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2007年02月22日
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カテゴリ:シューベルト
 この廃盤音源が復刻されたことは、

 村上春樹の音楽エッセイ集「意味がなければスイングはない」

   意味がなければスイングはない

 の力によるところが大きい。

 喜多尾道冬氏も、ライナーノートで正面からそれを認めている。


 僕も、数ヶ月まえに「意味がなければ~」を読んで以来、

 ずっとシューベルトのピアノ・ソナタばかり聴いている。

 今のところ、14、16、17、20、21と

 「手当たり次第に」聴いている感じだが、

 やはりとりわけ、第17番ソナタに最も心惹かれている。

 第1楽章などは、妻から

 「あなたも好きね~」

 と冷笑まじりに言われてしまうほど単純で何の臆面もなく聴いてるこっちが恥ずかしくなるくらいのアケスケなリズムとメロディーと、まるで殴り書きのような即興的な構成だけど、そこがまたこの曲の大きな魅力。

 シューベルトが書いた最も美しい楽章、第2楽章は、結局のところ弱い存在でしかない人間が己の力を悟ったときの感情・・・・達観してしまった哀しみの音楽だと思う。

 ユージン・イストミンは、本当に、まるでそのように演奏する。

 人の力の限界を悟り、それでもその中で何かをつかもうとする心の動きを、そしてそれを心の感じるままの音を奏でる。大いなる人間的な即興。

 第3、第4楽章も独特だ。

 第3楽章は若者の空元気のようにも聞こえるし、そのひた向きなトリオは本当に特別な美しさだ。

 それは僕たちに年を経る代わりに失ってしまったものだ。

 それはかつて僕たちのものであったものだ。

 第4楽章の「さて、この先どうしようか?」という妙に明るく途方に暮れた感じ。

 でも、不思議な説得力をもって、この壮大にシューベルトがぶちまけたソナタを、きれいに、しかも静かに、きちんとまとめてしまう(そしてそれは消えるようなピアニッシモで終わる)。


 ユージン・イストミンの演奏を理解するのに、
(正確に言うと、「村上春樹がユージン・イストミンの演奏に何を感じたのか。」を理解するのに)

 内田光子は重要なキーを持っている。

   内田光子

 村上春樹は、彼女の演奏に一定の(そして別格の)評価をしつつも、

 あえて「僕はこの演奏を買わない」と言い切っているところに、

 読者に重要なヒントを与えているのではないかと思う。

 キーのありかのヒントを。

 内田光子とイストミンの演奏は、地球の反対側ほどの対極にあるものだ。

 内田光子がこの「なんともつくれん(九州弁:どうしようもない)」ソナタを

 「内田光子」という名のフィルターでこの木目のあらいソナタを濾しに濾し、
 「内田光子」という名の研磨剤でこの鈍いソナタを磨きに磨き、
 「内田光子」という名の重力でこのまとまりのない全4楽章に引力をかけてひとつの球体としてまとめあげている

 に対し、

 イストミンはまさにこの曲のあるがままの姿を、何の作為もなく、あるがままにそのままに、音にして鳴らしている。

 それが両者の違いであり、それぞれに優れたところだ。

 僕はちょっとずるくて、両方の演奏とも好きだ。

 どちらもシューベルトのピアノ・ソナタ第17番ニ長調の世界として、受け入れることができる。


 「海辺のカフカ」の大島さんは、シューベルトのピアノ・ソナタが好きで、

 あるときドライブしながら田村少年に対して

 シューベルトのピアノ・ソナタの優れている点について

 丁寧に語っているシーンがあったけれど、

 僕も大島さんのように、シューベルトのピアノ・ソナタと一生付き合っていくことになるのかしら。





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Last updated  2007年02月22日 23時47分26秒
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