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テーマ:好きなクラシック(2316)
カテゴリ:ベートーヴェン
昨日の日記で自分の中の「うじうじしたもの」をあらかた吐き出してしまったせいか,今日は朝からすっきり晴れやかな気分でした。(読み返す気にはなれないが)
こういうときは,調子に乗りすぎて思わぬ失敗をしてしまうのが僕の悪いパターンなので,自分の精神にブレーキをかける意味で,僕のウォークマンにはベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番と第16番を出かけに仕込んでおきました。演奏はアルバン・ベルクSQ(SQというのは,ストリングス・カルテットの略です。)。 ベートーヴェンの後期・弦楽四重奏曲といえば,レコード芸術のお偉い批評家さんたちの中にも「存在するだけでいいような曲・聞くのに疲れる曲」と言う人がいて,はっきり言って,避けられがちな曲です。 ベートーヴェンの弦楽四重奏曲だなんて,しかも後期の??ピアノ・ソナタならまだしも・・・そりゃすばらしいんだろうけどさ,ムツカシスギテ,昔同じクラスにいた孤高のあの人みたいに実際お付き合いするのは遠慮したいわ・・・というのがおおかたの人の反応なんじゃないだろうか。 僕も最初はそう思ってました。 でも,安心してください。 実際は,そうじゃありません。 ベートーヴェンの弦楽四重奏曲。 聴くなら初期・中期より,断然後期です。 初心者はまず初期・中期なんていわないで。 ラズモフスキー・シリーズは後回しでよろしい。 中でも聴くべきは,第12番,第14番,第15番,第16番の4曲。 第11番「セリオーソ」と第13番(「大フーガ」も含めて)が入っていないのは,この2曲については僕自身あまりピンとこないため。 要は僕の好みです。(←おいおい) 第12番第1楽章の冒頭の,胸が張り裂けんばかりの感動の歌。 第14番の,この世ならぬ輝き。天空の音楽。宇宙の音楽。(このような現代的な曲が19世紀に書かれたとは,到底信じられません。) 第15番の,真心のこもった質朴な歌。第3楽章「病の癒えたる者の感謝の歌」の,洗われた清浄なこころ。 第16番の,簡素にして力強く明るい響き。(僕は彼の第8シンフォニーに似たところがある,思っています。) この4曲の魅力を無理矢理一言で表現しようとすればこうなりますが,ベートーヴェンの後期の弦楽重奏曲には,どれも共通して美しい「歌」があり(普通に考えて,ヴァイオリン2本とヴィオラ,そしてチェロが集まれば歌わないはずがありません。),生命の躍動のリズムがあり,どこまでも内省的な哲学があります。 どこまでも奥へ奥へ,心の中へ深く深く,純粋にまっすぐ。そんな音楽です。 しかし決して,沈思黙考するだけではなく,心と身体を突き抜けるような感動(仏教の言葉を借りれば「歓喜愉躍」するような)の瞬間があります。 でも,おなじみ「ジャジャジャジャーン♪」のベートーヴェンのことですから,だいたい常に「力いっぱい握りこぶし」な感じなので,その辺は軽い気持ちで聞こうとすると弾かれてしまいます。 余計なものが何もないので,耳から入った音楽はそのままあなたの心に響くはずです。 それに哲学と言っても,この時代のものですので,まだ人間的で,健全です。構造主義どころか実存主義もありません。人肌のぬくもりがあります。 例えるなら,ゲーテの格言的哲学。 しかし,言葉も音楽も,聴き手によっては限りなく深い意味と感動を与えるものです。 たまにはベートーヴェンの後期・弦楽四重奏曲を聞いて,自分の心に哲学させてみませんか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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