|
テーマ:好きなクラシック(2316)
カテゴリ:シューベルト
今日の東京は寒かった。
しかし,もう冬は終わる。 冬が終わり,春が来そうになると,僕は毎年思うことがある。 今年の冬も,シューベルトの『冬の旅』が聴けなかったな,と。 でも,全曲は聴かないまでも,つらいことがあったり,ふとしたぬくもりの記憶が欲しいときになると,僕はこの連作歌曲の5曲目『菩提樹』だけはよく聴いているようだ。 「わたしのところへおいで,若者よ, ここならおまえは憩うことができる!」 菩提樹は語りかける。 枝々がざわめく。 冷たい風が真正面から僕の顔に吹き付ける。 帽子が頭から飛んでいったけど,僕は振り向きもしなかった。 僕はいま,菩提樹から遠く離れたところにいる。 それでもざわめきはいつまでも聞こえてくる。 「若者よ,ここならおまえは憩いが得られるに!」 若者よ,と呼ばれることすら,ちょっと違和感を感じるようになったが, 菩提樹とは,室生犀星風に言えば,「とおくにありておもふもの」である。 二度と帰ることはできない,帰ってはならない,神聖な場所。 菩提樹は,僕の心のなかでいつもやさしくざわめいている。 しかし僕は,夏の終わりにも,性懲りもなくこう思う。 今年の夏も,ベルリオーズの『夏の夜』が聴けなかったな,と。 でもその第1曲目『ヴィラネル』だけは,熱帯夜のよく冷えた赤いワインに合うので・・・つづきは夏の終わりに(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006年03月14日 01時50分31秒
コメント(0) | コメントを書く
[シューベルト] カテゴリの最新記事
|