ツブコの茶店

　
「おはようございまーす」といって

Ｕさんが入ってきた。

（おや？

いつもとちがう。　　　ナニか、ちがう。


どこがちがうのか・・・　　　　　　　　　

・・・・・そうか、Ｕさんのほうから挨拶してる。


えーっ、どうしたの？）



ひと月ぶりに、お稽古にいったときのデキゴトだ。

　　　　　　　　　　　　　＊


　Ｕさんは、同輩後輩を問わず、自分から先には、挨拶をしない人だ。

しかし、Ｕさんに挨拶をおろそかにする後輩には、うるさい。

わざわざ側に行って、

「あら、わたしあなたにご挨拶、まだでしたわね。ごめんなさい。

”おはようございます”」

などと、自ら挨拶して、キョーイクテキ・シドーをする。


あちこちから、”おはようございます”の声がかかるときは、

「”あ”」　「”は”」と、

と、笑顔で、鷹揚に頷く。

　　　　　　　　　　　　　＊

私は、後輩だけど、いつもおはようの合唱には、加わらない。

顔が合ったら、ふつーに挨拶するだけだ。

しかし、Ｕさんの芸は、華があってスキだ。


　　　　　　　　　　　　　＊

Ｕさんが、

今日は自分から、サワサワと挨拶をしている。

しかも、どことなく優しい。


・・・このひと月の間に、このひとに、何があったのだろう？


　　　　　　　　　。。。。。。。。。。


とってもうれしいことが、あったのだろうか。

ニンゲンが進歩したのだろうか。

それとも、ナニカが解消して、もう威張らなくても、ココロが

満たされたのだろうか。

なにかわからないけど、ちがうＵさんになっている。


　　　　　　　　　。。。。。。。。。。


Ｕさんが窓際の私の隣にきて、着替えはじめた。

向こうに建築中のマンションが見える。

「えーっ、もうほとんど、できちゃってる～」

「そーよ。ツブちゃんが休んでる間に、ずいぶん、工事進んだわよ。

ホラ、見て！」

言いながら、

Ｕさんは、衣装をはおったまま、私のそばに来た。

「ひと月ぶりに来たら、いろいろずいぶん変って、ビックリ！」

と、私は外を見たまま、大きな声で言った。