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秋月春風  ブログ版

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2014年08月15日
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カテゴリ:日常雑記
13,14日と夫家族と例年どおり過ごしていたのですが、その往路途中、夫と家族にお願いして、木彫家「しまずよしのり」氏の私設美術館に立ち寄りました。

ご自宅の一部を作品の展示場として公開していらっしゃるのですが、玄関の扉からして木製・ステンドグラス嵌め込み…と、既に異界への扉のような趣。
ちょうど作業場から戻っていらした島津先生と(作業場はプレハブで暑いので、早朝と夕方の時間帯に通われているのだそう)その扉前でばったりお逢いし、初めましてのご挨拶。
招き入れていただいた玄関内では奥様が、素敵な笑顔で迎えて下さり、そのあまりに優しい微笑みに、この時点で既に緊張とか遠慮とかを遠く彼方に吹き飛ばしてしまったワタクシでした。

写真OKと言う事であれこれ撮らせていただきつつ、二階の一番大きな展示場へ。
そこで34年間もの間、ずっと再会を望んでいた子に、ようやっと対面することが出来ました。

それは、芋虫を擬人化した、30センチくらいの高さの彫刻。
この子を初めて見たのは、当時出来たてほやほやだった隣市の動物園でした。
たまたま長距離バスの運転手を務めていた伯父が仕事で来ているというので、伯父の顔を見がてら遊びにいったときに、島津先生の作品展示が企画されていたのです。

島津先生は当時、昆虫を作品の題材に選んでいらっしゃり、数十センチの芋虫から、2メートル近い蝶や蚊、もっと大きな蜻蛉等が展示されていました。
その大きさに驚き、羽脈の美しさに見とれて…その最中、ちょこんと置かれたこの擬人化芋虫ちゃんの前で、私は動けなくなってしまったのです。

「おおきくなったら、ぼくは何になるのだろう…」

そんな添え書きと共に展示されていたその子が、私にはちいさな男の子が暗闇でぽつん…と、膝を抱えて、自分の未来に怯えて震えているように見えて。
胸がしめつけられるように痛くなって、涙がこみあげてきて。
ぎゅっと抱きしめてあげたい…そんな衝動を必死で堪えながら、私はその子と暫くの間向き合っていたのでした。

それからずっと、私はこの子と再会したいと願ってきました。
当時はインターネットなどありません。
作家さんの名すら知らず、かといって動物園に問い合わせをする勇気も出ず、ただ淡々と年月だけが流れていきました。

そして20歳の頃、やはり県内の別施設での展示の記事を、たまたま職場の新聞でみかけました。
そこでようやく、島津先生のお名前がわかったのです。

それでも、なかなかこの子とのご縁は繋がりませんでした。
観に行った展示場にその子は居らず、その約10年後に写真集の出版記念でデパートで展示が行われたときには、高熱を出して会場に行く事すら叶いませんでした。
夫に買ってきてもらった写真集にも、その子の姿は無かったのです。

それでも再会の夢をあきらめきれず、普及し始めたインターネット利用して、時折先生の名前を打ち込んでは検索をかける…という日々を更に10年続けました。
そして去年、自宅兼美術館を開設された事をとある画廊のHPで知ったのです。

どれだけ嬉しかったでしょう…!

それでも、展示されているのは未発表の新作が中心という事だったので、再会は難しいかなと思っていたのですけど……。


逢えたんです、とうとう……!!


もう本当に嬉しくて、写真を何枚も撮ってしまいました(^_^;)
私はフィルムカメラを使っているので、ちゃんと撮れているかどうかはまだわからないのですけれどね。

あの子は相変わらず、ちょこんと座っていました。
でも、前回の少し暗めの展示とちがい、明るいアトリエの中でみる彼は、怯えているというよりも、照れてはにかんでいるように見えました。

「何になっても、ぼくは『ぼく』だから…だからもう、怖くないんだよ」

そんな声が、聞こえたような気がします。


ひととおり見学させていただいた後で、奥様の淹れて下さった珈琲を頂きながら、先生とお話をさせていただきました。
その最中にも「『自分』をしっかり持つことが必要」というような内容に至りまして、

「ああ今日は、この言葉を聞く為にここに来たのだなぁ……」

と、改めて思いました。

自分を測るのに、他人を基準にしないこと。
自分の中に、自分の軸を持つこと。

ここ20年来の、私の課題です。
20年も取り組んでて、まだ改善しないのかよ?!…と自分でも思いますが、本当に私にとっては難しくて大きな課題なんです。

「でも、他人と比べているうちは、ずっと苦しいんですよね」

先生の言葉が心に沁みる、夏の1日でした。



今回は逢いたかった子との再会で胸がいっぱいで、新作にはあまり目と心がいかなかったように思います。
そしてそれを、とても後悔しています。
最近の島津先生の作品は、自然の中にいる妖精・精霊をイメージさせるものが多いです。
上手く言えないのですが…以前は「作品を造る為に彫っていた」のが、最近は樹に元々宿っていた精霊や妖精の姿を、例えば化石を発掘するように「ありのままのに、掘り出している」ように思えてなりませんでした。
何だか随分、生意気な言い方ですけれど……。
きっと見る度に、違うメッセージを受け取れるんじゃないかな……と、そんな感じがします。
なので、また時間をつくって再訪したい、その時には沢山の妖精さんや精霊さん達の話してくれることに、じっと耳を傾けてきたいな…と思います。

島津先生の公式HPはこちらです(携帯からは難しいかも)。
http://www.unpopu.com/

作品の一部と作業風景が、動画で観られます。
紹介されている工房は今は閉めてしまっていて、作品が見られるアトリエはトップページ記載の住所となります。
入館料は500円。
休館日は木曜日ですが、個人宅を改装されての美術館なので、来訪前には事前に連絡をいただきたいとの事です。
アポなし訪問だとお留守だったり対応が難しい場合があると思いますので、くれぐれもご注意ください。

最後に、再会の叶った子の写真を貼っておきます。
たとえどんなに可愛くデフォルメされていようと、芋虫・毛虫の類は駄目(>_<)という方は、スクロールしないでくださいね!


















ぼくは何になるのだろう.jpg





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最終更新日  2014年08月21日 20時59分47秒
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