ツブコの茶店

猫のくすりをもらいに、動物病院に行った。

待合室にいると、外で車が止まる音がして、中年の男の人が入ってきた。

先生が出てきて、容態をきいている。
　
「オカダさん、どうですか、わんちゃん」


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「はあ～　　咳がひどくて、、、

かなり、、、、、、

、、、、、、ダメか、なあ、、、、」

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オカダさんは、青いつなぎの作業着を着ている。

電話で頼んでいた薬を大急ぎで持って帰り、

フィラリアにかかっている、年老いた犬に飲ませてから、

仕事場にもどるのだという。


　　　　　　　　　　　　　
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「、、、、苦しがっててねえ、、、、、、

もう、、、、、、、、」

「うーん、だいぶながいからねえ」

「、、、、、、いけない、かもしんないですわ、、、、、、」

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オカダさんはひとこと言っては、何回も「はあー」とため息をつき、

先生の顔を、力なく見上げる。


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その犬を、先生は一度も診たことがないのだそうだ。

どういう事情でなのか、わからないが、

オカダさんは、”とても、遠くから”来ているのだという。


　　　　　　　　　　　　　＊


　オカダさんは、くすりを作業着の内ポケットに深々としまうと、

だまって先生に頭を下げ、出て行った。

看護婦さんがオカダさんの背中に、「おだいじに～」と、小さな声で言った。

車のドアを閉める音が、聞こえた。


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ダメとわかっても、愛犬のために、なにかしないではいられない。

・・・薬をもらうため、遠い道のりを往復する・・・

それが、いまオカダさんにできる、せいいっぱいのことなのだ。



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猫のくすりができるのを待ちながら、

私はいつしかオカダさんに、自分のココロを重ねている。