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テーマ:小説書きさん!!(609)
カテゴリ:小説
みちるは怒りに任せて講堂とは反対方向に歩いたもののまだ学院内の構造は良くわからないのに気がつき立ち止まった。
そして一言。 「やっちゃったよ」 そう言って肩を落とす。 怒りに任せて物事をすすめる。 小学校でもそうだった。クラスメイトと些細な事でケンカになりみちるがクラスメイトに対して今回と同じように言ったのだ。 「じゃあどうすればいいの?」 クラスメイトはあの教師のように意地悪く笑いながらみちるの鞄を指して言った。 「その鞄に墨汁でもかけたら許してあげる」 この時点でいわゆるイジメに当たるのだがみちるはそんな事に屈するような子供ではなかった。同じクラスだった藍が止めるのも聞かず可愛らしいピンクの習字用具を入れる手提げに墨汁をかけたのだ。 そんな事を何回も繰り返しみちるは「変わり者」のレッテルを貼られて来た。 そしてみちるも自分ではわかっているのだが直せない”悪い所”なのだ。 (わかっているのになぁ……) 心の中で呟きながらみちるは近くの階段に座った。 すると後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。 「本当に『やっちゃったよ』だよ」 藍はあきれ顔でみちるに近づいた。 藍は肩を落としながらみちるの正面に行くと、みちるの肩をつかんだ。 「準備してきたものが役に立つ事になっちゃったよ」 そう言うと大きなため息をついた。 みちるは藍に向かってすまなそうな顔をすると、藍の顔を見上げて疑問をぶつけた。 「ごめん、藍。でも準備してきた物って何?」 すると藍は持ってきた大きい紙袋から美容室で使われる大きなケープと髪の毛を切るはさみ、そして真新しい制服の上着とブラウスを出した。 みちるはその中身に驚き立ちあがると、口をパクパクさせると藍に向かって 「あんた、私がこうすると予測してたの?」 そう大きな声で叫んだ。 「当たり前。一体何年一緒にいると思ってるの?ま、髪の毛切るまでいかない事を願ってたけど、あの男性教師に睨まれたのはマズかったね」 そう言うと苦笑いした。 そしてみちるに向かって 「とりあえず入学式にでなきゃね。叔母さんびっくりすると思うけど」 藍は手早く準備をすると美容師がするようにみちるへケープをかけて階段に座らせた。 みちるの髪の毛を切りながら藍は昨日の事を話し始めた。 「昨日さ、叔母さんと話してたんだよね、もしかしたらこうなるかも……って。だけど本当に予想通りになるとはやってくれるよ」 藍はあきれながら話した。 「あんたといると本当に退屈しないよ。むしろこっちを忙しくさせてくれてホント困る」 と言うとみちるの頭を軽く小突いた。そして 「よし、こんなもんだろ。プロじゃないからこれで我慢してよ」 と言うとみちるに鏡を渡した。渡された鏡の中には朝とは違うショートカットの「早瀬みちる」がいた。 みちるは足下に落ちている髪の毛を拾うと悲しげに呟いた。 「ごめんね。成人式までのばすって約束したのに」 そんな様子を藍はあきれ顔で見つめた。 「本当に謝ってもらわないと。一緒に成人式で髪の毛を結って着物で出る約束はこれで守られないわけだ。その約束を忘れて十年伸ばし続けた髪をいとも簡単にあんな事で切っちゃうんだから。あんたには呆れるよ。全く」 藍はそう言うと髪の毛を切る用具を紙袋の中に入れ、みちるに上着とブラウスを変えるように言った。 するとみちるは大きな声を上げて抗議した。 「え!!ここで?ここ外だよ?!」 しかし、藍は制服を差し出すと冷たく言った。 「自分が悪い。さっさと着替えれば問題なし。早く着替える!」 どうやらみちるの意見を聞き入れる気持ちは無いようだ。その藍の様子にみちるは諦めて着替えはじめた。 すると上から見知らぬ声が聞こえた。 「こんな所で着替えないでこっちで着替えたら?」 二人は上を見上げると、二階の渡り廊下から上級生と思われる女生徒がこちらを見ていた。 一年はブルーのリボンなのにその女生徒は赤いリボン。緑が二年生だから声の主は三年生のようだ。 二人はその女生徒を見ると顔を見合わせその人物に向かい 「ありがとうございます。そこにはどうやって行けばいいんですか?」 と声をあわせて言った。 