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2005年12月19日
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カテゴリ:ベートーヴェン
 昨夜はとても尻切れトンボなところで終わってしまいました。

 もう少しだったのに,睡眠時間が・・・。

 気を取り直して,今日はそのつづきです。

 さて。

 サビ中のサビの大合唱が終わったあと,

 ずーーーん

 と重い低音とともにミサ風な合唱に転換します。

 「たがいに抱きあうのだ,諸人よ。
  全世界の人たちと口づけをかわし合うのだ!
  同胞よ!
  満天の星々のかなたには,父なる神は必ずやおわしますのだ。
  そうならばお前たちはひれ伏すか,諸人よ。
  この世の者たちよ,お前たちを創造した神がわかるか,
  満天の星々かなたに神を求めよ!
  星々のかなたに神は必ずやおわしますのだ。」

 
 と歌詞も若干抹香臭くなり,音楽もそれに合わせて宗教的・説教的になります。

 しかし音楽は天から降りてくるようでもあり,星々の描写をしているようでもあり,これはこれで立派な部分です。(個人的にはちょっと苦手な箇所)

 それが過ぎると音量も速度も最弱に落として静かに瞑想します。

 そして,再びテンポを少しずつ上げ,第1節の歌詞を再び歌います。

 もはや私の前に敵はいなくなった!

 私は勝ったのだ!

 と言わんばかりの堂々たる勝利の行進曲です。

 オーケストラ・ソリスト・コーラスが一体となり漸進的にクライマックスを築き上げ,フィナーレへと一直線に向かっていきます。

 それが頂点に達しようとするその一歩手前で,ぐっとテンポを落とし,4人のソ
リストが非常にゆったりと,感慨深くしみじみと最後のカルテットを奏します。

 一瞬の沈黙の後,オーケストラと合唱がプレシテッシモ(「急速に」の最高級)で戻ってきて,最後の大きな大きな大きな山を息つく間もなく駆け上り,一気阿声にこの大曲を閉じます。

 ちゅ~らららちゃららちゃらったったた!!!


 ってな感じ。

 
 しかし,文学的な聞き方をすれば,この曲は無尽蔵の内容を持っていると言えます。

 僕は仮に第1楽章を「苦悩」,第2楽章を「葛藤」,第3楽章を「安らぎ」と呼びましたが,その中には,「不安」「恐怖」「怒り」「冷静」「哀しみ」「寂しさ」「孤独」「共感」「苦悶」「闘争」「原罪」「救済」・・・ありとあらゆる感情やドラマが詰め込まれています。

 しかし,この曲が今なお世界で最高の交響曲として燦然と輝く存在たりえる所以はこの曲が持つ人間の尊厳の気高さ,魂の高貴さを失わない凛々しさ,そしてこの曲全体を貫くあたたかい人間愛(その眼差しは第1楽章でのた打ち回りながらも,スケルツオで叩きつけられても一貫して変わることはない。)ではないでしょうか。

 また,純音楽的(文学性を排除し音だけの世界からの視点)で見ても,第1,第2,第3楽章ともそれぞれが最高傑作の作品であり,第4楽章の冒頭における「喜びの主題」の生成過程を見ると,第1楽章の上下の起伏の激しさ,第2楽章の激しいリズム,第3楽章の優美さが三位一体となってはじめて生れた単純にして偉大な音楽であることであると捉えることもできます。

 ♪ド・ド・レ・ミ・ミ・ファ・ソ・ラ・ソ・ソ・レ・ミ・ミ・レ・レ♪
 

 音符にすればただ単に上がって下がるだけのあまりにも単純すぎるこの音形が,人類史上最高の至宝になり得たということは,不思議を通り過ぎてある種の感慨すら感じます。


 「すべて偉大なものは単純である。」
        W.フルトヴェングラー


 
 さて,今週末のコンサートが楽しみです。

 あの合唱のパワー・人間のパワーに生で接するのはいつだって鳥肌ものですから。

 今回の連れの3人を始め,みんなに今年最後の締めくくりとして第9を楽しんでいただけたらな,と思って書いてみました。

 非常に拙い表現と自説の連発で恐縮ではありますが。

 ちなみに昨日今日と,私が聞いたディスクはシューリヒト=コンセルヴァトワール管のステレオ録音でした。

 豊かな音と爽快なスピード感。
 でもタメるところはグッと急ブレーキをかけてとことん濃厚にタメる。
 メリハリの利いた表情。
 やはりこの指揮者は「淡麗辛口」の人ですな。



 追伸:蛇足ですが,最後に一言だけ。

   「この曲ほどカッコいいクラシックはありません!」





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Last updated  2005年12月20日 00時59分59秒
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