高い夜から
高い夜に置き去りにされた思いが
綴った筈の気持ちが取り消されていた。
消えてしまう運命なら
それはきっとそれだけの位置づけで
とても大事に思えていたつもりだったけど
それだけのものなんだと思おう。
誰かが云っていた
人は忘れる生き物だと
命を繋いでいく選択の中で
忘れることが必要だと
心ではなくて身体が判断したなら
意識の外で忘れさせられたこともあるのだろう。
心が怯えると身体が動かなくなる
そんな体験とは反対の働きかけで。
地上から月は遠い。
なのに高嶺の月を私たちは
それぞれの所有のように身近に語る。
月からは見えない私たち。
消えてしまうことと存在し続けること
心と身体の距離は
月と地上の気持ちのように
計れない近さなのだと
届かない月を見て想う。