気配がない。　

それらのモノたちは、ぜんぶ、

いちどハスノミさんの精神のフィルターを、通っているような気がする。

だから、どれもみんな、どことなく、キチンとして、すがすがしい。

モノたちが、なんとなくうれしそうに、

安心してそこにいるような、感じがする。

ハスノミさんの”もわぁ～～”が、店全体に、

かすかなお香のかおりといっしょに、漂っている。

　　　　　　　　　　　　＊

そんな店の中を見ていたら、ハスノミさんが側に来て、

「な～にぃ～、きょうは～」　と、言った。

「うーん。探してんの。　（どのヒトが呼んでるのかな？）って」

「あ、ソレみっけにきたんだ～」

ハスノミさんはそう言って、持ってきてくれたコーヒーを棚におくと、

（じゃまをしないように）というみたいに、さっと、引きあげて行った。

　　　　　　　　　　　　＊

やっぱり、最初に目に入ったモノにきめた。

ファスナーのついた四角いビーズがいっぱいついた、お財布だ。

　　　　　　　　　　　　＊

トルコ色のビーズと銀ビーズにかこまれて、

１頭の象が、横向きにぼ～っと立っている。

象は、蒸しパン色の平たい縫いぐるみで、

体中に、くすんだスパンコールをつけていた。

　　　　　　　　　　　　＊

「コレにする」

とハスノミさんに見せた。

「あ、それね～」

「うん。この象、雲みたい。　　　さかさにすると、グローブみたい」

「あはっ、そーだね」

「点々マナコが、いいでしょ。ポケーッとしてね。

この象、宇宙からいま、うまれたばっかりなんだよ。

うん、コレだよ。コレが呼んでたんだぁ。

ワーイ、みっけたー！」

「コレがソレかあ」


ハスノミさんの煙声が、青と銀のビーズ星雲のなかに

もわぁ～～～～～～っと、まざって行った。