すると女生徒は笑いながら二人に答えた。 「あなたたちの座っているその階段を上がればいいのよ。早く上がってらっしゃい。入学式がはじまるわよ」 二人は自分達の座っている階段を上へと歩き始めた。 階段を上りきると先ほどの女生徒が二人を待っていた。 身長は百六十五センチ前後。髪の毛は肩よりも少し下まで伸ばし、優しそうな顔立ちの人だった。 彼女は二人にむかって 「こっちよ」 と言うと教室と教室の間にある廊下にどうみても”不自然についているドア”へと向かっていった。 二人は何かおかしい、と思いながらもその女生徒の後ろについてそのドアへと入っていった。 「不自然についているドア」をあけるとそこは一つの部屋になっていた。無理矢理作ったようにみちると藍には思えたが、今は着替えが先決なのでそこは口に出さずに礼を言うとみちるは着替え始めた。 (っていうかここ渡り廊下だよね。無理矢理ドアつけて部屋にしてるみたいだけどいいの?) みちるはそんな事を考えながら手早く着替えをすませた。 そしてみちると藍は女生徒に礼を言うとはずかしそうに一言。 「講堂までの道教えて下さい」 と顔を赤らめながら頼んだ。 彼女はなんだそんなことかというような顔をすると二人の前に立ち、歩き始めた。 「お安いご用よ。講堂まで案内してあげる。ついてらっしゃい」 みちるはまだ女生徒の名前を聞いていなかった事に気づき 「あの、お名前を教えていただけますか。あらためてお礼に伺いたいんですが。」 と言うと女生徒は 「学校生活がはじまればすぐに私の名前はわかるわ。お礼がしたいならその時に来てちょうだい」 みちると藍は歩きながら顔を見合わせると今度は藍がその女生徒へ疑問をぶつけた。 「でも、大勢の生徒がいるのに本当にわかるんですか?」 すると彼女は自信たっぷりに笑いながら二人に答えた。 「絶対にわかるはずよ。安心して。さあ講堂についたわ」 そう言って立ち止まると二人に微笑みながら言った。 「入学式が始まるわ。それじゃあね」 女生徒はそう言うと立ち去っていった。 二人は女生徒へ向かい一礼すると講堂へと走っていった。 入学式が終り、二人は同じクラスだった事に喜んだ。 しかし朝の騒ぎについて、二人は担任の教師からこっぴどく叱られた。 あのさわぎになったのだから仕方がない、と二人は担任の言葉を受け入れた。 担任から開放され学校での1日が終り二人が帰路に着く時、学校の門の所で 上級生と思われる男子生徒が二人を待っていた。 その男子生徒の風貌は身長百七十五センチ前後。少しやせ気味で、肩まである髪の毛を一つに縛っていた。そして目尻の下がった瞳は何か強さを感じさせた。ネクタイは緑色でそれを見て二人は二年生なのかと考えた。 男子生徒は二人の目の前に立つと 「へー、これが部長の言っていたコかぁ。うん。なかなかいいね、面白い」 そう言うとみちるをジロジロとみて一人納得がいったというような感じでウンウンとうなずいていた。 みちるはその様子をみて男子生徒に向かい呼びかけた。 「あの……」 しかしその男子生徒はその声を遮りみちるの顔の前に手をバンと出すと 「聞くのは待って!明日来ればわかるよ。だから今はナイショだ」 そう言ってニヤリと笑った、 「じゃあ、明日学校で。じゃあねーん」 まるで嵐のようにその男子生徒は走り去っていった。 みちると藍は何も分からず、その場で呆然と男子生徒が立ち去っていくのをみているしかなかった。 そしてしばらくすると藍がボーっとしながらみちるに声をかけた。 「……みちる。帰ろ」 その言葉にみちるも答えた 「そだね。今日は疲れちゃった。また明日って言ってたし、また明日考えよ」 そういって藍の顔を見た。 どうやら二人の高校生活は「普通」のものにはならないようである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 10000文字超えたので2分割になってしまいました(^^;;; 修正版ですが、さらに修正を加える予定です。 まだまだ修正しますよ! さらに修正しました。 まだ修正部分あるかも。 人気blogランキング 気に入られたらクリックお願いしますvv お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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