ツブコの茶店

アムのおはなしを、もうひとつ。

＜ポットが飛んで＞

　わ―い、今日は日曜日。

日曜日は、早くから病院に行きます。

お昼ごはんを、お母さんと妹といっしょに、食べるのです。

妹のちょうしがいいときには、原っぱにピクニックに行ったりします。

学校はお休みだけれど、ランドセルをしょって行きます。

ランドセルには、おばあちゃんが作った、おべんとうとおやつが入っています。

妹に見せてあげる絵本や、わたしの宿題も、入っています。

　おばあちゃんが、スープのポットを持ってきました。

そうして、ポットをわたしの肩からななめにかけて、服ごとポンポンとキメ、

「ころばないようにね。よろしくね」と言いました。

わたしは大きな声で、「行ってきまあ―す」と言いました。

　　　　　　　　　　　　　　＊

　朝の原っぱは、つゆがいっぱいです。

歩くたびに、パサーンパサーンと、とびちって

キラキラ　チラチラと、光ります。

草が高く生えているところを歩くと、

つゆはシャワーのように、顔にパチパチとかかります。

すすきやキイロいブタクサの花が、わさわさとゆれます。

　あれ？虫たちがいません。

暑いひるまの原っぱでは、わたしが歩くと、ばさばさっと飛び上っり、

小さい虫たちが、ふわーんと出てきたのに。

おひるねをしているのでしょうか。

目が覚めたら、草つゆをいっぱい飲むのかな。。。。。。。


　　　　　　　　　。。。。。。。。。。。。


♪草つゆジュースはおいしいな―
　わたしのコップは大きなコップ　　　
　む～しのコップは小さなコップ

　
　　三角歩きで原っぱを行くと、いつも歌が出てきます。

はじめはこころの中だけで歌っているのだけれど、

だんだんむちゅうになって、いつのまにか、声で歌っています。

　♪むーしのコップは小さなコップ
　　ビーズみたいな小さなコップ
　　ジュースジュースのコップップゥ～～

～～～～～～～～～


　お母さんに歌ってあげようっと。

　と、かけ出したとたんに、ドッタ―ン！と、ころびました。

　　　　　　　　　　　　「わっ！」

　　　　　　　　　　！！！！！！！

ポットが肩からはずれて、原っぱとわたしはごちゃごちゃまざって

お団子ロケットのようになりました。

（ワァーッ、宇宙旅行！）

と、思ったとたんに元通り。

わたしはランドセルごと　”すたっ”　と起き上って、

ポットが飛んで行った方に行きました。

すると、ブタクサのしげみに、ポットの赤いベルトが、

くねくね横たわっているのが、見えました。

わたしは、

「助けに来たぞ、がんばるんだ」

と言いながら、ベルトをずるずるひっぱりました。すると、

　　　　　　　　　　　　”コチン”

と、ポットがなにかに、ぶつかる音がしました。

見ると、ポットのそばに踏み台みたいなものがあります。

わたしはしゃがんで、ずりずりとワニ歩きをしながら近づいて行きました。

　　　　　　　　　　　　　＊

　それは、小さなテーブルでした。

テーブルは、太い針金みたいな短い４本の足があって、

足の先には、赤い四角いものが、くつみたいにはまっています。

すごーい！　　　　＜三角歩き、大情報＞です。
　
きっとお母さんもビックリです。そうしてきっと、

「今日のおひるはそこでピクニックしよう」

と言うにきまってます。

　　　　　　　　　　バンザーイ！

　　　　　　　　。。。。。。。。。。。。


　気がつくと、おしりがつゆでつめたくて、運動ぐつもぬれています。

　　　　　　　　　　「急がなきゃ！」

わたしは、ポットのベルトを、胸のところでぎゅっとおさえ、

　　　　　　　　ばっさピョン、ばっさピョン、

と、病院までいっきに、走って行きました。