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テーマ:好きなクラシック(2316)
カテゴリ:ショパン
テンポはありえないくらいに遅いけど,スタッカート気味のポーカーフェイス。 どの音も余計な重力を感じさせず,どこか吹っ切れていて。 斜にかまえているわけじゃないけど,自ら何かを語りかけてくるわけでもなく, 造型は見事だけど人としての温もりを感じられない前衛的な彫像のような。 10年前,この人のリサイタルを聴きにいったときには,もっと引き摺るようにもたれていて,あざとくアクの強い演奏だったと記憶しているけど。 この色のないモノトーンのピアノ越しに,今日はいろんな東京の音が聴こえてきた。 朝出勤途中にすれ違う元気な小学生たち, 軽やかな小鳥の声, 駅の雑踏, 最近多くなった女性の車掌のアナウンス。 裁判所前のビラ配り。 帰りは帰りで,顔の赤いおじさんたちの大きな声, ところかまわず携帯電話で話す若者たち, 耳をつく電車の金属音。 駅で待ち受けるキャバクラの呼び込み, 小さいラジカセから大きな音を鳴らして奇妙な動きを繰り返すストリート・ダンサー。 東京。 冷たい小雨は降れども,乾いた夜。 自己完結した疲労感。 そんな心の空洞に響く,ポゴレリチのショパン。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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