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テーマ:好きなクラシック(2328)
カテゴリ:ヨハネス・ブラームスの音楽
レイコさんは本を読みながらFM放送でブラームスの二番のピアノ協奏曲を聴いていた。 見渡す限り人影のない草原の端っこでブラームスがかかっているというのもなかなか素敵なものだった。 三楽章のチェロの出だしのメロディーを彼女は口笛でなぞっていた。 「バックハウスとベーム」 とレイコさんは言った。 「昔はこのレコードをすりきれるくらい聴いたわ。本当にすりきれちゃったのよ。隅から隅まで聴いたの。なめつくすようにね」・・・(村上春樹著『ノルウェイの森』より) バックハウスとベーム。 そしてウィーン・フィル。 最上の組み合わせによるブラームス。 僕はこの録音を初めて聴いたとき、 出だしのバックハウスの無骨で大胆なソロに、 「こんな表現があるのか!?」 ととても驚いたものだった。 真のマエストロだけが持つ毅然とした風格により、この録音は仕上がっているが、 カール・ベームでさえ、この鍵盤の獅子王の貫禄には及ばなかったようで、 バックハウスの悠揚たる音楽に、壮年のベームが汗を流して必死についていっているのがわかる。 事実、この録音セッションでは、ベームがバックハウスの迫力に押され、 「どうしたのだ!諸君!もう一度!!」 とウィーン・フィルのメンバーを叱咤し、その様子をバックハウスが笑顔で見守っていた、というエピソードが残されている。 ところで剣道の世界では、竹刀を合わせなくても、立ち会った瞬間から相手の力量がわかるのだそうです。 どの世界にも、「格」というものが確実にあるんですね。 今日はとても素敵な秋晴れでしたが、 僕は役所という名の箱の中で一日を過ごしてしまいました。 役所の中でイヤホンを通して聴くブラームスの第2コンツェルトも、なかなかオツなものです。 無機質なコンクリートの中にあって、十分に秋の風を感じることができました。 バックハウスとベーム。 この録音、尋常ではありません。 決して色気のある演奏ではありませんが、ブラームスの聴き手にとって、この録音を避けて通ることはできないようです。 レイコさんのように。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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