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テーマ:好きなクラシック(2316)
カテゴリ:ヨハネス・ブラームスの音楽
名乗っておいて今ごろ読むとはなにごとかとお叱りを受けそうだが・・・。 ともかく,いつ買ったものかわからないくらい長い間本棚の間で埃かぶっていたこの本を引っ張り出して読んでみた。 シモンが初めてポールを誘ったコンサートで流れていたのは,小説の中でははっきりとは書かれてないが,間違いなくこの「ヴァイオリン協奏曲」である。 25歳のシモンは14歳年上のポールにこう手紙を書く。 「ブラームスはお好きですか?」 それは高嶺の花を誘うときに使う背伸びした若者のセリフだ。 ポールの恋人ロジェは浮気相手を助手席に乗せているとき,たまたまそのコンサートのラジオ中継を聞く。 その後ポールがその音楽会に行ったと知り,冗談めかしくこう訊ねる。 「ブラームスは好きかい?」 やれやれ,まさか君にそんな趣味があったとはね。 それは大人の感覚。 ブラームス?若いころはちょっとは聞いたけどね。 この小説はさまざまなことを語りかけているが,僕は小説を評することに慣れていないので,ここに書くことはやめておく。 ところで,ブラームスのヴァイオリン協奏曲。 サガンの表現を借りれば, 「ちょっと悲壮な,ところどころ,ちょっと悲壮すぎるコンチェルト」 である。 イタリアに近い南ドイツの明るい日差し。 牧歌的ですらある。 でも,時折訪れる若いブラームスの張り裂けんばかりの心情はとどめようがない。 (師であるロベルト・シューマンの妻クララへの許されぬ想いゆえか?) この曲はちょっとくらい大袈裟にやった方がよい。 夭折した女流ヴァイオリ二スト,ジャネット・ヌヴーの演奏はまさに真打的存在。 指揮はハンス・シュミット=イセルシュテット(!),オケは北ドイツ放送交響楽団のゆったりとやさしく重厚なバック。 自由自在に飛び廻るヌヴーのヴァイオリンを温かく包んでいる。 1948年のライヴであるが,スピーカーから流れ出る音は不思議と生まれたてのように活き活きしている。 まるで今ここで音楽が作られているかのよう。 この曲はブラームスの親友で「大」ヴァイオリ二ストのヨアヒムとの協同作業で作曲されたものだが,終楽章のロンドの箇所にヨアヒムのちょっと人間臭いメモが残っている。 「アレグロ(速く)」,「プレスト(急速に)」と速度指示をしたブラームスだったが,ヨアヒムは「マ・ノン・トロッポ・ヴィヴァーチェ(あまり速過ぎないように)」の指示を追加した。 理由は「そうでないと演奏が難しい。」 「こうしては?」「いやいやこっちの方がいい」「やっぱりそっちが」など若い二人の快活で仲の良いやりとりが聞こえてきそうな微笑ましいメモである。 (クレーメルは非情にも無視してしまったが・・・) ちょっとだけ物悲しくなってちょとだけ悲壮な気分になってみたい秋の昼下がりにオススメです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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