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2005年12月08日
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カテゴリ:ヤン・シベリウス
 第1楽章序章の静謐なファンファーレは,銀河鉄道の発車を知らせる汽笛。

 そこから続く木管とストリングスのリズミカルで軽やかな推進は,銀河鉄道を走る列車の車輪が枕木を叩く音。

 もちろんここで言う「銀河鉄道」とは,宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のことです。

 するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと獲れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえして、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦ってしまいました。
 気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っている小さな列車が走りつづけていたのでした。ほんとうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。車室の中は、青い天蚕縅を張った腰掛けが、まるでがら明きで、向うの鼠いろのワニスを塗った壁には、真鍮の大きなぼたんが二つ光っているのでした。

                     宮沢賢治『銀河鉄道の夜』より


 今夜はシベリウスの交響曲第6番です。

 昔,ある雑誌で誰かがこの曲を評して

 『銀河鉄道交響曲』

 と呼んでいましたが,まさに言いえて妙だと思います。

 確かにこの曲から受けるイメージは,
 
 白い息を吐きながら眺める満天に煌く星空。

 メルヘンチックな交響曲です。

 でも,硬派なシベリウスのことですから,単にメルヘンチックな感傷だけで聴いていると突然弾き飛ばされますから注意が必要です。

 演奏は,オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団が秀逸。

 透明で精巧な硝子細工のように,触れれば壊れてしまいそうな,ちょっとした危うささえ漂う演奏です。

 もうすっかり12月ですね。

 冬。

 厳しくつらい季節の始まりです。

 だけど,清潔で凛とした季節でもあります。
 
 僕はそんな冬が好きです。





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Last updated  2005年12月08日 21時45分45秒
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